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NTTとパナソニック、関西万博で水素サプライチェーンモデルを実装

2025年6月9日

NTTアノードエナジーとパナソニックは、大阪・関西万博において、次世代エネルギーと期待される水素の普及に向け、水素サプライチェーンモデルを実装している。本記事では、4月に開催された、水素サプライチェーンモデルのプレス向け説明会をレポートする。

2028年の実用化を目指す

この水素サプライチェーンモデルでは、NTTパビリオン内に設置されたペロブスカイト太陽電池の発電電力により水電解装置で水素を生成し、水素吸蔵合金タンクに蓄える。そして地中のパイプラインを通じて、約200メートル離れたパナソニックグループパビリオンにその水素を供給する。パナソニック側では、純水素型燃料電池によって水素発電を行い、敷地内で夜間のLED照明に利用しているという。

(図1)水素サプライチェーンのイメージ イメージ
(図1)水素サプライチェーンのイメージ
(写真1)NTTパビリオンの裏に置かれた、水素を生成する水電解装置と水素を保存する水素吸蔵合金タンクが設置されたコンテナ。このコンテナは、清水建設が提供する「Hydro Q-BiC Lite」で、発電に必要な水素2日分を蓄えている。 イメージ
(写真1)NTTパビリオンの裏に置かれた、水素を生成する水電解装置と水素を保存する水素吸蔵合金タンクが設置されたコンテナ。このコンテナは、清水建設が提供する「Hydro Q-BiC Lite」で、発電に必要な水素2日分を蓄えている。
(写真2)水素吸蔵合金タンクから、約200m離れたパナソニックパビリオンに水素を送るための地下パイプライン イメージ
(写真2)水素吸蔵合金タンクから、約200m離れたパナソニックパビリオンに水素を送るための地下パイプライン
(図2)NTTパビリオンとパナソニックのパビリオン間に200mの水素パイプラインを敷設 イメージ
(図2)NTTパビリオンとパナソニックのパビリオン間に200mの水素パイプラインを敷設

太陽光発電の電力を水素に変え、再度発電することは非効率に思えるが、これには、昼間の電力で作った水素を夜間使用するというタイムシフトの意味があるという。

今回実装した水素サプライチェーンモデルでは、全国に整備されている共同溝や洞道(とうどう。通信ケーブルを収容するための地下トンネル)、通信用管路といった地下空間インフラを基盤とする地中のパイプラインを利用して水素を輸送する予定だ。

NTTアノードエナジーでは、低コストで安全に水素を運ぶための技術開発・基準類の策定を進めている。大阪・関西万博の水素サプライチェーンモデルは、そのための実証施設でもある。

水素サプライチェーンモデルの実用化の目途について、NTTアノードエナジー 技術戦略部 インキュベーション推進室 室長 小松 宏至氏は、「それぞれのパーツは実用化レベルまで達しているものもあれば、実証レベルのものも存在します。パイプラインについては、天然ガスや都市ガスはすでに実用化されていますが、水素に特化した新しい技術としてのパイプ、とくに既存の地下空間に対して挿入する形で水素パイプを作ろうとしていますので、そこについては、まだ研究開発段階です。密閉性と、漏れた時にどのように安全性を確保しておくかが重要だと思います」と、課題を挙げた。

(写真3)大阪・関西万博で水素サプライチェーンモデルについて説明するNTTアノードエナジー 技術戦略部 インキュベーション推進室 室長 小松 宏至氏 イメージ
(写真3)大阪・関西万博で水素サプライチェーンモデルについて説明するNTTアノードエナジー 技術戦略部 インキュベーション推進室 室長 小松 宏至氏

水素が漏れた時の対策としては、管の周りに光ファイバーを巻き付け、それによって、漏れを検知しようとしている。

光ファイバーによって、管が切れたときにどこで切断されたのかがわかり、さらに、管に穴が開いて水素が内側から漏れた際の「プシュー」という音を音響振動によって検知できるようになっている。

小松氏は、NTTグループが水素のサプライチェーンを構築する狙いは2つあると説明した。

「1つは、NTTグループは日本全国の電力消費の1%をグループ全体で使っていますので、カーボンニュートラルに対するアクションを行う責務があり、その1つが水素を自分たちで利用するというものです。もう1つは、水素社会を広げていくために、われわれが持っている地下空間を水素供給網に利用することです」(小松氏)

説明会において同氏は、水素サプライチェーンモデルを2028年には実用化したいと語った。

パナソニックは「Panasonic HX」を推進

一方、パナソニックは、水素を活用したエネルギーソリューション「Panasonic HX」を推進している。「Panasonic HX」とは、純水素型燃料電池、蓄電池、そして太陽電池などの変動しやすい再生可能エネルギーを組み合わせたシステムのことだ。

水素発電に利用している純水素型燃料電池は、パナソニックが2009年に世界で初めて発売した家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」のコア技術を応用して開発したものだ。

(写真4)パナソニックパビリオンの敷地内に置かれた純水素型燃料電池。純度の高い水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を作る装置だ。 イメージ
(写真4)パナソニックパビリオンの敷地内に置かれた純水素型燃料電池。純度の高い水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を作る装置だ。
(写真5)純水素型燃料電池の裏側。NTTパビリオンからの水素パイプラインは、ここで立ち上がっており、減圧されたのち、純水素型燃料電池に送られる イメージ
(写真5)純水素型燃料電池の裏側。NTTパビリオンからの水素パイプラインは、ここで立ち上がっており、減圧されたのち、純水素型燃料電池に送られる

パナソニックは、滋賀県草津市の燃料電池工場と、英国ウェールズ・カーディフの電子レンジ組立工場にて、工場で使用する電力を再生可能エネルギーで賄う実証施設を導入している。また、電子デバイス、産業デバイス等の販売を行うパナソニック インダストリー ヨーロッパ(ドイツ・オットブルン)の2棟あるオフィスビルのうち1棟で、純水素型燃料電池と太陽電池による自家発電を活用し、使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うための電力需給運用の実証を2025年春より開始している。

NTTアノードエナジーとパナソニックは、万博会場での水素サプライチェーンモデルの実装を通じて、水素が暮らしに身近なエネルギーインフラとして普及する将来の姿を来場者に実感してもらい、クリーンで安定した分散型エネルギーに支えられた、循環型社会の実現に向けて取り組んでいくという。

(図3)パナソニックパビリオンでは、QRコードを読み込むことで、水素や脱炭素について、マテモンというキャラクターを通してゲーム感覚で知ることができる。 イメージ
(図3)パナソニックパビリオンでは、QRコードを読み込むことで、水素や脱炭素について、マテモンというキャラクターを通してゲーム感覚で知ることができる。

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