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週休2日も可能? AIによる水と肥料の制御で農家の働き方が変わる

2022年6月17日

野菜や果物をおいしく育てるには、栽培の際にできるだけストレスを与えないことだ。野菜だってストレスがあると不健康に育ってしまう。ストレスを与えない栽培に必要なのが、「適切な潅水制御」すなわち「水やり」だ。どんな植物でも成長するには水が必須なのだが、その加減が難しい。従来、農家では農作物に与える水の分量を、その都度人がコントロールしてきたが、今はIoTセンサーで取得したデータをAIが分析し、「ちょうどいい水の分量」を導き出すシステムを利用する手もあるようだ。

おいしい野菜を育てるにはストレスフリーで

本来、農家がビニールハウスで野菜や果物などの農作物を栽培する際には、手動でバルブを開け閉めしながら水の量を調整していた。だが、その方法では微妙な水加減の調整が難しく、すべての農作物に同じ量の水が供給されてしまう。これが農作物にとっては大きなストレスとなり、品質のバラツキが生まれる原因の1つにも なっていた。

一方、日本の農家はほとんどが家族経営で、限られた人材でいかに収益を上げていくかを考えなければならない状況だ。さらに、高齢化によって農業従事者が減ると、近辺の農家が農地を引き継ぐことも多く、農家が見なければならない農地の面積が拡大する傾向にもある。こうした背景から、農家の負担は年々増えていき、農作業の効率化に迫られている。

人材不足や農地増による課題を抱えながらも、農作物の品質を落とさないためには、もはや自動化に頼るしかない。すでに農家ではさまざまな新技術を導入し、省力化を進めながらも、品質の高い栽培を実現するソリューションを採用するようになってきた。その1つが、ビニールハウス栽培における水やりを自動化する「潅水制御システム」で、ルートレック・ネットワークスが開発した「ゼロアグリ」はIoTセンサーやクラウド、AI技術を活用して農作物に自動的に水やりを行う。

AIが野菜にストレスを与えない水分量を計算

農家ではすでに、さまざまな潅水制御システムが導入されている。それらのシステムには、毎日決まった時間に水やりを行う「タイマー式制御」や、天候に応じて水の量を自動調整する「日射式制御」などがある。こうしたシステムは、あらかじめ設定された条件を満たした場合に機械が自動的に水やりを行うだけで、水やりのタイミングや量の検討、数値などの決定、修正は人が行ってきた。これでは、農作物の成長に合わせたきめ細かい対応が難しく、そもそも水やりのタイミングや量などを設定するにも、ある程度の経験が必要になる。

これに対して「ゼロアグリ」は、農作物が1日に要求する水の量をAIが計算し、多量摂取でストレスを与えることのない水やりを実現する。その仕組みは、土壌に埋められたセンサーが感知した水分量が10分ごとにクラウドに送信され、AI がそれまでに蓄積されたデータと日射予報を基に、農作物の成長に合わせた最適な水分量を計算して水を供給する。これによって、農作物には必要最低限の水しか送られないため、ストレスが減って健康的に育ち、おいしさが増すわけだ。

「ゼロアグリ」は水だけでなく、農作物に与える肥料の濃度も設定可能だ。さらに、土壌の状態やシステムの稼働状況をパソコンやスマホでいつでも確認でき、水や肥料の量の調整も遠隔から行える。そのため、農業であっても時間や場所に捕らわれない柔軟な働き方が可能になる。

(図1)IoTセンサーとクラウド、AI技術を活用して水やりと肥料制御を行う「ゼロアグリ」(出典:ルートレック・ネットワークスのホームページより) イメージ
(図1)IoTセンサーとクラウド、AI技術を活用して水やりと肥料制御を行う「ゼロアグリ」
(出典:ルートレック・ネットワークスのホームページより)

脱サラした農家でも経験を必要としない水やりの制御が可能に

AIによって制御された効率的な水やりと肥料制御は、資源の節約にも繋がる。「ゼロアグリ」が可能にする節水と肥料の節約は、環境問題への対応にも貢献し、まさにSDGsを見据えた農業の実現に寄与するだろう。

「ゼロアグリ」の導入事例は、すでに全国の農園に広がっている。例えば、熊本県八代市の農家で行われた実証では、もともと栽培成績が良好な生産者に「ゼロアグリ」を使ってトマトを栽培してもらったところ、糖酸度を維持したまま従来と比べて収穫量が17~24%増えたという。

(図2)熊本県八代市の農家で実証されたトマトの収穫量比較「ゼロアグリ」(出典:ルートレック・ネットワークスのホームページより) イメージ
(図2)熊本県八代市の農家で実証されたトマトの収穫量比較 (出典:ルートレック・ネットワークスのホームページより)

その他の事例をみても、代々続く農家ではなく脱サラによって就農した農家での導入実績も多い。データの蓄積によって証明された技術であれば勘や経験も必要としないので、新規参入した農家でも導入しやすいだろう。

コロナ禍によって、さまざまな面からライフスタイルや働き方が見直されている中、週休2日も可能にするシステムを導入することで新規参入のハードルが下がり、多くの人が農業に関心を持つことにも期待できそうだ。

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