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Beyond 5G/6Gによって実現される未来のライフスタイルの提案に取り組むKDDI

2021年11月19日
Beyond 5G/6Gによって実現される未来のライフスタイルの提案に取り組むKDDI
Beyond 5G/6Gによって実現される未来のライフスタイルの提案に取り組むKDDI
話し手
  • KDDI総合研究所
  • 代表取締役所長
  • 中村 元

  • 取締役執行役員副所長 先端技術研究所長
  • 小西 聡

KDDIとKDDI総合研究所は2020年12月、2030年を見据えた新たなライフスタイルを提案する調査・応用研究拠点として、「KDDI research atelier(リサーチアトリエ)」を東京・虎ノ門に開設した。KDDI research atelierでは、これまでKDDIグループによって培われてきたさまざまな資産を活用し、私たちの生活や社会の中長期的な課題の解消と、一人ひとりに最適化されたライフスタイルの実現を目指している。今回は、KDDI総合研究所の中村元氏と小西聡氏から、KDDI research atelier の取り組みの概要と、そこにBeyond 5G/6Gのネットワーク技術がどのように有機的に結び付いていくのかについて伺ってみた。

新たなライフスタイルを提案する
研究拠点を開設

KDDI research atelierの目的は、「新たなライフスタイルの提案」「新たなライフスタイルに関する応用研究(技術検証と受容性検証)の実施」「実際のフィールドでの情報発信」という、3つの取り組みを実践する場になることだ。KDDI総合研究所は最先端の基礎研究を埼玉県ふじみ野市にある「先端技術研究所」で行っているが、その研究成果だけで新たなライフスタイルを提案するのは難しいと考えている。さらに、新たに提案しようとするライフスタイルを、「KDDIグループだけで実現することも難しい」と中村氏は語る。「KDDI research atelierは、他社の技術者やパートナーの方々とともに、新たなライフスタイルを開拓、研究する拠点とも考えています」(中村氏)。

KDDI総合研究所 代表取締役所長中村 元氏
KDDI総合研究所 代表取締役所長
中村 元氏

KDDI総合研究所が提唱する「新たなライフスタイルの提案や検証」とは、どのようなものだろうか。例えば、KDDI research atelierではオフィスの一角に小さなコンビニエンスストアを置き、実際に社員がスマートフォンのアプリで商品を購入する実証を行った。社員から注文された商品はピッキングロボットが棚から取り出し、配送ロボットがデスクまで運んでくれる。こうしたロボットによるデリバリー技術が、実際に生活領域で受け入れられるのかどうかについて、自ら検証しているという。

この実証で得られた発見について、中村氏は「まとめ買いをしなくてすむようになるので、最初にサラダだけ頼んで、その後にサンドイッチを食べるかおにぎりにするかを選んだり、食後に物足りなかったらデザートを追加するといったことが、デスクからできるようになります。こうした新しい購買のスタイルが、私たちの生活に小さな変化をもたらすかも知れません」と紹介する。ロボットの受容性に関しても、「オフィス内をロボットが歩き回るので、最初はロボットが来ると人がよけていたのですが、ロボットの方が人をよけてくれることがわかってくると、だんだん存在が気にならなくなってきました」など、実際に運用してみないとわからないさまざまな発見があったという。

9つのライフスタイルで
ユースケースを想定

KDDI research atelierでは「食」、「購買」、「健康」、「学び」、「遊び」、「交流」、「働き方」、「休養」、そして「住み方」という9つのカテゴリーで、ライフスタイルの将来像を描いている。それらの将来像実現の鍵となる、サイバー空間とフィジカル空間を融合させる技術の開発は、先端技術研究所の役割だ。ここで小西氏は、「サイバー空間とフィジカル空間の融合には7つの技術が必要になるのですが、それらの技術を連携させるためにBeyond 5Gや6Gのネットワークインフラが必要になってくると考えています」と、KDDIのBeyond 5G/6Gの戦略策定に向けた考えを述べた。

KDDI総合研究所 取締役執行役員副所長 先端技術研究所長小西 聡氏
KDDI総合研究所 取締役執行役員副所長 先端技術研究所長
小西 聡氏

Beyond 5Gや6Gを活用したライフスタイルの将来像として、例えば「遊び」のカテゴリーでは「アマチュアとプロの境界がなくなる趣味・遊びの未来」を描いている。「一人ひとりの趣味や遊びを最適化することで、スキルレベルに合わせて、プロのスキル上達のノウハウや練習環境を、誰でも手軽に手に入れられる社会を実現したいと思います」(小西氏)。そこでは、例えば現実世界とバーチャル空間でプレイヤーの動作をリンクさせ、バーチャル空間のサッカー場でプロ選手と一緒にフィールドを走り回ってプレイしたり、そこに子どもや高齢者、身体に障がいを持つ人なども参加してゲームができる「ライフコーチング」を可能にするという。

こうした世界の実現には、「すべての人が楽しめる進化したフェアプレイ」「技術を向上させるフィードバック」「バイタル・スキルに応じた戦術指南」「バーチャルコミュニケーション」などが必要になり、そこに先の7つ技術が活用されると考えている。すなわち、個々の人の身体データを「IoT」で収集し、「XR(VR・AR・MR)」によってビジュアルな空間を実現し、障がいを持つ人を「ロボティクス」が支援する。

