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#観光 #アート #DX #AR

デジタルの活用で鑑賞だけでない
新たな体験を提供するアート観光

2023年2月27日

時代の変化に伴い、市場や消費者のニーズも商品の所有に価値を見い出す「モノ消費」から、所有では得られない体験や経験に価値を見い出す「コト消費」へと変化してきた。そして、コト消費の典型例とも言える美術館・博物館めぐりといったアート観光においても、デジタルを活用したツーリズムテックが進化し、従来の概念を超えた楽しみ方が提案されている。

名画の世界に入り込む没入型の美術展

2022年7月8日から10月29日まで東京・日本橋で開催された「Immersive Museum」のテーマは、「鑑賞する絵画から、体感する絵画へ」だ。単なる「絵画の映像化」ではなく、演劇やアート、エンターテインメントなどのジャンルで近年世界的なトレンドとなっている、「Immersive(没入感)」をキーワードにした新たなアート体験プログラムを提供。画家たちが、何を見てどう捉え、どのように表現しようとしたのかについて「絵画対自分」ではなく、画家の視点に乗り移ることで探るという新しい手法が試みられた。

会場となった日本橋三井ホールの広大な屋内空間に、特別な音響効果と壁面および床面すべてに投影される没入映像を組み合わせて名画の世界を再現。参加者はその空間内を自由に歩き回ることで、視覚を通した「見る」「鑑賞する」といった行為を超え、あたかも全身で名画の世界に入り込んだような感覚に陥る。

日本開催の第一弾として「印象派(IMPRESSIONISM)」を取り上げ、世界的に人気の高いクロード・モネの「睡蓮」やドガの「踊り子」、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」といった著名な名画の数々を映像化。瞬間の光を捉えた印象派絵画に「時間」を与え、鑑賞者との距離や大きさという「スケール」を変え、編集や音楽の「文脈」を加えることで、印象派を解体し再構築したという。

数十台のプロジェクターを制御する、最新の映像技術で実現された絵画の没入(イマーシブ)体験は、テクノロジーの進化が開くアートの可能性や美術を拡張する視覚表現として、従来の概念にとらわれない新たな美術館の誕生を予感させた。

(図1)「Immersive Museum」で提供された絵画に没入する新たなアート体験(出典:「Immersive Museum」のYoutubeより) イメージ
(図1)「Immersive Museum」で提供された絵画に没入する新たなアート体験
(出典:「Immersive Museum」のYoutubeより)

東京都の自然に生息するいきものをデジタルで探す博物館

東京都は日本でも有数の、多様な自然環境が残っている地域でもある。そこで、東京都は8K撮影映像や360°水中カメラ映像を用いた高解像映像、さらにAR(拡張現実)などを活用して東京の地図からいきものたちを探し出す体験型コンテンツ「東京自然いきもの展」を、2023年1月21日から2月5日まで国立科学博物館で開催した。

「東京自然いきもの展」では、「東京ネイチャースコープ」「多摩川360°ツアー」「地図から探す 東京いきものAR図鑑」といった3つのコンテンツを提供。「東京ネイチャースコープ」では、東京の4つの自然フィールドに生息する生きものを8K撮影映像で紹介するとともに、手元の小型モニターで好きなところを自由に拡大し、生きものを発見・観察できる。

また、「多摩川360°ツアー」では、多摩川の上流から下流までを360°水中カメラで撮影した映像で紹介するとともに、手元のコントローラーで視点を自由に動かしながら生きものを発見するコンテンツを提供。そして、「地図から探す 東京いきものAR図鑑」では、東京に生息する生きものを、巨大地図から専用タブレットを使ってARで探すアプリが提供された。

(図2)「多摩川360°ツアー」の体験イメージ(出典:「多摩川360°ツアー」のホームページより) イメージ
(図2)「多摩川360°ツアー」の体験イメージ
(出典:「多摩川360°ツアー」のホームページより)

8Kやプロジェクションマッピングを駆使した未来の博物館

東京国立博物館の創立150年記念事業として、2022年10月18日から12月11日まで開催された「未来の博物館」では、会場を3つに分け「時空を越える8K」「四季をめぐる高精細複製屏風」「夢をかなえる8K」といったテーマで展示が行われた。

NHKが主催する「時空を越える8K」では、最新の8K映像技術や3DCG技術を用いた「8K文化財」によって、遠く離れた法隆寺・夢殿の空間や、国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」に描かれた400年前の京の都の賑わいを、大画面に映し出された映像を通して、あたかもその場にいるように味わうことができた。

また、キヤノンの協賛による「四季をめぐる高精細複製屏風」では、東京国立博物館が所蔵する4つの国宝「花下遊楽図屏風」「納涼図屏風」「観楓図屏風」「松林図屏風」の中を歩き、屏風に描かれた四季の風景を感じる鑑賞体験が、高精細複製品へのプロジェクションマッピングで提供された。

そして、シャープの協賛による「夢をかなえる8K」では、鎌倉時代を代表する仏像の細部の表現を光を照らしてじっくりと調査したり、名だたる茶人が手にした名碗「大井戸茶碗 有楽井戸」を手に取り、さまざまな角度から眺めるなどの体験が、8Kの高精細画像を用いたアプリケーションと操作デバイスでバーチャルに実現された。

改正博物館法によってDXが進む地方の博物館

こうしたデジタルを活用したアート観光の取り組みは、都心だけではなく地方にも広がっている。岐阜県博物館は360°鑑賞できる装置を導入し、収蔵品をデジタル化するDX事業を進めてきた。そうやって作成されたデジタルデータを活用し、2022年12月23日から、メインホールに展示されている恐竜の全身骨格標本にスマートフォンをかざすと生体像が現れる恐竜ARアプリを公開している。

来館者は、メインホールに設置された電子掲示板のQRコードから、専用アプリをスマートフォンやタブレットにダウンロードする。その後、それらのカメラを「イグアノドン」「アロサウルス」「ステゴサウルス」の骨格標本に向けると恐竜の生体像が浮かび上がり、360度自由な角度から鑑賞できる他、恐竜と記念撮影もできる。

2023年1月18日からは、1億年前の恐竜がいた白川村を再現するVR(仮想現実)体験も提供開始。専用のゴーグルを装着すると、恐竜の足跡の化石が見つかった白川村の大白川上流部を舞台に、約1億年前の光景がCGで再現される。

岐阜博物館では、デジタル技術によって地域の魅力を別の視点で広く伝えたいという思いから、このような取り組みを始めている。その背景には、2022年に成立し2023年4月から施行される改正博物館法によって、博物館の事業に史料のデジタルアーカイブ化が加わることがあるという。

もともと、博物館には社会教育にとどまらず、「まちづくり」や「集客・賑わい創出」といった役割を担うことが期待されている。今後、全国でこのようなデジタルを活用した新たな体験を提供する博物館が増えてくれば、地域住民のみならず、地域外からも多くの人を呼び込むことができ、インバウンドに向けた観光振興にも貢献できるようになるだろう。

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