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ジャパネットが進めるICTを活用した
長崎スタジアムシティとは

2023年7月10日

ジャパネットホールディングスは、長崎市の三菱重工業幸町工場跡地を活用し、2万人収容のサッカースタジアムを中心にした「長崎スタジアムシティ」を建設中だ。同シティでは、サッカースタジアム以外にも、6,000人収容のアリーナ、243室のホテル、約90店舗が入る商業施設、11階建てのオフィス、駐車場(約1100台)などを備え、2024年9月の開業を目指している。

「長崎スタジアムシティ」完成予想図(出典:ジャパネットホールディングス) イメージ
「長崎スタジアムシティ」完成予想図
(出典:ジャパネットホールディングス)

完成後、サッカースタジアムは日本プロサッカーリーグ J2のV・ファーレン長崎の、アリーナはバスケットボールBリーグ「長崎ヴェルカ」の本拠地になる予定だ。

V・ファーレン長崎は、2017年にジャパネットホールディングスの子会社となり、長崎ヴェルカは、アリーナ建設が決まってから、本拠地として利用するチームとして、同社が2020年に設立している。

ジャパネットホールディングスは、「長崎スタジアムシティ」を地方創生プロジェクトと位置づけており、同社が地方創生に取り組む背景について、代表取締役社長 兼 CEOの髙田旭人氏は昨年12月のソフトバンクとの会見において、「ジャパネットは、通販事業を主体としているが、2017年にV・ファーレン長崎がグループに加わることを皮切りに、地域創生、スポーツを絡めた事業をどんどんやっていこうという方向に進めている。ジャパネットは、通販事業を通して世の中のいいものを見つけ、磨き、伝えるという事業をやってきた。ビジネスでやる以上、日本の社会課題に向き合わないといけないと考えており、スポーツを通して地域創生をしていく。長崎の魅力を見つけ、磨き、伝える。それがわれわれのできることではないかと思い、このプロジェクトをスタートした。長崎は、人口転出超過がここ数年、全国の1位あるいは2位になっている。地域創生は行政の課題だと思われがちだが、民間として本気で向き合ってみようということで、この取り組みを始めている。われわれが何かをつくりあげるのではなく、もともとある長崎の強みを生かしていきたいと思っている」と述べた。

昨年12月のジャパネットホールディングスとソフトバンクのICT連携での記者会見におけるジャパネットホールディングス 代表取締役社長 兼 CEOの髙田旭人氏(左)とソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏(右) イメージ
昨年12月のジャパネットホールディングスとソフトバンクのICT連携での記者会見におけるジャパネットホールディングス 代表取締役社長 兼 CEOの髙田旭人氏(左)とソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏(右)

EYストラテジー・アンド・コンサルティングが算出したところによると、「長崎スタジアムシティ」の経済効果は、建設時が約1,436億円、開業後は13,000人の雇用により、963億円と推計している。また、スタジアムシティの年間利用者数は850万人(目標)を想定している。

ジャパネットホールディングスはこのプロジェクトに800~900億円の投資を行っていく予定だが、完成後は収益を出すことを目指している。

高田社長は会見で、「しっかりと収益を出しながら、持続可能なものとして行い、成功したときに、日本全国の民間企業がやってみようと考え、地域が盛り上がっていくことを目指している」と語っている。

同社は収益化に向け、さまざまな取り組みを計画している。サッカースタジアムは、40室あるVIPルームをホテルとして利用することを考えており、取材ルームは託児所として使う計画だ。

サッカースタジアム(出典:ジャパネットホールディングス) イメージ
サッカースタジアム
(出典:ジャパネットホールディングス)

アリーナも試合がない日はコンサート会場として利用し、同社は1年のうち半分程度の日にコンサートを開催することを目標にしている。アリーナは最大6,000人が収容可能だが、1,000人、3,000人、5,000人といった具合に、コンサート規模に応じた会場設定が可能だ。また、アリーナのVIPルームをオフィス向け会議室として利用してもらうことも考えている。

アリーナ(出典:ジャパネットホールディングス) イメージ
アリーナ
(出典:ジャパネットホールディングス)

オフィス棟には、長崎大学大学院が入る予定で、そのほか、シェアオフィスも提供する。高田社長は、「地方創生に向け、半分程度を東京の企業を誘致したい」と語る。

また、高田社長はスタジアムやアリーナは長期滞在がキーだとし、スタジアムのブロンズスイートと呼ばれる部屋では、試合の2時間前からビュッフェ形式で食事や飲み物を提供し、アリーナはテレビスタジオを設け、スポーツ番組を配信する。

サッカースタジアムのブロンズスイート(出典:ジャパネットホールディングス) イメージ
サッカースタジアムのブロンズスイート
(出典:ジャパネットホールディングス)

ICTを活用し、運用を効率化

そして、同スタジアムシティが、業務効率化のため、力を入れているのがICTの活用だ。そのため、ジャパネットホールディングスは昨年の12月、ソフトバンクとICT領域で連携することを発表した。

ソフトバンクが、スタジアムシティ内の5G(第5世代移動通信システム)ネットワーク、WAN、LANおよびWi-Fi環境を整備し、スタジアムシティ内の通信ネットワークを構築する。これにより、専用スマートフォンアプリを活用した参加型の応援やグルメ・フードのオーダー&ピックアップ、駐車場やコインロッカーの空き状況の案内などの仕組みを支える。

具体的には、スマホアプリによりサッカーやバスケットボールチームへの応援メッセージの投稿やMVP投票、スマホによる注文で食べ物を並ばずにコインロッカーを経由で受け取るしくみも導入する。スマホは、ホテルのキーとしての利用、決済、マップ表示、駐車場予約、混雑状況の確認もでき、シティ内は完全キャッシュレスで利用できる。

「これらは、ネットワークがないとできない。ソフトバンクさんと組むからこそ実現できる」(高田社長)

スタジアムへの入場もQRコードでもできるが、年間パスポートのユーザーには、ユニフォームに埋め込んだチップによる認証もできる。

ユニフォームに埋め込まれたチップを入場券代わりに利用(出典:ジャパネットホールディングス) イメージ
ユニフォームに埋め込まれたチップを入場券代わりに利用
(出典:ジャパネットホールディングス)

将来的には、スタジアムを中心とした各施設がデータを連携させ、AI(人工知能)を活用してエリア全体の人流を最適化したり、相互送客で消費行動の活性化につなげる「Autonomous Stadium」の実現を目指す。また、スタジアムの年間シート購入者などへの特典として専用のSSIDを用意し、快適なWi-Fi環境を利用できる仕組みを構築する。

さらに、スタジアムシティ内に設置したセンサーなどから収集した人流データを、ソフトバンクのスマートシティプラットフォームで分析して、混雑状況などの情報をサイネージや専用アプリで表示する。

人流データは、スタジアムシティ内の誘導・警備・清掃スタッフの最適な配置を検討することに活用され、トイレやごみ箱にIoTセンサーを設置することでトイレごとの利用回数やごみの量を可視化して最適な清掃頻度を検討する。

「運用コストもIT導入で相当減らせる。そのため、われわれが建設だけでなく、運用まで行うことに意味がある」(高田社長)
これらは、ソフトバンクが東京竹芝本社ビルエリアで実証してきた結果を踏まえ、提供される。

ソフトバンクが提供するスマートシティプラットフォーム(出典:ソフトバンク) イメージ
ソフトバンクが提供するスマートシティプラットフォーム
(出典:ソフトバンク)

ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏は、ジャパネットホールディングスとのICT領域で連携の会見において、「長崎モデルが全国に広がることを夢見ている」と述べた。

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