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ARやVRなどの最新テクノロジーを使い誰もが超人になって楽しめる「超人スポーツ」

2022年11月21日
話し手
  • 一般社団法人超人スポーツ協会
    共同代表
  • 中村 伊知哉
  • ディレクター
  • 安藤 良一

現存するスポーツの多くは19世紀までに誕生し、20世紀になると自動車産業と一体化したF1などのモータースポーツが生まれた。そして、ロボティクスやAI、ICTなどのテクノロジーが進化した21世紀にも、こうした技術を活用した新しいスポーツが生まれようとしている。それが、ARやVRなどを活用して、誰もが超人になって楽しめる「超人スポーツ」だ。今回は、超人スポーツの概念を提唱し、種目認定や普及活動などを行っている超人スポーツ協会の共同代表である中村伊知哉氏とディレクターの安藤良一氏に、超人スポーツの概要などについて伺った。

ARやVRを活用した超人スポーツの競技

超人スポーツとはどのようなスポーツなのか。中村氏によると、誰もが超人になれるスポーツであり、身体にさまざまなテクノロジーを取り込むことにより、人と機械が一体となった「人機一体」のスポーツを目指していると語る。「AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、ロボティクスなどといったテクノロジーを活用して、人間や環境を拡張します」(中村氏)。

実際の競技を見てみよう。現在、超人スポーツ協会が認定している競技は31個(2022年10月現在)。例えば、ARを活用したスポーツ「HADO」では、プレイヤーが頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着する。その状態で、AR技術とモーションセンシング技術によって手から「技」を発動して相手にダメージを与える3対3のチーム戦だ。まさに、子どもの頃に誰もが憧れたマンガやアニメの世界を最新のテクノロジーで実現しており、すでに世界大会も開催されている。


(動画1)ARを活用して手から発する技で戦う「HADO」。相手プレイヤーのライフをエナジーボールとバリアを駆使して削りながら勝利を目指す。
(出典:meleap inc.)

VRを活用したスポーツ「CYBER WHEEL X」では、プレイヤーがVRゴーグルを装着。パラ陸上のレースで使用される車イスレーサーを未来型にデザインした乗り物を使って、2100年の近未来をイメージしたメタバース上の東京を疾走する対戦型レース。オンラインでつながった2台の車イスレーサーが、400メートルと想定されたコースを最高速度60キロで走り抜ける。左右のタイヤに付いているハンドリムを回す速さに、VRの映像が連動。頭を動かすことで障害物を避けたりコースを左右に移動でき、カーブ操作やコースのアップダウンに連動した変化も感じられる。


(動画2)VRを活用し、競技用車イスで近未来の東京の街を走り抜ける「CYBER WHEEL X」。オンラインでつながった2人がスピードを競い合う。
(出典:超人スポーツ協会)

パラスポーツである「ボッチャ」のルールはそのままに、最新テクノロジーを駆使して、まるでサイバー空間の中で対戦しているような体験が得られるのが「サイバーボッチャ」だ。ボッチャの本質である戦略性をビジュア化し、1投ごとに音が作られ戦いの流れに合わせた音楽でゲームを演出。ボールの色と高さ、距離をリアルタイムにセンシングしてポイントも自動計算される。

(図1)サイバー空間の中で戦っているような体験が得られる「サイバーボッチャ」(出典:超人スポーツ協会) イメージ
(図1)サイバー空間の中で戦っているような体験が得られる「サイバーボッチャ」
(出典:1-10 inc.)

オリンピックとパラリンピックの間の競技として誕生

そもそも、超人スポーツはどのような経緯で誕生したのか。当初、超人スポーツとして考えられたのが、「HADO」や「CYBER WHEEL」以外にも、ばねでできた竹馬を足につけてジャンプ力を強化し、弾力性のある透明な球体を上半身に被って衝撃から身を守りながら、相手を先に倒すか、エリアから出した方が勝ちとなる「バブルジャンパー」や、小型のモーターデバイスを手綱で操作して競走競技を行い、複数人で順位を競う人機一体のスポーツ「キャリオット」などといった身体拡張型のスポーツだ。中村氏は超人スポーツ協会が立ち上がった2015年当初、「ロボットをはじめとするさまざまなテクノロジーを活用し、人間の身体能力を超える力を身につけ、手足が不自由な人でも健常者と同じように対戦できる競技を作りたい」と考えていた。

そして、超人スポーツ協会では2020年に開催される予定だった東京オリンピック・パラリンピックに照準を合わせた、世界大会の開催を目指していた。「オリンピックは誰にでも門が開かれていますが、身体能力が高い人しか出られません。一方でパラリンピックは、健常者には門が閉じられています。すなわち、健常者だけど身体能力が高くないという、大多数の人が参加できるスポーツ大会がないことに違和感をもっていました。それなら、オリンピックとパラリンピックの垣根をとっぱらうような、誰もが参加できて楽しめるスポーツ大会を開催したいと思ったのです」(中村氏)。

