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いつもと同じ快適さをどこででも。 5Gと「OUTPOST」が実現する未来の暮らし

2022年3月4日
いつもと同じ快適さをどこででも。 5Gと「OUTPOST」が実現する未来の暮らし
いつもと同じ快適さをどこででも。 5Gと「OUTPOST」が実現する未来の暮らし
話し手
  • トレジャーデータ株式会社
  • 取締役
  • 堀内 健后

「海の側で波の音を聞きながら暮らしたい」「大自然の中で鳥のさえずりに囲まれて暮らしたい」などなど。コロナ禍で働き方に対する意識が大きく変わってきたことで、今の仕事を続けながらテレワークを活用してそんな願いが叶うようになってきた。とはいえ、実際にそんな場所に家を建てるには、ライフラインを確保するためにさまざまな条件を整えなければならない。そんな面倒な制約に縛られず、ただそこにコンテナを置くだけで住むことができる未来の住宅「OUTPOSTTM」を実現させようとしているのが、トレジャーデータ 取締役の堀内健后氏である。堀内氏にその構想と実現に向けた5Gの役割について伺った。

どんな場所でも快適な生活が得られる家とは?

今でも、ライフラインが整っている町から離れて住むことは、それほど難しいことではない。水道がなければ井戸を掘ればいいし、自家発電の設備を整える方法も複数ある。オール電化にすればガスはいらないだろう。だが、それらの設備を自分で維持管理するのは容易ではなく、むしろそのために日常が費やされてしまう。テレワークなどを活用して、今まで通りの仕事を続けようとしても難しいかもしれない。
英語のOUTPOSTは、辺境や戦場に作られる前哨基地を意味するが、トレジャーデータの「OUTPOST」は、最新の技術によってライフラインから自律しながらも、いつもの快適な暮らしをどこにでも提供してくれる住宅だ。トレジャーデータは、「OUTPOST」をトレーラーなどでも運んでいけるコンテナハウスで実現しようとしている。現在あるコンテナハウスとは違って、電気や水道、ガスなどの配管も必要としない。そのため、法的に居住が許される土地であれば、トレーラーで持っていって'ぽん'と置くだけで生活できるようになる(写真1)。

「OUTPOSTを実現するにあたっては、プレハブ式で2、3日で組み立てられる家も考えたのですが、コンテナ型ならば今月は海の側、来月は山の中など、日本全国で自由に移り住む移動型のライフスタイルが実現できます」(堀内氏)。

(写真1)「OUTPOST」が実現する未来の住空間のイメージ(資料提供:トレジャーデータ)
(写真1)「OUTPOST」が実現する未来の住空間のイメージ
(資料提供:トレジャーデータ)

「OUTPOST」のコンセプトは、社会インフラからの?やエネルギーの供給を必須とせず、?給──/共有共?してそれらを賄う「オフグリッド」と、暮らし?体が常時接続/適切にモニタリングされ健康の担保や有事における安全安?を担保する「コネクテッド」の2つだ。これらのコンセプトを実現させるために、複数の企業からなるコンソーシアムが組成されている。例えば、水道インフラの代わりに生活用水の浄化や循環を担う装置、太陽光発電などによって自家発電した電気を溜めておく蓄電池や無線給電を提供するシステム、さらには空調や健康管理、生体検知を担うシステムなどを提供する企業などがコンソーシアムに参加している。

「そもそも、トレジャーデータは住宅を作ることが目的ではなく、データを活用することを事業目的にしている企業です。なので、住環境を構築する要素技術については、それぞれの分野に強い企業と連携しながら事業を進め、私たちはそれらの企業が構築したシステムからのデータを統合し管理する役割を担っています」(堀内氏)。

水回りのオフグリッド化で家も進化する

要素技術の中でも、特にコストがかかるのが水環境だ。そこには独?の?処理センサー及びアルゴリズムを?いた、次世代分散型の?供給インフラを提供するWOTAの技術を上下水を含めた?活──の浄化・循環機能に活用する。

「現状では、手洗いやシャワー用の中水領域の浄水化までしか実現できていないのですが、将来的には有機物を生物処理して、トイレで使用した下水も上水化するところまでロードマップに描いています。これによって、最初に運んできた水や雨水を貯めて浄化すれば、新たに補給することなく水を使い続けられるようになります」(堀内氏)。

