【令和6年度】ZEB(ゼブ)導入に活用できる9つの補助金

2024年9月9日

ZEB(ゼブ)とは、省エネや創エネを通じて、建物で消費する年間一次エネルギーの収支をゼロに近づけることを目指した非住宅建築物のことを指す。

企業が保有する事務所や工場、商業施設などのZEB化は、ほかの省エネ化した建物を導入する場合と比較してコストがかかるため、「補助金を利用したい」と考える担当者もいるだろう。

そこで本記事では、ZEB導入に活用できる9つの補助金を国と自治体別に紹介する。

はじめに:ZEBとは

ZEB(Net Zero Energy Building:ゼブ)とは、快適で働きやすい室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をできる限りゼロに近づけることを目指す「非住宅建築物」のことを指す。

ZEB化した建物では、エネルギーを極力必要としない「パッシブ技術」と、エネルギーを無駄なく上手に使う「アクティブ技術」が利用されている。

ZEBは、一次エネルギー消費量の削減率や再生可能エネルギーの導入率などの基準によって、以下の4つに分類される。

 ● ZEB(ゼブ)
 ● Nearly ZEB(ニアリーゼブ)
 ● ZEB Ready(ゼブレディ)
 ● ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)

各概要を以下の表にまとめたので、参考にしてほしい。

種類 イメージ 概要
ZEB
(ゼブ)
ZEB(ゼブ) イメージ 年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロまたはマイナスの建物
Nearly ZEB
(ニアリーゼブ)
Nearly ZEB(ニアリーゼブ) イメージ 再生可能エネルギーにより年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた、ZEBに限りなく近い建物
ZEB Ready
(ゼブレディ)
ZEB Ready(ゼブレディ) イメージ 外皮の高断熱化や高効率な省エネルギー設備がある、ZEBを見据えた先進的な建物
ZEB Oriented
(ゼブオリエンテッド)
ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド) イメージ
※WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術
外皮の高性能化や高効率な省エネルギー設備に加え、省エネルギーの実現に向けて措置を講じた、延べ面積が1万㎡以上の、ZEB Readyを見据えた建物

関連リンク
ZEB(ゼブ)とは?種類ごとの定義やメリット、注意点などをわかりやすく解説

【国が提供】ZEB導入に活用できる補助金

ここでは、環境省や経済産業省、国土交通省が提供している、ZEB導入に活用できる補助金を紹介する。

環境省|建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業

環境省は、2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度にはCO2を46%削減(2013年度比)という政府目標を早期に達成するために、建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業に取り組んでいる。

同事業内容は、建築物のZEB化と省CO2化の2種類に分かれる。ここでは、ZEB化に着目して、以下の補助金を紹介する。

 ● ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業
 ● LCCO2(ライフサイクルCO2)削減型の先導的な新築ZEB支援事業

ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業

ZEBの普及拡大に向けて、新築・既築を問わず、建築物のZEB化に貢献するシステムや設備機器等の導入を支援している。具体的には、本工事費、機械器具費などの工事費や設備費、業務費などの経費が対象となる。

補助対象は新築建築物と既存建築物の2種類があり、延べ面積によって補助率が異なる。各補助率は以下のとおり。

延べ面積 補助率(新築建築物) 補助率(既存建築物)
2,000㎡未満 ZEB 1/2
Nearly ZEB 1/3
ZEB Ready 対象外
ZEB 2/3
Nearly ZEB 2/3
ZEB Ready 対象外
2,000㎡〜10,000㎡ ZEB 1/2
Nearly ZEB 1/3
ZEB Ready 1/4
ZEB 2/3
Nearly ZEB 2/3
ZEB Ready 2/3
10,000㎡以上 ZEB 1/2
Nearly ZEB 1/3
ZEB Ready 1/4
ZEB Oriented 1/4
ZEB 2/3
Nearly ZEB 2/3
ZEB Ready 2/3
ZEB Oriented 2/3

▼ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業の概要

対象:新築または既築建築物のZEB普及促進支援事業
補助率:上記表
期限:2024年7月10日 ※最新情報は公式サイトをご確認ください
URL:新築/既存建築物のZEB普及促進支援事業|一般社団法人静岡県環境資源協会

LCCO2(ライフサイクルCO2)削減型の先導的な新築ZEB支援事業

建築物の運用時・建築時・廃棄物のライフサイクルにおいて発生するCO2を削減し、先導的な活動などに取り組む新築建築物について、ZEB化に貢献するシステム・設備機器の導入を支援している。ZEB Ready基準以上の省エネ性能や、エネルギー管理体制の構築、ZEBプランナーによる関与なども要件として求められる。

▼LCCO2(ライフサイクルCO2)削減型の先導的な新築ZEB支援事業の概要

対象:建築物の運用時・建築時・廃棄物のライフサイクルにおいて発生するCO2を削減し、先導的な活動などに取り組む新築建築物のZEB化に関する事業
上限額:5億円
補助率:ZEBは3/5、Nearly ZEBは1/2、ZEB Readyは1/3
期限:2024年9月18日
URL:LCCO2削減型の先導的な新築ZEB支援事業|一般社団法人静岡県環境資源協会

