5Gで本格化するドローン物流

2021年6月21日

ドローンビジネス市場が拡大している。なかでも、物流におけるドローンの活用が今後数年で急成長する見通しだが、都市部で安全にドローンを運用するためには、5Gに支えられた安定した通信環境が不可欠だ。ドローンによる配送の現状と、5Gの普及によって実現する未来について取り上げる。

伸長するドローンビジネスは、2022年度の規制緩和でさらなる成長を見込む

国内のドローンビジネス市場は年々右肩上がりに成長している。2020年の市場規模は前年度比31%増の1,841億円に到達し、2025年度には6,468億円に達すると予測されている(出典:ドローンビジネス調査報告書2021/インプレス総合研究所)。今後は、農薬散布や土木測量、災害調査などでの活用に加えて、物流での利用が市場の成長を牽引するとみられる。物流分野の市場規模は、2020年度の50倍超の797億円に拡大する見込みだ。

ドローンビジネス調査報告書2021/インプレス総合研究所

出典:ドローンビジネス調査報告書2021/インプレス総合研究所

物流分野においてドローンの成長が見込まれるのは、都市部での目視外飛行、つまり、ドローン操縦者が直接視認できない状況でのドローン飛行が2022年度にも実現するとの見通しによる。日本では、2015年に首相官邸の屋上にドローンが落下する事故が起き、航空法でドローンの飛行が制限されたが、その後、機体の性能向上に伴い規制緩和が進んでいる。政府は、ドローンの利活用のレベルを4段階にわけている。レベル1の「目視内での操縦飛行」、レベル2の「目視内での自動・自律飛行」はすでに実用化されている。レベル3の「無人地帯での目視外飛行」についても、2018年の秋以降、離島や山間部などの人の少ない地域で、日本郵便やANAホールディングス、楽天などがサービスを開始している。この次の段階であるレベル4の「有人地帯での目視外飛行」が2022年度に認可されれば、都市部など人がいるエリアでのドローンの自律飛行が可能になり、物流インフラとしてのドローン活用の起爆剤となるとみられる。

ドローン配送 イメージ

米国や中国では、レベル4飛行がすでに実現

米国では、2020年8月、Amazonがドローンを使った商業配達の試験を行うために必要となる米連邦航空局(FAA)の認可を取得し、約2kgまでの重量の商品を、注文から30分以内に届けるサービスの実用化を目指している。アルファベット傘下のWingとUPSもFAAから同様の認可を取得している。2020年、米国がコロナ禍でロックダウンされた際には、Wingのドローンが、医薬品やトイレットペーパーなどを配送するのに活用された。また、UPSは研究用の標本や緊急性の高い医療品などの輸送をドローンで行っている。

同じく物流分野でのドローン活用で先行する中国においても、アリババや、テンセント傘下の京東商城(JD.com)などのEC企業が、ドローン配送サービスを展開している。また、ドローンを活用した物流分野のスタートアップ「迅蟻(Antwork)」は、約3兆2000億円ともいわれる医療物資の配送市場を主要ターゲットとして事業を展開している。

しかし、都市部でのドローン配送には課題も多い。都市部での自律飛行には、より高度な安全性が求められるからだ。ドローンの機体そのものの性能の向上が必要なのはもちろんだが、それだけでは十分ではない。ドローンの遠隔操作や、ドローンからの画像やデータの送信を支える「安定した通信」が、安全な自律飛行には欠かせない。5Gが求められる理由がここにある。

医療分野ではすでに実用化。5Gによるドローン物流の未来

5G通信は、複数のドローンを同時に飛行させ、また遠隔からでも安全に飛行するように管理するために不可欠な要素といえる。前述のUPSは、2021年1月より、通信大手Verizonらと5Gを活用したドローン配送の実証実験をフロリダで行っている。ドローンを活用したフードデリバリーを展開するアイルランドのスタートアップ、Mannaは、同じくアイルランドの通信会社Cubic Telecomとの協業により、5G通信を活用したフードデリバリーや、リアルタイムで商品を追跡するシステムの実用化を目指す。中国では、2021年3月には、5G通信を利用して規定航路を飛行するドローンによる血液輸送サービスが開始された。浙江省の血液センターから浙江大学医学院付属第二病院まで、これまで車で最低でも25分かかっていた配送時間を5分に短縮することに成功している。

ドローン配送 イメージ

ドローン物流は開発途上の技術であり、本格展開に向けて、雨や落雷、鳥や建造物との接触、通信トラブルといった不測の事態への対応力を強化していく必要がある。しかし、今後、5G通信が普及し、「安定した通信」というインフラが整うことで、ドローンを活用した物流サービスは大きく成長すると見込まれる。2026年には、100万台以上の輸送用ドローンが世界の空を飛び交うとの予想もある。今後数年で、5Gは日本、そして世界の空の景色を大きく変えていくだろう。

「未来図メディア」メールマガジン登録

5G×IoTの最新情報やイベント・セミナー情報を
いち早くお届けします。

ミライト・ワンのソリューションに関するご質問、ご相談など
ございましたらお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