3Kから新3Kへ。5Gで建設現場の環境を改善し、業界の魅力をアップ

2021年9月17日

トンネル工事や、災害復興現場など、リスクの高い工事現場では、より徹底した安全対策が不可欠だ。このような現場で、5Gを活用することでリアルタイムにリスクを検知したり、建設機械を遠隔操作することで安全に工事を行う取組みが始まっている。人出不足が深刻化する建設業界において、5Gには、業界の魅力を高めるためのツールとしての期待もかかる。工事現場での5G活用の現状を探ってみよう。

5Gでトンネル工事のリスクを低減

山が多く、起伏に富む日本には、トンネルが多い。また、都心部では地下空間が混雑してきていることから、トンネルはますます深くなっている。東京外郭環状道路(外環道)や、東京・品川と名古屋との間で開業を目指すリニア中央新幹線では、その一部で、「大深度地下」と呼ばれる、地上40メートル以上の深さでのトンネル工事が行われる。こうしたトンネル工事には、落盤や土砂崩れ、酸欠、火災などの重大な事故のリスクがあり、安全対策が欠かせない。こうした工事現場で、センサーなどのIoT機器と5Gを活用し、安全管理を強化する取組みが生まれている。

5Gでトンネル工事のリスクを低減 イメージ

2019年11月、大成建設は、北海道新幹線のトンネル工事現場で、5Gを活用して安全な工事環境を構築する実証実験を行った。ソフトバンクが開発した可搬型5G設備、「おでかけ5G」を工事現場に設置し、センサーやウェアラブルデバイスを用いて、危険性の高い毒性ガスや可燃性ガス、温度や二酸化炭素などのデータを収集した。トンネル工事現場の環境を、遅延なくモニタリングするとともに、万が一、危険な値が検出された時には、トンネル内の作業員に通知を送り、手遅れになる前に避難誘導を行う仕組みだ。

5GとAIの組み合わせで、危険エリアを監視

遠隔からのモニタリングにとどまらず、5GとAIを活用した安全管理の実現に向けた取組もある。竹中工務店は、2021年2月より、NTT西日本などと、AIカメラを用いた危険エリアの侵入検知の検証を行っている。工事現場の危険エリアをAIに記憶させ、作業者がそのエリアに侵入すると警告を出す。通信にローカル5Gを用いることで、遅延なく警告を送り、事故を予防する狙いがある。

5GとAIの組み合わせは、鉄道インフラのリアルタイム監視にも活用できる。京浜急行電鉄は、4Kカメラで鉄道車両を撮影し、走行中の車両の台車にひび割れが発生していないかを解析する技術の検証を行っている。5Gでクラウド上に高速伝送し、AIで素早く解析を行う仕組みだ。災害時には、ドローンに搭載した4Kカメラで線路上を撮影し、倒木などの障害物がないかを確認できる。5Gを活用すれば、飛行中のドローンからでもリアルタイムに大容量データを伝送できるため、緊急事態であっても迅速な対応が可能になる。東急電鉄も、ローカル5Gと4Kカメラ、AIを活用した線路の異常検知および運転技術の高度化に関する実証実験を、今年12月から行うことを発表している。

5GとAIの組み合わせで、危険エリアを監視 イメージ

危険地帯の工事はロボット

また、災害が発生した後の復興工事の現場など、二次災害のリスクが高い現場においては、建設機械を遠隔操作することで、安全に工事を行う手法が普及しつつある。こうした無人化施工技術は、雲仙・普賢岳における火山災害の復興工事を機に大きく進歩しており、2016年の熊本地震後の大規模崩壊斜面対策においても無人化施工が活用された。5Gを活用することにより、高解像度の映像や音、振動などの操作感覚をオペレーターと共有することによる施工効率の向上や、災害現場から遠く離れた場所からの操作による安全な施工の実現が期待できる。

危険地帯の工事はロボット イメージ

大林組などが施工を行う三重県の川上ダムの建設現場では、3台の建設機械に設置されたカメラからの映像を、現場から500メートルほど離れた場所にある遠隔施工管理室に伝送し、それをオペレーターが遠隔操作する実証実験が行われた。大林組がKDDI、NECと実施した同実験では、遠隔操作される建設機械3台に加え、振動ローラーを自動運転で動かし、約40メートルの区間の道路造成工事に成功している。

5Gで3Kから脱却、魅力ある工事現場を実現

建設業界では、人手不足が深刻化している。「キツい、汚い、危険」の3Kと言われてきた労働環境が敬遠され、若年者の入職も少ない。国土交通省は、ICTを全面的に活用することで建設生産システムの生産性向上を図る取組、「i-Construction」を進め、「給与、休暇、希望」の新3Kを掲げる。「i-Construction」の実現には、建設工事の安全性や効率性を高める5Gは欠かせない。建設業界が、3Kから新3Kへと生まれ変われるかは、5Gの活用がその鍵を握っている。

5Gで3Kから脱却、魅力ある工事現場を実現 イメージ
図 i-Constructionによる生産性向上イメージ
(出典 国土交通省資料)

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