(写真1)一般社団法人超人スポーツ協会 共同代表の中村伊知哉氏 イメージ
(写真1)一般社団法人超人スポーツ協会 共同代表の中村伊知哉氏

残念ながら、その目標はコロナ禍の影響で実現できなかったが、「一方で、コロナ禍によって自転車ロードレースのツール・ド・フランスがバーチャルで開催されるなど、サイバー系スポーツに対する認識が大きく変わってきました。自宅のローラーの上で自転車を漕ぎ、ネットワークでつないで時間を競う。これは、われわれが考える超人スポーツそのものなんです」(中村氏)。

同時にeスポーツも日本で注目を浴び始め、JeSU(日本eスポーツ連合)が立ち上がって賞金ルールが明確化されたこともあり、企業が参入しやすくなった。「超人スポーツもeスポーツと融合し、5Gの技術やメタバースを活用した、次世代の種目を作っていく時期になってきたかなと見ています。ツール・ド・フランスのような自転車競技も、全世界を5Gで繋げばフランスに行かなくても世界大会に参加できるし、オリンピック・パラリンピックも1都市集中型にする必要がなくなりそうだと。そういうものを、われわれのテクノロジーで開発をしていく時期が来たと感じています」(中村氏)。

メタバース空間での超人スポーツのイメージについて、中村氏は「私たちは身体拡張を目指しているわけですが、メタバース空間ではアバターを分身させたり分散させながらスポーツをすることが考えられます。例えば、自分自身を分散させて大勢で戦うとか、複数の人のアバターを合体させて強いアバターになって戦うとか、メタバース空間だからこそできる超人スポーツもあるでしょう」と語る。

(画面1)宮沢賢治の銀河鉄道の夜に登場する鳥捕りをモチーフにして作られた「トリトリ」は、まるで鳥が鳥を捕まえるかのように、ドローンがターゲットドローンを捕まえることで得点を競う。(出典:超人スポーツ協会) イメージ
(画面1)宮沢賢治の銀河鉄道の夜に登場する鳥捕りをモチーフにして作られた「トリトリ」は、まるで鳥が鳥を捕まえるかのように、ドローンがターゲットドローンを捕まえることで得点を競う。
(出典:超人スポーツ協会)

6Gなどこれから実現される新テクノロジーにも期待

超人スポーツ協会が認定した「HADO」や「サイバーボッチャ」などの種目は、2022年4月に東京・港区でグラ ンドオープンしたeスポーツパーク「RED゜TOKYO TOWER」内でも体験できる。だが、中村氏によると、バーチャル空間を活用したサイバースポーツを商用化している施設は、それ以前からあるという。「もはや、全国で見かけることも多くなった、シミュレーションゴルフ場です。すでに、バーチャル空間を使ったスポーツ施設を、それなりのお金を出して利用する人が結構いるなあと感じています。ビジネスをうまく組み立てたら、通信とメタバース、スポーツを組み合わせた市場がいろいろと見えてきそうです」(中村氏)。

中村氏は、6Gなどの次世代通信技術にも期待している。「宇宙空間でも通信が使えるようなれば、新しい展開も考えられるでしょう」(中村氏)。また安藤氏は、他の要素技術としてロボティクスやVR、AR以外にも、ハプティクス(触覚技術)や「脳で考えただけでものを操作したりする、BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)にも期待しています」と語る。

(写真2)一般社団法人超人スポーツ協会 ディレクターの安藤良一氏 イメージ
(写真2)一般社団法人超人スポーツ協会 ディレクターの安藤良一氏

それらをフィールド技術として利用するメタバースの活用が、次の超人スポーツの方向性の中で見えているという。「デジタルツインもメタバースの1つであると捉えているので、現実世界と物理的につながったメタバースの中で連動する超人スポーツもいろいろと展開されそうです」(中村氏)。

実は、こうしたサイバースポーツの発想は日本人が得意としており、海外ではあまり例がないそうだ。その理由について、中村氏は「日本人はマンガやアニメなどで、ほとんとの人が超人のイメージを共有しています。だから、こうした発想が自然と出てくるんです」と述べ、海外からも「ああ、なるほど日本の発想だね」と見てもらえるという。

超人スポーツ協会が新しいスポーツを作って競技にする段階も、そろそろ終わりにきそうだという。今後は誰もが超人スポーツを作り出し、みんなで勝手に楽しんでもらいたいと考えており、さらなる超人スポーツの広がりに期待したい。

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