経済産業省|ZEB実証事業

経済産業省は、ZEBに必要な高性能建材・設備機器等の導入時に、その情報提供に同意する事業者に対し、費用の一部を補助する「ZEB実証事業」に取り組んでいる。交付要件として、ZEB関連の設計情報や完了後の実証状況などについて、情報を公表すると承諾する必要がある。

選択必須要件として、以下の15の技術のうち、1項目以上を導入しなければならない。

選択必須要件となる技術 概要
CO2濃度による外気量制御 CO2濃度センサーなどを使って外気導入量を適切に制御し、冷暖房時の外気負荷を低減する技術
自然換気システム 煙突効果や風圧などを利用し、自然通風を促して快適な室内環境を実現しながら、冷房負荷とファンの消費電力を低減する技術
空調ポンプ制御の高度化 冷却水ポンプや空調1次ポンプの変流量などを制御する技術
空調ファン制御の高度化 人感センサーによって空調や厨房ファンの風量を変えるなどの制御技術
冷却塔ファン・インバータ制御 冷却塔ファンの台数制限やインバータ制御によって、消費電力を抑える技術
照明のゾーニング制御 時間帯に応じて照度条件を緩和するなど、照明の消費電力を低減する技術
フリークーリング 冬期や中間期の外気と冷却塔の冷却水を利用し、さまざまな方式によって熱源エネルギーを低減する技術
デシカント空調システム 除湿ロータの再生熱源に再生可能エネルギーを利用し、吸着した水分を除湿することで、熱源エネルギーを低減する技術
クール・ヒートトレンチシステム 空調用の外気を地中に通過させて熱交換することで、冷暖房時の外気負荷を低減する技術
ハイブリッド給湯システム等 同じ給湯系統に、複数の燃焼系給湯機を接続し、モードに合わせて高効率運転するよう自動制御するシステムなどによって、給湯エネルギーを低減する技術
地中熱利用の高度化 地中熱利用の給湯ヒートポンプシステム、地中熱直接利用システムなどによって、空調・給湯エネルギーを低減する技術
コージェネレーション設備の高度化 吸収式冷凍機への蒸気利用、燃料電池、エネルギーの面的利用など、高効率で省エネに寄与する技術
自然採光システム ライトシェルフやトップライト、特殊ブラインドなどによって、昼光を利用し、照明の消費電力を低減する技術
超高効率変圧器 トップランナー基準の第一次判断基準よりも、エネルギー消費効率を20%以上低減する技術
熱回収ヒートポンプ さまざまな種類のヒートポンプで、冷水と温水を同時に作り、熱源機器の消費電力を低減する技術

▼ZEB実証事業の概要

対象:建築主等(所有者)、ESCO(シェアード・セービングス)事業者、リース事業者等
補助額上限:5億円/年
補助率:2/3以内
期限:2024年8月28日17:00
URL:令和6年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業補助事業|一般社団法人 環境共創イニシアチブ

国土交通省|サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)

国土交通省は、省エネ・省CO2に関する先導的な技術普及に貢献する住宅・建築物プロジェクトに対して、支援を行っている。事業の成果を公表することでサステナブル建築を広め、住宅・建築物の市場価値を高めることを目的としている。

以下3つの募集部門があり、1と2に関しては、ZEB水準の省エネ性能を満たすものであることが、要件の一つとなっている。

 1.一般部門(建築物・共同住宅・戸建住宅)
 2.中小規模建築物部門(非住宅)
 3.LCCM低層共同住宅部門

▼サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)の概要

対象:上記3つのいずれかの部門における事業要件を満たす建築物プロジェクト
補助額:1と2の部門は3億円、3の部門は1億円
補助率:1/2
期限:2024年7月3日 ※最新情報は公式サイトをご確認ください
URL:サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)|国立研究開発法人 建築研究所

【自治体が提供】ZEB導入に活用できる補助金

続いて、自治体が提供する、ZEB導入に活用できる補助金を見てみよう。

千葉県|業務用建物脱炭素化設計支援事業補助金(ZEB・ZEH-M設計補助金)

千葉県は、脱炭素化社会を実現するために、県内で県内事業者等が行うZEBなどの導入検討にかかる設計費用の一部を支援している。県内におけるZEB化した建築物の新築・改築だけでなく、建物の省エネ性能を表示するBELSの取得も要件となる。

▼業務用建物脱炭素化設計支援事業補助金(ZEB・ZEH-M設計補助金)の概要

対象:県内で建築物を新築・改築する際にZEBのBELSを取得し、上乗せ設計費を負担していること
補助額:延床面積が300㎡以上2,000㎡未満は100万円、2,000㎡以上5,000㎡未満は150万円、5,000㎡以上は200万円
期限:2025年2月28日
URL:業務用建物脱炭素化設計支援事業補助金(ZEB・ZEH-M設計補助金)|千葉県

福岡市|脱炭素建築物誘導支援事業(ZEB、ZEH-M設計補助)

