AIやIoTの活用で加速するスマートシティ

2021年6月14日

スマートシティは、技術を活用することで行政の課題を解決しようとする試みである。昨今、AIを活用した自動運転やMaaS、そして、5G、さらには6Gの実証実験のニーズが高まっているが、このような先進技術の実証実験を行うのに、スマートシティは相応しい場といえる。トヨタが進めるWoven Cityが2月に着工するなど、2021年は、スマートシティの取組が日本や海外でますます活発化するとみられる。今年2月に開催されたスマートシティ推進Expoでも、先進技術を活用した、まちづくりに関する様々なソリューションが出展された。スマートシティや「Society 5.0」の到来を見据え、スマートシティの今を探る。

Society 5.0とスマートシティ

人間の社会は、狩猟社会(Society 1.0)から情報社会(Society 4.0)まで、段階的に発展してきた。2016年、日本政府は、目指すべき未来社会の姿として、「Society 5.0」を提唱している。「Society 5.0」は、情報社会の次にやってくる、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会だ。「Society 5.0」では、IoTで全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有される。また、AIなどの先進技術を活用し、モノやサービスを、必要な人に、必要なだけ提供するきめ細かい対応が実現する。コストを抑えつつ、少子高齢化や地方の過疎化などの課題を解決する構想だ。

「Society 5.0」と言われても、遠い未来の話のように聞こえるかもしれない。実際、「Society 5.0」は、2050年ごろの社会の"あるべき姿"とされている。現在、全国で展開されているスマートシティの取組は、「Society 5.0」の先行的な社会実装の場といえる。スマートシティでは、「自動運転」や、「高齢者の見守り」というような、個別の行政課題をITやAIを活用して解決する取組が進む。スマートシティが進化し、より高度化していった先に、「Society5.0」が見えてくる。

AIで交通機関の配車計画と走行ルートを最適化

地方では、路線バスが住民の移動を支えている。しかし、通勤や通学の大量移動を前提として、定時・定路で運行する公共交通機関は、高齢者のニーズに十分に応えられていない。高齢者は、日中に、病院や役所、スーパーなど、広範囲にわたる近距離移動の需要が高い。今後、ますます増加が予想されるこのような需要に対応するためには、オンデマンドの配車サービスの活用が有効だ。

オンデマンドの配車サービス イメージ

既存の交通機関で、オンデマンドの配車サービスを実現する取組として、SAVS(Smart Access Vehicle Service)がある。利用者がアプリから乗車のリクエストを送ると、それがクラウド上のAIプラットフォームに送られる。AIは、その地域を走るタクシーなどと通信し、最適な配車を行う仕組みだ。SAVSは乗り合いを前提としたサービスのため、送迎中であっても、新たなリクエストが入れば、リアルタイムに走行ルートを最適化し、新たな送迎ニーズにこたえることができる。AIを活用し、空車のまま走行する車を減らすことで、限られた車両数で最大の輸送効率を達成する。少子高齢化で人手不足に悩む自治体での活用が期待されるソリューションだ。自動運転の実現はまだ先だが、SAVSは、埼玉県や栃木県で導入が開始されている。2月のスマートシティ推進Expoでも、アプリを体験するデモが行われた。

防災分野でも、スマートシティは実証から実用の段階に

防災分野でも、センサーやカメラ、AIを活用した取組の実用化が始まっている。河川に設置した水位計からデータを収集し、過去の気象データから構築した予測モデルと組み合わせることで、15時間先までの水位変化を予測するサービスなどがすでに実用化されている。事前に洪水が予測できれば、的確な避難指示を出すことができる。昨年7月に発生した、最上川、球磨川の水害では、氾濫危険水位の超過を8時間前に予測するなど、被害の軽減に貢献した。香川県高松市では、「スマートシティたかまつ」プロジェクトの一環として、水位や潮位の情報のリアルタイム分析を行っている。

崖にセンサーを埋め込み、土砂災害やがけ崩れの予兆を事前に把握するような使い方もある。避難所にカメラやセンサーを設置し、避難所が開設可能かどうか確認したり、混雑具合を把握して、密にならないような避難誘導を行うことも可能だ。大分県は、2021年より、避難所のリアルタイムで混雑情報を配信する予定にしている。高松市では、市内30ヵ所のコミュニティセンターにスマートメーターを設置し、コミュニティセンターが停電していないかを即座に確認できる仕組みを構築している。このように、IoTを活用することで、安全かつ人手をかけずに、防災対策を実施できるのだ。

スマートシティから「Socieyty5.0」の実現へ

スマートシティの実現には、IoTの活用は不可欠だ。スマートシティの推進、そしてSociety5.0の実現に向け、情報をリアルタイムに修正、分析するための通信インフラなど、情報基盤の整備もますます重要になる。スマートシティ推進Expoに出展された先端技術が、さらに進歩し、社会に実装されていく日もそれほど遠くはないだろう。

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