火星にも到達、ますます活躍の場を広げるドローン

2021年6月14日

元々、ドローンは米国で軍事用として開発された。だが、初めて産業用のドローンを開発したのは日本企業であることは、あまり知られていない。1987年、世界で初めてヤマハ発動機が開発した産業用無人ヘリ「R50」が、ドローンの原点である。翌1988年からドローンは本格的に商用化された。以来、ドローンの活躍の場は年々拡大し、現在では、ドローンの話題が頻繁にメディアに登場するほど関心が高い。その発展は目を見張るものがある。今では、動くセンサーとして、空だけではなく、GPSを使用できない屋内や水中、そして、驚くことに宇宙にまで、活動範囲は広がっている。その話題のドローンの今に追った。

新型コロナウイルス対策でドローンが活躍

新型コロナが流行する以前から、ドローンは、交通インフラが整っていない一部の国や地域で、医薬品の輸送に使われていた。昨年から、世界中で新型コロナウイルス感染症が流行拡大しているが、ドローンは、医薬品や食料などの配送に世界各地で導入されている。日本でも、遅ればせながら、ドローンによる医薬品配送の実用化に向け、愛知県や大分県で実証実験が実施されその検証が進行中である。

ドローン

コロナ禍の中でもドローンはさまざまなシーンで活躍している。マスク着用や手洗いを呼びかけたり、市民に自宅に戻るよう促すのにもドローンが活用されている。中国では、赤外線カメラを搭載したドローンで、市民の体温を上空から測定し、熱のある市民に自宅待機や病院での受診を指示するなどの対策がとられた。非常事態宣言が発令されたスペインでも、警察がドローンで街路や公園を監視し、スピーカーから市民たちに警告を行った。日本でも、2回目の緊急事態宣言が発令された際、神戸市でドローンを使った外出自粛の呼びかけが行われた。

屋内でも、ドローンで消毒剤散布

屋内でドローンを運用するのは、難易度が高い。GPSデータの取得が難しいからだ。しかし、この課題もQRコードなどのマーカーを利用することで、解決されつつある。風船型の羽根のないドローンも開発され、人がいる空間でも安全に利用できるようになった。プロペラや翼の代わりにヘリウムガスを充填した風船によって浮遊する。超音波振動モジュールによって移動する仕組みだ。

屋内でも、ドローンで消毒剤散布 イメージ

ニューヨーク、ブロードウェイでは、劇場に消毒剤を散布するドローンも登場した。地面に置かれたタンクから、ホースで消毒液をドローンに送る。そこから劇場全体に噴射する。手作業で座席一つ一つに消毒液を吹きかけるよりも、効率的に消毒できる。国内では、ミラテクドローンが、4月から室内の消毒にドローンを活用するサービスを開始した。

海でもドローンが活躍、ダイバーの負担を軽減

ドローンが活躍するのは空だけではない。ダイバーの作業の代替や、作業補助ツールとしてもドローンが注目されている。広島県江田島市のカキ養殖場では、水中ドローンとローカル5Gを組み合わせ、高精細の映像を遅延なく陸上に伝送する実証実験が行われている。カキの殻にフジツボや海藻が付着すると、生育の阻害要因となる。従来のカキ養殖では、ダイバーが潜水して海中の様子を確認する必要があった。水中ドローンで確認作業を行うことで、除去作業が必要な場所を特定し、ダイバーの負担を低減できる。また、ドローンに搭載したセンサーで水温や塩分濃度、水中の酸素量などを確認し、カキの生育に影響を与える環境変化を早期に発見することが可能だ。

水中ドローンで生物研究を実施、生徒向け特別授業も展開

海洋研究や教育分野でも水中ドローンの利用が進んでいる。日本初の水中ドローン専業メーカーFull Depthは、水中ドローンを活用し深海1,000メートル域の生物研究を実施している。高知県の室戸ジオパーク推進協議会は、県内の高校生向けに、水中ドローンで撮影した深海の映像をリアルタイムで見ながら、海底の地形や深海生物などについて学ぶ特別授業を行った。日本財団の「海と日本プロジェクト」では、水中ドローンとVR機器を活用し、海に行くことができなかった生徒に向けて特別授業を展開している。

NASAの火星探査車にドローンを搭載、宇宙でも飛行

ドローンはついに宇宙にも進出した。2021年2月、火星着陸に成功したNASAの火星探査車には、小型のドローンヘリコプター「Ingenuity」が搭載されている。Ingenuityは、地上から13光年離れた距離にあり、コントローラーで操作することは不可能だ。そのため、Ingenuityは、NASAが開発したプログラムで自律飛行する。重力は地球の3分の1、大気密度は地球の100分の1という環境での飛行は簡単ではないが、Ingenuityは、4月19日、地球以外の星での初飛行を成功させた。一回目の飛行は垂直方向のみだったが、その後、4月25日には、水平方向に50m飛行することにも成功し、今後はより難易度の高い飛行テストが実施される予定となっている。

火星

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