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5Gとエッジコンピューティングで、品質管理や画像処理の効率化を実現するスマートファクトリー
今、製造業の現場では、新型コロナウイルス感染症への対策や、慢性的な課題となっている人材不足への対応から、業務を効率化し生産性を高めるスマートファクトリーへの移行が急務となっている。クラウドを活用するスマートファクトリーでは、データ量とネット接続機器が飛躍的に増加するため、高速大容量通信を可能にする5Gと、データを分散処理するエッジコンピューティングの導入に期待がかかっている。
製造業での5Gの活用に求められるエッジコンピューティングのメリット
超高速で大容量のデータ転送が可能な5Gは、低遅延で信頼性の高いデータのやり取りが行え、膨大な数のIoTデバイスなども同時に接続できる。まさに、スマートファクトリーを実現するには必須のネットワークインフラだ。
一方で、膨大な数のIoTデバイスのデータをクラウドで処理するならば、エッジコンピューティングの活用が必要になってくる。エッジコンピューティングはクラウドに処理が集中しないように、データの発生源に近いエッジにそれぞれ情報処理端末を設置し、エッジごとの情報処理を自律分散的に行う仕組みだ。
製造業のような現場での情報処理では、クラウドに処理が集中してリアルタイム性や同期性が損なわれると、致命的となるケースがある。また、IoTデバイスから送られる情報を、すべてクラウドで処理するのは負担が大きいため、エッジ側で必要な情報だけを選別したり、情報を加工してクラウドに送るようにする。そのようにエッジコンピューティングを活用すれば、スマートファクトリーにおいても無駄な通信コストやストレージ増設のコストなどが抑えられる。セキュリティ面からも、万が一、外に漏れても大丈夫なデータをエッジ側で選択したり加工できるので安心して利用できる。
工場内のデータを集約してセンターに送りコスト削減
例えば、ある海外のタイヤ工場では品質検証のプロセスを工場から独立させ、複数の工場の品質検査を本部のデータセンターで一括して実施している。これによって、複数の工場での品質検証に関わるコストが削減される。
実際に工場側では、生産ラインで1つ1つのタイヤを撮影して画像データを蓄積し、バッチ処理で本部のデータセンターに送信する。それらのデータをもとに、本部のシステムで画像分析を行って品質を検証し、工場側にフィードバックしながら次の工程に進めている。従来ならば、こうしたプロセスの実現には、「リアルタイムに品質を検証できない」「大容量の写真データを送信するためコストがかかる」「生産にかかわる機密データを工場外に送信するため、セキュリティやコンプライアンスの担保に手間とコストがかかる」といった課題が生じていた。
エッジコンピューティングを活用することで、工場側で画像処理を行って必要最小限のデータのみを本部に送るようにする。工場内のデータ通信はローカル5Gで行われるので、生産体制に応じてフレキシブルにレイアウト変更を行っても、リアルタイムな品質検証がどこからでも可能になる。
エッジコンピューティングで高精細の画像データを処理
クラウドを活用しなくても、エッジコンピューティングで完結できるプロセスもある。富士通はネットワーク機器の製造拠点である小山工場において、高精細映像やセンサーデータなどの膨大な大容量データをエッジコンピューティングで活用し、ローカル5Gでデータをやりとりして効率的な技術伝承や作業の高精度化、自動化を目指している。
富士通の小山工場においてエッジコンピューティングを支えるローカル5G
(富士通のホームページより引用)
小山工場では、エッジコンピューティングに「作業トレーニングや遠隔支援」「AI映像解析による作業判定」「AGVの自動走行」といった3つ役割を担わせている。例えば、「作業トレーニングや遠隔支援」では、まずエッジコンピューティングを活用して、製品の3Dモデルを作成する。作業者はMR(複合現実)デバイスに送られた3Dモデルの映像と作業指示をもとに作業を進め、その様子を遠隔で熟練者や開発者が確認しながら指導・支援を行う。
MRデバイスを装着してトレーニングする様子
(富士通のホームページより引用)
「AI映像解析による作業判定」では、製造工程を把握し作業者への指示を行うMES(Manufacturing Execution System)とエッジコンピューティングを連携させる。そして、複数の高精細カメラで撮影した組立作業の映像から、AIが作業者の手や部品などを認識し、手順に基づいて作業できているかを判定する。その判定結果を、ディスプレイや音声を通して作業者へリアルタイムにフィードバックすることで、正しい作業を支援し、検査の省力化や品質の向上を図る。
AI映像解析による組立作業の判定画面
(富士通のホームページより引用)
「AGVの自動走行」では、工場内外およびAGV(無人搬送車)に搭載した高精細カメラの映像を低遅延でエッジコンピューティングに伝送し、AI解析することで3次元での高精度なAGVの位置認識と走行制御を行う。これにより、建屋内、建屋間の運搬作業や部品・製品などの積み下ろしを自動化し、運搬コストを削減する。
こうしたエッジコンピューティングの活用を、5Gの高速、大容量、低遅延の通信が支えることが、スマートファクトリーの実現に繋がっていく。
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