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空飛ぶタクシーの実現に向け、大阪・関西万博で4事業体が「空飛ぶクルマ」の運航へ
目次
「2025年日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)」は、2025年4月13日~10月13日まで、大阪市夢洲地区で行われる予定で、開催まで1年を切った。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、コンセプトは「未来社会の実験場」だ。

「大阪・関西万博」の会場イメージ(出典:2025年日本国際博覧会協会)
「空飛ぶクルマ」の運航事業者として4事業体を選定
「大阪・関西万博」の目玉の1つは、「空飛ぶクルマ」の運航だ。遊覧飛行や2地点間移動など、「空飛ぶクルマ」の活用と事業化を目指している。運航事業者は、会場内ポートと会場外ポートをつなぐ2地点間運航の実現に向け、準備を進めている。
大阪府では、当面の目標として、「大阪・関西万博」での商用運航の実現を目指している。特に国における制度設計・ルールのための実務的協議や実証実験等を精力的に進め、具体的で現実的な課題の抽出や提案を行うことを目的の1つとして、2020年11月、「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」を設立した。
2021年度は、大阪での「空飛ぶクルマ」の実現に向けた今後の取組みの工程表となる「大阪版ロードマップ」の策定に向け、4つのワーキンググループを設置して議論を重ねながら、実地での実証実験を行ってきた。2022年度以降は、「大阪版ロードマップ」に基づき、大阪ラウンドテーブの参画メンバーがそれぞれの役割を果たすことで、大阪における2025年の「空飛ぶクルマ」の実現に向け、取組みを進めている。

「大阪版ロードマップ」(出典:大阪府)
「大阪・関西万博」での「空飛ぶクルマ」の運航事業者としては、ANAホールディングス(ANA)およびJoby Aviation(Joby)、 日本航空(JAL)、丸紅、SkyDriveなどの5社、4事業体が選定されている。
ANAとJobyは「Joby S-4」を利用
ANAとJobyは、会場内ポート及び会場外ポートをつなぐ2地点間での「空飛ぶクルマ」の運航を計画する事業者として参画する。両者は、2022年2月に「eVTOL(イーブイトール:電動垂直離着陸航空機)」を活用した、日本における新たな運航事業の共同検討に関する覚書を締結している。なお、覚書には、地上交通における連携等を想定し、トヨタ自動車も参加している。
Jobyは、米カリフォルニア州に本社を置く「eVTOL」を開発する会社で、2025年には米国でエアモビリティサービスの提供を開始する予定だ。
「eVTOL」は、「空飛ぶクルマ」とも称され、電動モーターで複数の回転翼を回転させ、垂直離着陸できる小型航空機を指す。渋滞の緩和や温暖化への対策など、持続可能な社会の実現に貢献する新たなモビリティとして開発が進められている。
Jobyが開発した「Joby S-4」は、最大航続距離約240㎞超、最高速度約320km/hの5人乗り仕様。海外機として初めて、国土交通省航空局に日本の型式認証を申請している。

「Joby S-4」(出典:Joby Aviation)
ANAでは、「空飛ぶクルマ」を用いた、ゼロエミッションな都市型航空交通の実現を目指し、その第一歩として大阪・関西万博を起点とした関西圏での運航の実現を目標にしている。同社がこれまでに培った航空機運航の知見を活かし、都市圏において、都市内ポートや空港ポートをつなぎ、地上交通よりも移動時間の短縮による時間価値提供により、新たな空の移動体験を創造するという。実現には、地上インフラや法制度といった運航環境の整備が必要となるため、さまざまなステークホルダーと連携して実現を目指していくという。
JALはVolocopter GmbHが開発する2人乗りマルチコプター型eVTOLを利用
JALでは、次世代モビリティの社会実装に向けた重要なステージとなる大阪・関西万博において、70年余にわたる航空運送事業の営みにて培ってきた知見・経験を活かし、「空飛ぶクルマ」の運航を目指している。
同社は万博会場内ポートと会場外ポートをつなぐ2地点間での運航実施を目指しており、ドイツのVolocopter GmbHが開発する2人乗りマルチコプター型の「eVTOL」である「VoloCity」を使用する。

「VoloCity」(出典:Volocopter GmbH)
「VoloCity」は、最高速度約110km/h、最大航続距離約35km、最大積載量200kgで、全高約2.5m、全長は約11.3mだ。
JALは2020年9月、Volocopter GmbHと、エアモビリティ分野における新規事業の創出を目的として、日本における市場調査や事業参画などの共同検討に関する業務提携を行っている。
JALは海外での試験飛行を重ねており、2024年にはフランス・パリ、シンガポール等にて商用運航を予定している。
丸紅はVertical Aerospace Groupの「VX4」を利用
丸紅は電動で気候変動対策に大きく寄与する「空飛ぶクルマ」を活用した新規事業創出の一環として、大阪・関西万博の会場内ポートと会場外ポートをつなぐ 2地点間において、英国Vertical Aerospace Group(以下、Vertical社)の「VX4」を利用した運航を目指している。

「VX4」の飛行イメージ(出典:Vertical Aerospace Group)
「VX4」は、5人乗りで最大航続距離約161km超、最高速度は約325km/h。
丸紅とVertical社は、2021年9月に日本国内における市場調査や事業参画検討の共同実施に関する業務提携契約を締結し、「空飛ぶクルマ」の運航ビジネスの実現に向けた検討やエコシステムの形成を進めてきた。また丸紅は、「VX4」運航事業の早期実現を目指し、これまでに一部機体代金の支払いを実行し、25機分の購入予約権を取得している。さらに、「空飛ぶクルマ」の社会実装に向けた実証実験の1つとして「空飛ぶクルマが叶える"未来型旅行体験"モニターツアー」を実施している。
今後、丸紅は航空業界におけるネットワークや多角的な事業活動を通じて培ったノウハウを活用し、日本における「空飛ぶクルマ」の実装に向けた取組みをVertical社と連携して推進するという。
SkyDriveは「SD-05」を利用
SkyDriveは、「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに、「日常の移動に空を活用する」未来を実現すべく2018年7月に設立され、「空飛ぶクルマ」を開発している。2019年に日本で初めて「空飛ぶクルマ」の有人飛行に成功し、2025年の「大阪・関西万博」開催時に、会場内ポート及び会場外ポートをつなぐ2地点間での「空飛ぶクルマ」の運航を実施する予定で、大阪ベイエリアでのエアタクシーサービスの実現を目指している。
利用する機体は、「SD-05」で、大きさはローターを含め全長約13m、全幅約13m、全高約3m。座席定員は3名で最大離陸重量は約1,400㎏、最高速度は約100km/h、最大航続距離は約15kmとなっている。

「SD-05」(出典:SkyDrive)
商用運航の準備で苦戦
各社は「大阪・関西万博」での商用運航を目指しているが、機体の開発およびサービスの準備に遅れが出ている。丸紅は商用運航を諦め、デモ飛行になる予定だ。他社もサービスの実現を目指して準備を進めているが、「大阪・関西万博」で「空飛ぶクルマ」の商用運航が実現できるのか予断を許さない状況だ。
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