世界のスポーツテック最前線

2024年10月7日

日本におけるスポーツテック市場は、拡大傾向にある。しかし、海外においては、さらにスポーツテック市場は盛んだ。すでに、約133億3,000万米ドルの市場規模(2022年実績)に膨らんでおり、2023年から2030年の7年間で、約20%の成長率が期待されている。スポーツテックは「(スポーツを)する・見る・支える」という3つに分類されることが多いが、それぞれの海外事例について、紹介する。

スポーツをする:
大谷選手も使用したシンガポールのスポーツテック企業が提供している3Dトラッキングシステム「ラプソード」の事例

シンガポールに本社を構える、スポーツテック企業ラプソード社は、2011年に設立。アメリカ、トルコにも拠点を構え、世界中に約140 名の従業員を擁している。野球に加えてゴルフ、ソフトボールの3競技を対象に事業を展開している。当初は、ゴルフ好きのエンジニアが自らのスイング分析のために開発したという個人向けの低価格な計測機器で業績を伸ばした。その後、同社は、持ち運びが可能でリーズナブルな野球用の計測機器を開発し、それがヒット。そして、コンピュータービジョンと高度なレーダーにより、野球・ソフトボールの投球・打球の速度、回転数、軸の傾き、変化量などの投球・打球の傾向を、計測・分析する3Dトラッキングシステム「ラプソード」を開発・製造した。現在では、同社の製品は、米メジャーリーグ全30球団に加え、メジャーカレッジや、ベースボールアカデミーなどへ導入されている。日本でも日本プロ野球球団や、社会人野球、大学、高校、中学からアカデミー、スポーツジム、医療機関などへの導入も加速しているという。また、同社の公表資料によると、メジャーリーガーである大谷翔平選手もラプソードの「投打同時計測可能デバイス・PRO 3.0」を使用し、パフォーマンスの向上に役立ててきたという。「PRO 3.0」は3つのカメラと2つのレーダーを搭載しており、投球と打球の両方で高精度なデータを計測することが可能である。また、iPad用アプリ「Rapsodo Diamond」を通じてリアルタイムでデータを確認することができ、選手や指導者がデータをもとに分析を進めることができるというシステムである。

スポーツを見る:ARを利用したスポーツテックの活用事例

テクノロジーの急速な進歩、グラフィックスの進歩等により、スポーツ業界におけるAIやVR技術はより進展している。「スポーツを見る」という視点で最先端のAR技術を紹介する。

ARのゴルフ練習用アプリ「Golfshot」

ARを活用した「Golfshot」は、ゴルフコースでリアルタイムに情報を提供するアプリで、ARを使って距離計測、風速、傾斜情報などを確認しながらプレーできる。また、ショット履歴や統計情報をリアルタイムで表示し、戦略的なプレーをサポートする。

「Golfshot」(出典:Shotzoom) イメージ
「Golfshot」(出典:Shotzoom)

世界中のゴルフコースに対応しており、各ホールの距離情報を提供。プレイヤーはグリーンまでの距離や障害物までの距離を把握したり、航空写真や3Dマップを使って、各ホールの詳細なレイアウトを確認したりすることができる。これにより、プレイヤーは次のショットの戦略が立てやすくなり、各ショットの距離や方向を追跡し、それらのデータを分析してパフォーマンスを向上させるための情報を得ることができる。また、ラウンドごとの統計情報を保存し、長期的な成績の推移を確認することも可能だ。

ARを活用したサッカートレーニング

「Rezzil Player 22」は、ARを活用したサッカートレーニングのVRアプリである。さまざまなトレーニングモードが用意されており、リアクションタイムの向上やフィットネスを高めることができるのが特徴だ。ゴール前でボールを受けてターゲットにシュートを決めるチャレンジや、ヘディングの技術を向上させる練習が含まれ、精度やタイミングを実際のプレーに近い形でトレーニングすることができる。

「Rezzil Player 22」(出典:Rezzil) イメージ
「Rezzil Player 22」(出典:Rezzil)

アプリは追加のダウンロードコンテンツによって拡張可能で、これにより、新しいモードやカスタマイズオプションが追加される。

MLBでは観戦アプリにARを活用

スポーツ観戦にARを取り入れているスポーツもある。MLBのミネソタ・ツインズは、ARoundと提携し、ボールパークでのAR観戦を実現させた。これにより、ファンが球場でよりインタラクティブで没入感のある体験を楽しむことができる。

具体的には、ARを使用して試合のリアルタイムデータやスタッツ、選手の情報、ゲーム内のアクションを視覚的に表示する。また、AR機能を使ってファン同士がゲームを通じて交流できる機能も提供されている。

ミネソタ・ツインズのARound(出典:ARound) イメージ
ミネソタ・ツインズのARound(出典:ARound)

ミネソタ・ツインズの「ARound」と同様の拡張現実(AR)体験プラットフォームは、MLBのカンザスシティロイヤルズも導入している。

スポーツを支える:プロスポーツリーグやチームを支える技術の事例

プロスポーツリーグやチームを支えるという切り口で、世界的なリーダーと言えるのが日本のメーカーソニーである。ソニーでは2024年8月、米国のプロアメリカンフットボール(アメフト)リーグであるNational Football League(NFL)との協業を開始した。
同社の発表によると、ソニーがNFLの「公式テクノロジーパートナー」として次世代の審判判定支援技術を開発するほか、取得したデータを活用し、新たなファン層獲得のためのコンテンツ制作などに取り組んでいる。グループ傘下のホークアイイノベーションズ(英国)が提供しているカメラベースのトラッキング技術を活用し、試合の行方を大きく左右する攻撃側の「獲得(前進)距離」の計測精度を高めるという。また、2024年シーズン開幕前のプレシーズンから複数の試合でテストを実施している。全米に30あるスタジアムに、ホークアイのトラッキングシステムを順次導入するという。これにより、アメフトのように多くの選手がボールに集まり、カメラから死角ができる競技の可視化はこれまで技術的に難しいとされてきたが、これによって、選手の姿勢、ボール、審判の位置などフィールドで起こっていることをリアルタイムにトラッキングして、データ化することができるようになるという。

このように、スポーツを「する、見る、支える」といった3つの視点でのスポーツテック事例を紹介したが、今後も、こうしたテクノロジーが、アスリートの成長、活躍をささえることは間違いない。

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