再エネ100%のデータセンターが北海道に相次いで開設

2025年1月14日

日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指しているが、そのような中、生成AIの活用により電力消費量が急増しているデータセンターによる再生可能エネルギー(再エネ)の活用が重要になりつつある。

2023年4月27日に開催された、総務省主催の「第6回 デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」では、「日本において人口減少が進み、地域経済が衰退していく恐れがある中、データセンターの地方分散を起点とした地域の課題解決において、再エネ電源を活用したデータの地産地消は非常に重要である。北海道においてもその課題解決の先進的なモデルとして導いてもらえれば良いのではないか」、「資源の乏しい我が国において、再生可能エネルギーが生産可能な場所にデータセンターを誘致し、需給バランスを整えていくという視点は非常に重要」という意見が寄せられている。

こういった社会の要請を受け、再生可能エネルギーだけで電源を賄うデータセンターが増加している。

ソフトバンクは、国内最大規模のデータセンターを2026年に開業

2023年12月、ソフトバンクと、ソフトバンクの子会社でデジタルインフラ専業会社のIDCフロンティアは、東京や大阪に並ぶ新たな拠点として、北海道苫小牧市に大規模な計算基盤などを整備したデータセンターを建設することを発表した。

ソフトバンクが北海道苫小牧市に建設する大規模データセンター(出典:ソフトバンク) イメージ
ソフトバンクが北海道苫小牧市に建設する大規模データセンター(出典:ソフトバンク)

このデータセンターは、ソフトバンクの次世代社会インフラ構想の要となる「Core Brain(コアブレイン)」として構築され、敷地面積は国内最大規模の70万平方メートルとなる。最終的には受電容量を300MW(メガワット)超まで拡大する見込みだが、まずは50MW規模のデータセンターを2026年度に開業することを目指すという。

電力は、ソフトバンクの子会社で小売電気事業者のSBパワーおよび北海道電力から供給を受け、北海道内の再生可能エネルギーを100%利用し、地産地消型のグリーンデータセンターとして運用を行う予定だ。

東急不動産も石狩市に「再エネデータセンター」を開所

東急不動産も北海道石狩市で「石狩再エネデータセンター第1号」の建設を、2024年10月1日に開始している。竣工は2026年3月の予定だ。

東急不動産が北海道石狩市に建設する「石狩再エネデータセンター第1号」(出典:東急不動産) イメージ
東急不動産が北海道石狩市に建設する「石狩再エネデータセンター第1号」(出典:東急不動産)

このデータセンターは、同社及び同社が出資する合同会社等が発電した再生可能エネルギー100%で運営される。

同社と石狩市は、石狩市の脱炭素先行地域及びゼロカーボンシティの実現とまちづくりの継続発展に向け、「再エネ利用による持続可能なまちづくりに係る協定書」を2024年3月に締結。両者は、再エネ利用による連携の第一歩として「令和6年度地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を活用したオンサイトPPA事業を推進し、自営線で再エネ電力を直接供給することを計画している。

オンサイトPPA(「Power Purchase Agreement(電力販売契約)とは、送配電線を介さずに自営線等で需要施設と発電所をつなぎ、直接電力供給を行う方法だ。オンサイトPPA事業は、地域再エネの最大限活用と、電力需要の大きいデータセンターのCO2削減に寄与することが可能となり、豪雪地帯でも高効率の発電が可能な特殊架台を採用することで、発電量の最大化及び他地域への波及効果も期待しているという。

石狩再エネデータセンター第1号 の延床面積は約11,093㎡で、受電容量15,000kWとなっている。

京セラコミュニケーションシステムも「ゼロエミッション・データセンター 石狩」を開所

京セラコミュニケーションシステムは、北海道石狩市にて再生可能エネルギー100%で運営する「ゼロエミッション・データセンター 石狩」(ZED石狩)を2024年10月1日に開所した。

「ゼロエミッション・データセンター 石狩」。ZED石狩の敷地面積は約15,000㎡で、受電容量は2~3MW。(出典:京セラコミュニケーションシステム) イメージ
「ゼロエミッション・データセンター 石狩」。ZED石狩の敷地面積は約15,000㎡で、受電容量は2~3MW。(出典:京セラコミュニケーションシステム)

ZED石狩では、石狩湾新港洋上風力発電所の電力と、データセンターの近隣に新設した同社所有の太陽光発電所の電力を組み合わせてデータセンターを運用する。また、蓄電池とAI技術を活用した電力需給制御と電力需要のタイムシフトの推進により、時間単位でカーボンフリー電力をマッチングする取り組みを行い、常時再エネ100%を実現する。

「ゼロエミッション・データセンター 石狩」の電源構成(出典:京セラコミュニケーションシステム) イメージ
「ゼロエミッション・データセンター 石狩」の電源構成(出典:京セラコミュニケーションシステム)

都市部でも進む再エネ利用

北海道だけはなく、都市部のデータセンターでも再エネの活用が進んでいる。

NECは、100%再生可能エネルギーを活用したグリーンなデータセンターとして「NEC神奈川データセンター二期棟」と「NEC神戸データセンター三期棟」を開設し、2024年5月よりサービス提供を開始している。

「NEC神奈川データセンター二期棟」(出典:NEC) イメージ
「NEC神奈川データセンター二期棟」(出典:NEC)

これらのデータセンターが利用する電力は100%再生可能エネルギーでまかない、希望する顧客に対しては、使用した電力に応じて非化石価値を提供(化石燃料を使用せずに発電された電力の環境価値を示す非化石証書を発行)する。データセンターが利用する電力を削減する取り組みとしては、高温冷水、自然エネルギーによるクーリングなどを導入・活用している。

また、NTTデータグループは、東京電力エナジーパートナーおよびプロメディアと、オフサイトフィジカルコーポレートPPAを締結。2024年8月から順次、NTTデータグループの三鷹データセンターEASTにおいて、埼玉県・栃木県に新設される太陽光発電所(合計3,700kW)で発電された年間440万kWhの電力(年間で一般家庭約1,000世帯相当)を利用する。

この再エネ電力は、プロメディアが発電し東京電力エナジーパートナーが供給するもので、三鷹EASTで使用する電力の約20%相当をまかなう予定で、年間で約1,580トンのCO2排出量削減が期待できるという。

経済産業省は、今後、データセンターや半導体工場の新増設により、2024年度で+48万kW、2033年度で+537万kWの最大電力需要の増加を見込んでいる。そのため、データセンターにおける再エネの活用は、今後、ますます重要になっていくだろう。

「データセンター・半導体工場の新増設による影響(資源エネルギー庁の「電力需給対策について」より引用) イメージ
「データセンター・半導体工場の新増設による影響(資源エネルギー庁の「電力需給対策について」より引用)

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