5Gを活用したVRで観光業を支援

2021年12月17日

観光業は、宿泊業や交通産業、飲食業の他にもアミューズメント産業や土産品産業など幅広い産業分野を包含しており、経済全体に与える影響が非常に大きい。それなのに、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、「新しい生活様式」への転換や国内外での往来が制限されたことによって、観光客数の減少など大きな影響を受けている。そんな観光業を、5Gの活用によって救おうとする動きがある。取り組み方としては、VRコンテンツと物産展を組み合わせたり、観光地でのVRコンテンツの提供などさまざまだが、いずれにせよ5GによるVR技術の活用が鍵になりそうだ。

5G対応を前提に設計されたVRシステム

ドコモの5Gネットワークを使ったパートナーソリューションに採用されている「ABALシステム」は、体験者がVR空間内に入って自由に歩き回れる基幹システムだ。スマートフォンを使って、VR空間にビデオ画面で入ることもできる。特にこのVRシステムの特徴は、独自の空間圧縮技術によって、平面だけではなくビルなどの立体空間をバーチャル上に再現したコミュニケーションも可能になることだ。

「ABALシステム」は5G対応を前提に設計されているため、大容量なバーチャル空間情報の高速通信が可能で、大量かつ高速に空間情報を通信できる。これによって、将来的には現実空間そのもののリアルタイムストリーミングも可能となるという。また、5Gの多数同時接続の特徴を生かし、複数の人が同時に1つのバーチャル空間に入ってコミュニケーションをとることができる。いずれは、1つのバーチャル空間に何千、何万ものユーザーを集わせることも計画している。

ドコモの5Gネットワーク対応を前提に設計されている「ABALシステム」(出典:ドコモのホームページ) イメージ
ドコモの5Gネットワーク対応を前提に設計されている「ABALシステム」
(出典:ドコモのホームページ)

5GとVRで未来の物産展を開催

JR東日本とJR東日本スタートアップ、ABAL、ドコモは、2021年3月17日から28日まで東京駅八重洲口の特設コーナーにおいて開催された「未来の物産展 from 青森」の中で、5Gと「ABALシステム」を組み合わせた未来の物産展の仕組み「Hybrid Retail Platform」の実証実験を実施した。

物産展は、行政の地域振興局や生産者団体が地元の観光資源や物産をPRし、観光客の誘客に繋げる目的でも開催される観光事業だ。JR東日本ではこれまで、地方創生の一環として各地の物産展を首都圏駅で積極的に取り組んできたが、出店事業者は長距離の移動が必要なため負担が大きく、物産展事業の拡大を阻害する要因になっていた。今回の実証実験では5GとVRの技術を活用し、地方事業者が物理的距離や出店コストなどの課題を解消して、都心でのビジネスが展開しやすくなるソリューションが実現できるのかを検証した。

「未来の物産展from青森」は、青森県の観光や物産、食をVR技術で体験できる新しい形態の物産展だ。東京駅八重洲中央口の「JAPAN RAIL CAFE」内に置かれた特設コーナーにおいて、青森県の観光名所を5階建ての建物としてVR 空間で再現。ユーザーはVRゴーグルを装着して、VR空間内に入って青森県を旅する。VR空間内では、ユーザーはABALの「多階層空間移動」技術によってエレベーターで各フロアに移動し、VRコンテンツを楽しむ。

今回の実証実験では、青森県の地産品やご当地グルメを購入できるVRショッピングの仕掛けも用意された。VR空間内で選択した地産品やご当地グルメは、VR体験終了後に「JAPAN RAIL CAFE」内にて決済して商品を受け取ることや、物産展限定メニューの飲食をその場で楽しむこともできた。

「未来の物産展from青森」で実証された5GとVRによる新しい形態の物産展(出典:JR東日本、JR東日本スタートアップ、ABAL、ドコモの共同プレスリリース) イメージ
「未来の物産展from青森」で実証された5GとVRによる新しい形態の物産展
(出典:JR東日本、JR東日本スタートアップ、ABAL、ドコモの共同プレスリリース)

観光誘客に5GとVR、ドローンを活用

5GとVRに、ドローンを組み合わせた取組みも登場している。熊本県阿蘇郡南阿蘇村の道の駅「あそ望の郷くぎの」では、商用5Gサービス開始に先立つ2019年12月に、5Gとドローンを活用したVR観光サービスの実証実験が実施された。KDDIや東海大学などによる同実験では、道の駅上空のドローン飛行区域を5Gエリア化し、ドローンに搭載した360度カメラで撮影した阿蘇山の全景を、参加者のVRヘッドセットにリアルタイムに配信した。

5Gドローンを活用した360度のライブ映像伝送によるVR観光(出典:KDDIプレスリリース) イメージ
5Gドローンを活用した360度のライブ映像伝送によるVR観光
(出典:KDDIプレスリリース)

南阿蘇には、阿蘇山のほかにも、絶滅危惧種ハナシノブの群生地などの観光スポットなどがある。ドローンを利用することで、火山活動の状況によって入山規制されるエリアや、人が立ち入れない熊本地震の遺構なども、余すことなく伝えることができる。複数の5Gドローンから360度VR映像のライブ伝送を可能にすることで、遠隔地にも南阿蘇地域の魅力を発信するなど、観光誘客への活用を見込むほか、災害時には、被害状況の把握に活用する。

「未来図メディア」メールマガジン登録

5G×IoTの最新情報やイベント・セミナー情報を
いち早くお届けします。

ミライト・ワンのソリューションに関するご質問、ご相談など
ございましたらお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