福岡市は、市内における建築物の脱炭素化を推進するために、ZEBの建設にかかる設計費の定額補助を実施している。市内に延床面積300㎡以上のZEBを建設する建築主等が、上乗せ設計費を市内の建築士事務所等に支払うことが、対象事業者の要件の一つとなる。

▼脱炭素建築物誘導支援事業(ZEB、ZEH-M設計補助)の概要

対象:法人または個人で、福岡市税の徴収金に滞納がなく、暴力団員ではないこと
補助額:延床面積が300㎡以上2,000㎡未満は150万円、2,000㎡以上は300万円
期限:2025年1月31日
URL:脱炭素建築物誘導支援事業(ZEB、ZEH-M設計補助)|福岡市

静岡県|建築物ZEB化設計促進事業費補助金

静岡県は、建築物の省エネ化を実現するため、ZEB導入検討費用(上乗せ設計費)を補助している。ZEB、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedのいずれかの評価基準を満たし、BELSを取得することが要件の一つとなる。

▼建築物ZEB化設計促進事業費補助金の概要

対象:県内に事業所または営業所を有する法人、団体、個人事業主で、県内に事務所を置く建築士事務所等に設計を依頼することなど
補助額:床面積が300㎡以上2,000㎡未満は125万円、2,000㎡以上は230万円
補助率:1/2
期限:2025年1月31日
URL:建築物ZEB化設計促進事業費補助金|静岡県

群馬県|ZEB推進モデル事業

群馬県は、ZEB推進モデル事業を通じて、県産木材を構造材として使用したZEBの普及拡大につながるモデル建築物に支援を行っている。温室効果ガス排出量ゼロなどを目指す「ぐんま5つのゼロ宣言」の実現や、林業・木材産業の自立化と成長産業化を目的としている。

▼ZEB推進モデル事業の概要

対象:民間の個人または法人で、県税などを滞納しておらず、物件の管理権限を有していること
補助率:1/2
期限:2024年4月1日から先着順(予算額に到達次第、終了)
URL:ZEB推進モデル事業|群馬県

札幌市|ゼロエネルギー・ビル(ZEB)・ゼロエネルギー・マンション(ZEH-M)設計支援補助金

札幌市は、市内の温室効果ガス排出量削減に向けて、ZEBの建設に必要な設計費の上乗せ相当分を補助している。補助金を受領する場合、対象建築物のエネルギー使用状況などに関するアンケート調査に協力し、建築物の情報をホームページなどで公表することが求められる。

▼ゼロエネルギー・ビル(ZEB)・ゼロエネルギー・マンション(ZEH-M)設計支援補助金の概要

対象:市内に延床面積300㎡以上のZEB新築等を行う建築主等で、上乗せ設計費を札幌市内の建築士事務所等に支払う、市税を滞納しておらず、暴力団関係事業者ではない法人または個人
補助額:延床面積300㎡以上2,000㎡未満は150万円、延床面積2,000㎡以上は300万円
期限:2025年1月31日
URL:ゼロエネルギー・ビル(ZEB)・ゼロエネルギー・マンション(ZEH-M)設計支援補助金|札幌市

ZEB補助金を申請する際の注意点

ZEB補助金を申請する際の注意点 イメージ

ここでは、ZEB補助金を申請する際の注意点を解説する。

申請書類が多くスケジュール管理に注意が必要

ZEB補助金の申請には多くの書類が必要で、スケジュール管理に注意しなければならない。

実施計画書や設計図なども用意しなければならず、作成に手間がかかるため、業務が煩雑になり進行が混乱してしまう恐れがある。書類を作成したり集めたりしているうちに、期限切れにならないよう、徹底的なスケジュール管理が重要となる。

省エネ率の計算が難しい

ZEB補助金を申請する際に省エネ率を計算する必要があるが、専門知識が求められ社内で対応し切れない可能性がある。具体的に、建築図面や設備図面から省エネ設備のエネルギー消費性能を計算する必要があり、労力がかかってしまうだろう。

そこで、書類申請をサポートしてもらえるサービスの利用や、ZEBプランナーへ相談するのも一つの方法だといえる。株式会社ミライト・ワンは、相談窓口を有し、ZEB導入のコンサルティングから設計・建設などを行う企業として、ZEBプランナー認証を取得している。ZEBの実現に向けて、補助金申請もサポートしているため、気軽に相談してほしい。

ZEB・スマートビルソリューション

関連リンク
2023年4月27日 ZEB(ゼブ) Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の プランナー認証取得

まとめ

脱炭素社会の実現に向けて、環境にやさしいZEB化した建築物を普及させるために、国や自治体はさまざまな補助金を提供している。社内でZEBプロジェクトの実施を検討する際は、本記事を参考に、補助金の利用を検討してみてほしい。

株式会社ミライト・ワンは、ZEBプランナー認証を取得し、建物の環境やお客様のニーズに合わせて最適な方法を提案し、ZEB補助金申請もサポートしている。ZEBに関するソリューションの詳しい内容は以下のサイトで紹介しているので、参考にしてほしい。

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