また「購買」のカテゴリーでは、購買のプロセスを省略化し、自分の時間を増やす「ライフデリバリー」の実現を将来像として描いている。先に紹介したオフィス内でのコンビニエンスストアの活用も、まさにライフデリバリーの具現化といえるだろう。家庭でのライフデリバリーを考えると、「AIが家族の味の好みや健康状態のデータを参照し、同じメニューでも家族に最適な食事を個別に提供するために冷蔵庫が食材の管理を行い、不足した食材を自動で発注する。急に必要になった食材はロボットがスーパーなどから直接配送してくれる」といった将来像が描かれる。

そのような世界の実現には、「センサーによる飲食物の自動購入」「バーチャルヒューマンによるカウンセリング」「ロボットによる自動配送」「点群データによる三次元動画」などが必要になり、そこにも7つの技術が活用される。例えば、主婦がその日の献立を考える際には、プロの料理人の知識をAI化したバーチャルヒューマンがスマートフォンの画面に現れる。また、普段離れて暮らしている祖父母が孫の誕生日を祝う際には、その場にいるように三次元動画で孫らが描かれて一緒に食事を楽しめる。

Beyond 5G/6Gの実現に向けた
要素技術の研究

こうした世界の実現は、現状の5Gによるネットワークインフラではまだ難しい。そこで、KDDI総合研究所では、5Gのさらに先に実現されるBeyond 5Gや6Gのネットワークインフラに関する要素技術について研究を進めている。例えば、5Gの基地局の建設は、なるべくカバレッジを広く効率よく作るために、六角形の蜂の巣のような形で作っている。しかし、面的なエリアについては、すでに4Gの基地局建設までである程度カバーできているという。「将来的にはロボットと人が衝突するようなことがないように、ネットワークインフラにはエリアだけでなく、品質も求められるようになるでしょう。今は、基地局に近い場所では快適に通信ができますが、基地局から離れてしまうと電波が弱くなって、データ通信が不安定になってしまうこともあります。エンターテインメントの動画を見るような場合ならばなんとか許容いただけるかもしれませんが、人の命に関わるようなシーンだと致命的な問題になります」(小西氏)。

そこでKDDI総合研究所が研究しているのが、「ユーザーセントリックRAN」という考え方だ。例えば、「Cell-Free Massive MIMO」という技術では、セルの境界での無線品質劣化を回避するために、基地局同士が連携してユーザーごとに無線品質を最適化する。また、「仮想化端末」の技術では、1台のスマートフォンだけでなく、ユーザーの周辺にあるさまざまなデバイスを協調させて、データの送信速度を向上させる。「ライフコーチングやライフデリバリーなどは、こうした技術が確立されないと実現が難しいと考えています」(小西氏)。

要素技術としては、他にも、特定方向に電波を反射できて設置も容易な透明型の反射板「メタサーフェス反射板」や、5Gの10倍のスループットを目指すBeyond 5Gや6Gのために、無線信号をアナログのまま伝送することでアンテナサイトの小型軽量化と省電力化を実現し、光ファイバの必要本数も減らす「光無線融合技術(IFoF)」といった研究などが進められている。「KDDIは通信だけでなく、もともとセキュリティに関しても高い技術を持っています。そのような資産を活用し、近い将来、量子コンピュータによって暗号が破られることがないように、耐量子暗号の研究開発も進めています」(小西氏)。

多様なパートナーとの
コミュニティ作りも重視

KDDI research atelierでは新たに、先進的なライフスタイルを実践している生活者を中心とした、多様なパートナーとの共創を推進する取り組みとして、「FUTURE GATEWAY(フューチャーゲートウェイ)」を2021年8月から始動している(図)。FUTURE GATEWAYでは、中長期的な社会・生活者の課題解決に繋がる新たな生活様式を、先端技術を用いて社会実装するプロジェクトを推進する。KDDI research atelierでは、例えば定住する家を持たずに移動しながら生活する「アドレスホッパー」といった、新しい生活様式を実践している人たちを「能動的に世界の制約や境界を越えていく人々」として「越境走者=t'runner(ランナー)」と呼んでいる。

「私たちはKDDI research atelierにおいて、新しい生活をされている方々やコミュニティ、そしてこのような取り組みに共感いただける企業の方々と連携し、新たなパートナーもここから開拓していきます。そうしたパートナーのみなさんから上がってくる意見をフィードバックしながら、2030年を目指した新たなライフスタイルを見極め、その取り組みを広く発信していきたいと考えています」(中村氏)。

(図)「FUTURE GATEWAY」における2030年のライフスタイル実現に向けたステップ(資料提供:KDDI総合研究所)
(図)「FUTURE GATEWAY」における2030年のライフスタイル実現に向けたステップ
(資料提供:KDDI総合研究所)

KDDI総合研究所が実現しようとしている「ライフコーチング」などで描かれる社会は、さまざまな属性を持った人が同じフィールドで活動するという、まさにユニバーサルで持続可能な社会の将来像といえるだろう。

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