水道をオフグリッドにするメリットは、家を建てる場所の制約から解放されるだけではないという。堀内氏は、WOTAが提供する浄化装置が小型化できれば、キッチンやバス、トイレを1つのユニットにして、屋内もオフグリッド化できると考えている。従来の家の場合、部屋の仕切りを動かすことで間取りを変えることができたが、水回りまでは動かせなかった。「水回りが一体となったユニットを必要に応じて家の中で移動させれば、食事をする時やお風呂に入る時だけユニットを窓際に移動させて、外の景色を眺めながら食事や入浴ができるようになります」(堀内氏)。

こうなってくると、家の設計そのものはただのフラットな床と電源だけあればいいというように変わってくるかもしれない。ワイヤレス充電が進化すれば、電源コンセントも必要なくなるだろう(写真2)。

(写真2)CEATEC2019に出展された「OUTPOST」のコンセプトプロトタイプ(資料提供:トレジャーデータ)
(写真2)CEATEC2019に出展された「OUTPOST」のコンセプトプロトタイプ
(資料提供:トレジャーデータ)

5Gが実現するどこに行っても自分の家がある暮らし方

オフグリッドと同様、「OUTPOST」の実現にはコネクテッドというコンセプトも重要な役割を持つ。「OUTPOST」のような家を実現するには、電力管理をはじめとするさまざまな装置をネットワークに接続して、クラウド上のセンターから管理する必要がある。例えば、水の浄化装置にしても、フィルターの交換や水質の状態などを常にメーカーがネットワークで監視する。その他にも、屋内外の環境データに基づいた室内温度・湿度の最適化や、住人の健康管理、生体検知までもネットワークで管理しようとしている。

「これからの高齢者社会に向けて、さらに深刻になってくる見守りの課題にも対応できるようなソリューションも、OUTPOSTに組み込んでいこうと思っています。このように、今後も家の中には、さまざまな用途で使われるセンサーが増えていくでしょう」(堀内氏)。

そうした環境で必要になるのが、5Gの通信インフラだ。「OUTPOST」での快適な生活を保証する、複数のセンサーからのデータを収集して遅延なくクラウドに送信するには、多数同時接続と低遅延を実現する5Gの活用が肝になる。そして、コネクテッドというコンセプトが、私たちにもう1つの新たなライフスタイルを提案してくれる。

(写真3)5Gと家のOSで管理される屋内の俯瞰イメージ(資料提供:トレジャーデータ)
(写真3)5Gと家のOSで管理される屋内の俯瞰イメージ
(資料提供:トレジャーデータ)

「私たちはコネクテッドによって実現される、家のOSを構築しようとしています。オフグリッドなトレーラーハウスは、そのOSで管理されるハードウェアの1つにすぎません。さまざまな家や集合住宅にも、共通するOSが組み込まれていれば、例えば普段自宅で設定している空調の温度や照明の明るさ、家電製品の操作などを旅行先のホテルなどでも再現できるようになるでしょう。そうなると、旅行のスタイルが変わってきます。そして、万が一災害に遭って仮設住宅などに住むことになっても、いつもの自宅と同じような環境で過ごせるかもしれません。オフグリッドでコネクテッドな環境を構築する上でも、全国で5Gのインフラが活用できることに期待しています」(堀内氏)。

「OUTPOST」を実現するには、法整備なども含めたさまざまな課題解決が必要だが、家のOSを導入する上ではハードウェアとソフトウェアの時間軸の違いも大きな課題となる。家の耐用年数は20年以上だし、家電製品も10年近くもつようになっている。一方で、ソフトウェアであるOSはその間に何度も更新され機能が上がっていくが、パソコンのようにOSのバージョンに合わせて頻繁に家を買い換えることはできない。

(写真3)トレジャーデータ株式会社取締役 堀内 健后 氏(資料提供:トレジャーデータ)
(写真3)トレジャーデータ株式会社取締役 堀内 健后 氏
(資料提供:トレジャーデータ)

「最初からハードウェアとソフトウェアの周期の違いを考慮して、しっかりとしたコンセプトを立てておくことが必要です。合わせて、5Gによって得られたデータの活用でサステナビリティを実現することについても、いろいろと研究していきたいと思っています」(堀内氏)。

これからも、私たちのライフスタイルは現在では想像もできないような形に変化していくかも知れない。そうした変化にも対応できる、どこに行っても自分の家がそこにある「OUTOPOST」な暮らし方。それを実現する鍵が5Gなのだ。

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