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離島のエネルギー供給を再生可能エネルギーのマイクログリッドで実現

2024年2月26日

太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは、自然界のどこにでも存在している。したがって、海外からの輸入に頼る化石エネルギーとは異なり、日本でも国内で生産できる。とはいえ、再生可能エネルギーの導入で出遅れた日本は、今後どのように2050年を目標としたカーボンニュートラルを実現すればいいのか。すでに本格的に再生可能エネルギーの活用に取り組んでいる海外の導入事例が、そのヒントになるかもしれない。

世界の再生可能エネルギー導入状況

国際エネルギー機関(IEA)の分析によれば、2020年度の日本の再生可能エネルギー導入量は世界第6位となっている。1位は中国で、以降アメリカ、ブラジル、インド、ドイツが続いているが、これは国全体で再生可能エネルギーによる発電電力量が多い順に並べられているだけなので、当然人口が多い国が上位にきている。一方、国全体の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を見てみると、もっとも高い国はカナダで67.9%となっており、それ以外はドイツ、イギリス、スペイン、イタリアがそれぞれ40%台と高く、日本は20%に満たない。

2020年度の世界の再生可能エネルギー導入容量 イメージ
2020年度の世界の再生可能エネルギー導入容量
再生可能エネルギー発電費率(出典:資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案」より抜粋) イメージ
再生可能エネルギー発電費率
(出典:資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案」より抜粋)

カナダの高い再生可能エネルギー導入率をけん引しているのが、水力発電だ。そして、国全体での再生可能エネルギー発電電力量が多く、再生可能エネルギー発電費率も高いドイツは、脱原発を実現させながら石炭・褐炭火力を廃止して、再生可能エネルギーに大きくシフトしている。ドイツでは再生可能エネルギー開発を推進するため、2000年に「再生可能エネルギー開発促進法」を制定し、再生可能エネルギーを20年間同一価格で買い取ることを保証する、「固定価格買取制度」 (FIT:Feed in Tariff)を導入した。その結果、特に陸上風力発電開発の進展が目覚しく、電気事業連合会の調査によると、設備容量は1990~2016年の間に約800倍に増大し、2016年末には4,541万kWの規模に達しているという。

東南アジア地域でも再生可能エネルギーの導入が進展

2010年以降、人口が13%増加し国内総生産が55%増加した東南アジア地域では、エネルギー消費量も26%増加しているが、その発電量増加分のほとんどを石炭火力に頼っていた。そうした電力消費を、地球温暖化につながる化石燃料に頼らないために、東南アジアでも2010年から2022年の間に、再生可能エネルギーを積極的に導入するようになり、累積設備容量は33GWから102GWへと3倍以上に増加した。

この成長の80%以上は、水力発電と太陽光発電が占めている。その結果、この地域の再生可能エネルギーの累積設備容量は、石炭火力の累積設備容量100GWに対して102GWと、再生可能エネルギーが石炭火力を上回るようになっている。特に、東南アジアは、最も急成長している太陽エネルギー市場の1つであり、太陽エネルギー産業の世界的拡大においても、最も有望な地域の1つになりつつあるという。

東南アジアの自然エネルギー累積設備容量(出典:自然エネルギー財団「自然エネルギーが 東南アジアの未来を拓く」より抜粋) イメージ
東南アジアの自然エネルギー累積設備容量
(出典:自然エネルギー財団「自然エネルギーが 東南アジアの未来を拓く」より抜粋)

ゴミの埋め立て地をマイクログリッドの国際実証試験場として活用するシンガポール

こうした動向を示す東南アジア地域でも特に注目を集めているのが、シンガポールの取り組みだ。シンガポール政府は、従来からゴミの埋め立て地として使われてきたセマカウ島をオフグリッド型マイクログリッドの国際実証試験場にする実証プロジェクト「REIDS(Renewable Energy Integration Demonstrator Singapore)」を立ち上げ、各国からプロジェクトに参加する企業を呼び込んでいる。分散型電源による地域社会基盤である「マイクログリッド」は小さな送配電網であり、自立分散型の電源と電力の消費者(需要家)をつなぐ比較的小規模なエネルギーネットワークだ。

もともと、セマカウ島はシンガポールの電力系統から切り離された離島で、それまではディーゼル発電によって電力が賄われてきた。こうした島々では、石油などの燃料コストが重荷になっている。太陽光発電や風力発電をベースとする再生可能エネルギー・マイクログリッドが構築されれば、燃料コストを島外に払い続ける状況から脱却し、世界中に散らばっている離島地域の発展を促すことにも結びつく。

複数の企業で構成された低電圧マイクログリッド・クラスター(LVMGC)のプロジェクトでは、マルチマイクログリッド・ネットワークの相互運用性研究や配電システムのサイバーセキュリティ、異なるマイクログリッド間のエネルギー取引、電力網ダイナミクスの評価、分散型エネルギー資源管理システム、配電ネットワークの回復力と信頼性といった分野において研究が進められている。

プロジェクトの1つ、「SPORE(Sustainable Powering of Off-Grid Regions)」は、南洋理工大学(NTU)のREIDS構想のもと、2020年に運営を開始。東南アジア最大規模となる複合型の再生可能エネルギー・マイクログリッドであり、太陽光発電設備、風力発電設備、蓄電システムを備える。設備容量はトータルで1MWとなり、太陽光発電や風力発電由来の電力を水素に変えて貯蔵し、燃料電池によって再び電力に変換する水素システムなどが導入されている。

現在、REIDSプロジェクトは毎日平均約200 kWhの電力をセマカウ島にあるNEA(国立環境庁)の施設に供給しており、NEAとバラマンディアジア(セマカウ埋立地の養殖場)のすべて電力需要を供給することを想定している。

REIDSの太陽光発電施設(出典:南洋理工大学のホームページより引用) イメージ
REIDSの太陽光発電施設
(出典:南洋理工大学のホームページより引用)

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