- HOME
- Beyond X 最前線
- 少子高齢化などの課題解決に向けて推進する千葉市のスマートシティ
少子高齢化などの課題解決に向けて推進する千葉市のスマートシティ
東京のベッドタウンとしての側面も持つ千葉市は、高度成長期に大規模な団地が開発されたことで団塊世代が多く住み、2055年には高齢化率が4割まで上昇することが見込まれている。こうした少子高齢化の課題や地球温暖化に伴う気候変動リスクなどの社会変化に対応しながら、市民生活の質を向上させた持続可能なまちづくりを進めるため、千葉市は2022年3月に「千葉市スマートシティ推進ビジョン」と「千葉市スマートシティプロジェクト2022」を公表した。それから3年が経過したが、千葉市ではどのような取り組みが行われてきたのだろうか。
スマートシティ推進に向けた5つの方向性
千葉市では、スマートシティの基本的な考え方として「みんなでつくる快適なまち」を目指し、「個別最適」「全体最適」「市民主体」を目標に掲げている。「個別最適」では、テクノロジーの活用や環境整備などによって、例えばヘルスケアデータ分析を活用した保健指導や、ロボットの導入などによる負担軽減、場所や時間を問わないオンライン学習など、市民一人ひとりが自分に合ったサービスが受けられるようにする。
自然環境に配慮しながら、既存の資源を活かし持続的に発展する「全体最適」では、地球温暖化による気候変動リスクなどの社会変化の到来に備え、自然環境に配慮した持続可能なまちづくりを進める。さらに、「市民主体」では、行政だけでは解決が困難な課題に市民とともに取り組むことで、市民のニーズを反映した解決を図る。
また、千葉市は「暮らし」「ビジネス」「学び」「まち」「市役所」の5つ方向性でスマートシティ化を推進しようとしている。例えば「暮らし」では、広報活動の充実を図るためにSNSなどを活用した情報発信を支援する。「ビジネス」では、介護ロボットの活用やドローンによる宅配サービスの実現化などを想定。「学び」では、来館せずに本の貸し出しや返却ができる電子図書館の構築や、高齢者などを対象としたスマホ講座を開催。「まち」では、次世代モビリティを導入したMaaS(Mobility as a Service;自動運転やAIなどのテクノロジーを組み込んだ次世代交通サービス)を実現。「市役所」では、来庁しなくてもオンラインで申請できる手続きなどを拡大する。

(図1)千葉市が取り組む5つのスマート(出典:千葉市 資料)
走行しながらマンホール蓋の画像を収集し点検する実証実験を実施
「千葉市スマートシティ推進ビジョン」の実現に向けては、テクノロジーの活用などによって市民生活の質の向上を図るとともに、持続可能なまちづくりを進めるためにさまざまな企業や団体との連携を進めている。2024年度には千葉市の地域課題に対して、公益性が高く、市民生活の質の向上に資するサービス実証や技術実証などを実施する民間事業者を公募した。
選考されたエヌ・ティ・ティ エムイーと日之出水道機器は共同事業者として、千葉市内のマンホール蓋の効率的な維持管理を行う実証実験を実施した。千葉市内に設置されている約12万基のマンホールに対し、画像認識やAIなどの先進技術を活用し、マンホール蓋交換の必要性判定や設置場所の把握など効率的な維持管理の実現を目指している。
実験では、画像認識技術MMS(モービル・マッピング・システム)車両を活用し、走行しながらマンホール蓋の画像を収集。それらの画像をもとにマンホール蓋の緯度経度を抽出し、千葉市で保有している下水道台帳データと突合した上で、AIを用いて型式判定などを行う。将来的には、収集したマンホール蓋の表面の摩耗、外観損傷、蓋枠段差などの劣化判定への展開を検討しているという。

(図2)マンホール蓋の状態把握の実証実験イメージ(出典:千葉市 プレスリリース)
心疾患患者をサポートする自己リハビリの実証事業を実施
一方、千葉市は健康寿命の延伸を掲げた「暮らし」の取り組みにおいて、NTTコミュニケーションズと連携。市民の健康づくりや病気の再発防止に役立てるために、スマートウオッチやスマートフォンを活用した、心疾患を抱える人の健康維持を支援する自己リハビリの実証実験を行っている。
実験では、急性期病院などへの入院経験があり、医師の許可を得た患者を対象に、市内3病院で対象者にスマートウオッチを無償貸与。看護師資格を持つ相談員や医師の助言を受けながら、生成AIを搭載したNTTコミュニケーションズのアプリ「みえるリハビリ」を使用して、健康維持の運動などを行う。
また、患者へのアンケート結果とNTT社会情報研究所の「肯定的な衝動を誘発する内発的動機付けメッセージ生成技術」をもとに、生成AIが一人ひとりの性格・嗜好に合わせたメッセージを作成し、患者に定期的なフィードバックを行う。フィードバックには、前日の運動結果に応じたポイント・レベルなどゲーミフィケーション要素を加えて行動変容を促す。
多くの市民が自主的に健康的な運動習慣をつけてもらえる環境を整備することが狙いで、千葉市は2025年度以降の実装も視野に入れているという。

(図3)運動時間や心拍数を管理するスマートフォンアプリ「みえるリハビリ」
(出典:NTTコミュニケーションズ プレスリリース)
ミライト・ワンのソリューションに関するご質問、ご相談など
ございましたらお気軽にお問い合わせください。
最新の特集

通信/AI