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NTT、大阪・関西万博でIOWNを利用した未来のコミュニケーションを実現

2025年5月12日

NTTは、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、およびネットワーク・情報処理基盤であるIOWN (アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)を、2030年に実現することを目指している。そのような中、同社は、4月13日~ 10月13日まで、大阪・夢洲(ゆめしま)で開催されているExpo25 大阪・関西万博のNTTパビリオンにおいて、IOWNの技術を実際に体験できるゾーンを提供している。

(写真1)大阪・関西万博のNTTパビリオン イメージ
(写真1)大阪・関西万博のNTTパビリオン

未来のコミュニケーションの可能性を感じる演出

NTTパビリオンは3つのゾーンに分かれ、Zone1ではプロローグとして、手紙、電報、固定電話、スマホといった通信の進化を、壁一面を使って映像で紹介している。

(図1)NTTパビリオンは3つのゾーンで構成(出典:NTT) イメージ
(図1)NTTパビリオンは3つのゾーンで構成(出典:NTT)

メインのZone2は体験スペースとなっており、スペシャルパフォーマーであるPerfumeが4月2日に実施した、3D空間伝送により3つの空間を行き来する実証実験を体験できる。

そしてZone3では、入場時に来場者がスキャンされ、それを加工することで、「Another Me」(もうひとりの自分)が登場する。「Another Me」が、来場者の前面スクリーンに投影されるとともに、自律的に歩き出し、容姿を変えながら、言葉や文化の違いを超えて自分の新たな可能性に気付くという演出が行われている。

(写真2)Zone3では、スキャンされた自分の画像が変化し、「Another Me」が登場 イメージ
(写真2)Zone3では、スキャンされた自分の画像が変化し、「Another Me」が登場

IOWN APNを活用した未来のエンターテインメント

Zone2で再現されている4月2日の実証実験では、Perfumeが夢洲の大阪・関西万博会場と吹田市の万博記念公園(電気通信館跡地)、さらにバーチャルで再現する1970年の大阪万博会場を行き来するという体験を提供した。

(写真3)Zone2の演出 イメージ
(写真3)Zone2の演出

この実験では、1970年の大阪万博「電気通信館」跡地の特設ステージのまわりに、3台のLiDAR(Light Detection and Ranging:現実世界の空間を計測・把握するためのセンサ技術)センサと1台の光学カメラを組み合わせた独自システムを7セット配置。Perfumeの動きを3D点群データとして計測し、リアルタイムで夢洲会場に伝送した。
夢洲側ではそれらを元に、視点を自在に変えながら3次元LEDビジョンに立体映像として描き出した。リアルタイム3D点群データを、3D映像として表出するのは世界初の試みだという。

Perfumeには加速度センサを装着し、位置トラッキング用センサを合わせた特殊なシステムにより、3人のパフォーマンスで発生する足元の振動データを位置情報とともに計測した。夢洲側では128個の振動子を床下に埋め込み、床面全体の振動を通じて、離れた場所で行われたパフォーマンスの臨場感を具現化している。

(写真4)Zone2では、床全体の振動も感じることができる イメージ
(写真4)Zone2では、床全体の振動も感じることができる

演出に関わる膨大なデータは、NTTが万博会場全体に整備したフォトニクス(光)ベースのネットワーク環境(IOWN APN)の高速大容量・低遅延性を活かして、万博記念公園から夢洲のNTTパビリオンへと伝送され、まるでPerfumeが隣にいるように感じる未来のエンターテインメントを、空間会場全体で体現している。

NTTパビリオンの来場者は3Dグラスを装着し、Perfumeによるパフォーマンスを通じてバーチャルにより再現された遠隔地と、眼前のパビリオンとが空間でつながる演出(映像や振動)を体験することで、未来のコミュニケーションの可能性を感じることができるものになっている。

IOWNの主要技術であるAPNとは

ここで使われているIOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)は、IOWNを構成する主要技術で、フォトニクス(光)技術を活用し、エンド・ツー・エンドでの光波長パスを提供する波長ネットワークにより、低消費電力、高速大容量、低遅延伝送の実現を目指すものである。
APNにより、通信量の増大およびネットワークの複雑化や輻輳の回避、データセンター内の省電力通信によるエネルギー消費抑制、リアルタイムでのデジタルツイン実現による新たな価値の提供を実現する。

コンピュータで演算を行うチップは従来、使い勝手の良い電子技術が活用されてきた。しかし、近年の高集積化に伴いチップ内にある配線の発熱量増加が、性能を制限しつつある。そこで、チップ内の配線部分に光通信技術を導入し低消費電力化を行い、さらには光技術ならではの高速演算技術を組み込んだ、光と電子が融合した新しいチップを実現することを目標に掲げている。
これが光電融合技術と呼ばれるもので、従来、光は取り扱いが難しいものだったが、屈折率が周期的に変化するフォトニック結晶と呼ばれる構造により、光を小さな領域に閉じ込め、光と物質の相互作用を高めることが可能になってきているという。このフォトニック結晶を使用して、光スイッチ、レーザ、光メモリ、光RAMといったさまざまな光デバイスにおいて、低消費電力での基本動作を確認している。

(写真5)APNを実現する光デバイス イメージ
(写真5)APNを実現する光デバイス

NTTはAPNを活用し、2030年には、電力効率100倍、伝送容量125倍、エンド・ツー・エンド遅延1/200の実現を目指している。

(図2)2030年のIOWNの性能目標(出典:NTT) イメージ
(図2)2030年のIOWNの性能目標(出典:NTT)

IOWNで「感情をまとう建築」を演出

NTTパビリオンの建築コンセプトは「感情をまとう建築」で、公園のように開かれ、緑、光、空、来館者、散策者など、多様な事象が重なり合う空間が表現されている。
その1つが、APNを活用し、音や映像に加え、触覚・振動を送り合うことができる「ふれあう伝話」だ。

(写真6)NTTパビリオンに設置された「ふれあう伝話」 イメージ
(写真6)NTTパビリオンに設置された「ふれあう伝話」

「ふれあう伝話」では、公共の場で生まれる偶然の出会いや、初めて会う人とでもふれあうコミュニケーションが気軽にできてしまうという新しいコミュニケーションのあり方を目指している。
「ふれあう伝話」は、NTTパビリオンといのち動的平衡館の来場者どうしがモニタ前のテーブルに触れることで、触れる感覚を伝え合うことができる。NTTパビリオン側には聴診器型のデバイスが設置され、自分の心臓の鼓動を一緒に送ることができる。

(写真7)自分の心臓の鼓動を一緒に送ることも可能 イメージ
(写真7)自分の心臓の鼓動を一緒に送ることも可能

また、NTTパビリオンでは、来館者の感情を解析して、パビリオンの幕を揺らす演出が実施されている。 具体的には、Zone2の来場者の表情をカメラで読み取り、そのデータを、IOWNを利用して大阪のNTT西日本本社のサーバに伝送する。そしてAIで解析し、NTTパビリオンの幕を揺らす仕組みになっている。これにより、建物全体がまるで感情を持った生命体のように表情を変え、轟く模様を表現しているという。

NTTでは、これらの設備を通して、距離を超えて場を共有し、互いに存在を感じあうというコミュニケーションの未来を、展示体験として届けているという。

(写真8)来場者の感情を分析し、幕を揺らす イメージ
(写真8)来場者の感情を分析し、幕を揺らす

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