中小製造業でのローカル5G活用促進に向けた取組み

2021年11月19日

国内製造業におけるローカル5G事例の多くは、大企業によるものだ。しかし、製造業のDX実現には、製造業の大多数を占める中小企業でのローカル5G活用が不可欠だ。東京都による助成金事業など、中小製造業を対象としたローカル5G活用支援の取組みや、価格を抑えたローカル5G機器やサービスについて紹介する。

製造業でのローカル5G活用は、大企業が中心

2019年12月に日本でローカル5Gの免許申請が開始されてから、ほぼ2年が過ぎた。当初は、ミリ波帯のみが対象だったが、2020年12月には、減衰が少なく広域まで電波が届きやすいSub6帯(6GHz未満の周波数帯)での利用が解禁され、利用者は拡大傾向にある。産業分野では、工場や建設現場での利用に期待がかかる。大容量、多数同時接続などの5Gの特長をいかした利用はもちろん、セキュリティの観点からローカル5Gの活用を検討する企業もあるという。大手企業を中心に、ローカル5Gの実証実験を行ったり、実際に導入したりする企業が増加しており、自社工場にローカル5Gを導入して検証を行うケースも出てきている。

製造業のDXに大きく貢献することが期待されるローカル5Gだが、国内の製造業の大多数が中小企業であることを考えれば、今後は中小製造業への普及が重要になる。しかし、ローカル5Gの免許取得や、実際の無線エリア構築には、専門知識や技術が必要であること、また、ローカル5G機器の費用など、導入に必要なコスト負担が足かせとなっているのが現状だ。

地方自治体による、中小製造業を対象としたローカル5G活用支援

こうした状況で、地方自治体が、中小製造業にローカル5Gを広く普及させるための取り組みを開始している。例えば東京都と東京都中小企業振興公社は、「5Gによる工場のスマート化モデル事業」を実施中だ。都内の中小製造業がローカル5G導入・活用することを支援する事業で、電波の干渉調整やローカル5G免許申請、設計、構築など、ローカル5Gの導入と運用に必要な経費の5分の4以内、3年間で最大1億2000万円を助成する。2021年3月にはヱビナ電化工業株式会社、大森クローム工業株式会社、そして武州工業株式会社の3社が採択され、ローカル5Gを活用し、高精細カメラとAI技術を活用した作業現場での遠隔管理やリモートによる人材育成などの取組みが始まっている。

ヱビナ電化工業株式会社(大田区)でのローカル5G活用イメージ イメージ
ヱビナ電化工業株式会社(大田区)でのローカル5G活用イメージ
(東京都中小企業振興公社 発表資料より引用)

東京都は、2020年6月に自治体としては初となるローカル5G免許を取得し、同年11月、都立産業技術研究センター内のDX推進センターに、ローカル5G基地局を設置した。5Gによる商品画像の通信・認識試験を想定した模擬店舗や、ロボットの制御試験などに利用する走行スペースを用意し、5G関連の新製品や新技術の開発に対する支援を行っている。

同様に、兵庫県は、2021年7月、県立工業技術センター(神戸市須磨区)にローカル5Gのデモ設備を設置した。ローカル5G通信の速度を体験できるほか、工場の生産工程の自動化設備を模した装置が用意されており、ローカル5G導入の有効性を実感できる。同センターでは、導入支援に向けた普及活動を積極的に行っており、ローカル5GとAIを活用した生産性向上の取組事例の紹介やデモの実施など、これまでに4回のセミナーが実施されている。

兵庫県立工業技術センター内の、スマート工場体験・デモ設備イメージ
兵庫県立工業技術センター内の、スマート工場体験・デモ設備イメージ
(兵庫県立工業技術センター 発表資料より引用)

価格を抑えたローカル5G機器も登場

技術面での支援に加えて、導入コストを下げる取組みも進む。2021年4月、ネットワーク機器ベンダーのAPRESIA Systemsは、数千万円で導入できるローカル5Gシステム「ApresiaAERO」の販売を開始した。大手ベンダーが提供するキャリア向け製品を利用した場合、ローカル5G環境の構築には億単位の費用がかかる。APRESIA Systemsでは、5Gコアを、オープンソースの「free5GC」をベースに自社開発したり、O-RAN準拠のOEM製品を採用することで、価格を抑えることに成功した。APRESIA Systemsのローカル5G機器は、ミライトの「ローカル5Gオールインワンパッケージ」にも採用されている。

また、富士通は、基地局やコアネットワーク、SIMなどの通信機能と、稼働状況の遠隔監視や障害発生時の一次対応などの管理機能をクラウドで提供し、高額な初期費用を抑えるサービスを開始した。「プライベートワイヤレスクラウドサービス」は、初期費用100万円、月額40万円から利用できるという。

中小製造業にとってローカル5Gを導入するためのハードルは高いが、導入に向けた支援環境は整いつつある。また、「ローカル5Gオールインワンパッケージ」のように、必要な手続きや作業を丸ごと提供してくれるソリューションも登場しており、中小製造業にとっても、ローカル5Gは少しずつ身近なものになりつつある。日本の製造業を支える中小製造業にとって、ローカル5Gが当たり前になる日が楽しみだ。

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