知られざるeスポーツの世界

2021年7月30日

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年は、東京オリンピックを始め多くのスポーツイベントが中止や延期となった。そんな中でも、オンライン上で行うことができ、無観客でも成立する「eスポーツ」市場が急成長を続けている。世界の競技人口が1億人、視聴者が4億人を超える巨大産業となったeスポーツの世界を覗いてみよう。

プロ化が進み、業界は急成長

eスポーツ業界が急成長するきっかけとなったのが、1997年、アメリカで「サイバーアスリート・プロフェッショナル・リーグ」が設立されたことだった。それ以降、賞金制の大会が開催されるようになり、プロ化の流れが本格化し、業界の拡大が加速した。現在、世界のeスポーツ市場規模は10兆円を超えており、世界各地で大規模な大会が開催されている。

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2019年には、ニューヨークで開催された、オンラインゲーム「Fortnite」を使ったeスポーツ大会、Fortnite World Cupや、MOBA (※注1) ゲーム「Dota 2」を使った大会など、賞金総額3000万ドルを超えるイベントが開催され、大きな話題となった。2019年のFortnite World Cupで優勝した16歳のプレーヤーは、優勝賞金300万ドルを手にしたが、この金額は、2021年にゴルフのマスターズを制した松山選手が獲得した賞金額207万ドルを上回る。

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また、上海で開催された「Dota 2」の大会は、ゲーム内の課金アイテム"バトルパス"の売上の25%を大会賞金に加える形式を採用している。ゲームの人気拡大とともに賞金総額も拡大を続けており、2019年の賞金総額は3400万ドル超にのぼる。

eスポーツ振興に向け、世界各国の動きは活発化

上記の大規模大会の例にあるように、eスポーツ大国として中国と米国の存在感は大きい。この他、韓国やドイツなどもeスポーツ支援を積極的に行っている。韓国は、2000年に韓国eスポーツ協会(KeSPA)という行政機関を設置し、ゲーム大会の主催や、八百長の摘発などを行った。現在、KeSPAは民間法人になっているが、eスポーツ黎明期から国が積極的な支援を行ったこともあり、韓国は「オーバーウォッチ」や「リーグ・オブ・レジェンド」などの人気ゲームで、トッププレイヤーを輩出している。

ドイツは、2020年に世界で初めてeスポーツに特化したビザを新設した。これまでは、EU圏外のeスポーツのプレーヤーが大会参加のために入国するには、通常の労働ビザを取得する必要があり、入国が認められない場合もあった。同制度の導入により、ドイツでのeスポーツ大会の開催に弾みがつくと期待されている。また、フィンランドでは、2018年から、外国人選手へのビザの発給や、スポーツ事業としての税制優遇といった面で、「eスポーツ」と従来のスポーツは同等のものとして扱われている。

規模は小さいものの、日本のeスポーツ市場も急成長中

2020年の日本のeスポーツ市場規模は、約67億円、eスポーツのファン数は、686万人とされる(ファミ通調べ)。国内市場は年々成長を続けているとはいえ、世界の中では、まだまだeスポーツ発展途上国といえる。これには、日本では家庭用ゲーム機が普及したため、PCゲーム市場が成長しなかったことや、法律上、海外のような高額賞金を簡単に出すことができないという背景がある。

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しかし、日本においても、プロゲーマーやチームをバックアップする体制が充実しつつある。2018年に、eスポーツに関連する3団体が統合され、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)として、世界大会への選手派遣や、プロライセンスの発行などを行うようになった。国内での大会開催も行っており、今年4月には、日本学生eスポーツ競技大会を開催したほか、10月には、第3回目となる全国都道府県対応eスポーツ選手権が三重で開催される予定だ。

大手企業が、eスポーツ大会やプロチーム、プロ選手のスポンサーになるケースも増加している。日本野球機構とコナミが共催する、「パワフルプロ野球」のプロリーグ「eBASEBALL」や、「PUBG」の公式リーグ「PUBG JAPAN SERIES」にも一般企業の協賛やスポンサーがつくようになり、業界の裾野は順調に拡大しているといえるだろう。

eスポーツ業界で、通信事業者の存在感が拡大

ゲームは5Gの特徴を効果的に訴求できる領域のひとつであり、通信事業者の関心も高い。NTTドコモは、昨年11月に、eスポーツ事業に参入することを発表した。eスポーツリーグブランドX-MOMENTを立ち上げ、2月には「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE」、そして3月からは、「Rainbow Six Japan League」と、eスポーツのプロリーグを次々に設立している。どちらのリーグも、年間を通して実施されるリーグ戦を勝ち抜いたチームが世界大会への出場権を得る仕組みになっている。

米verizonが、「League of Legends」の北米リーグとパートナーシップを締結するなど、通信事業者がeスポーツ産業のパトロンになる動きは世界中で見られる。今後、5Gを活用したゲーム大会の配信や、VR/ARを利用した臨場感あるゲーム体験の普及により、eスポーツ市場はますます拡大していくと同時に、業界における通信事業者の存在感も増していくだろう。

※注1: MOBAとは、マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(Multiplayer online battle arena)の略称。複数のプレーヤーが2つのチームに分かれ、3対3、5対5などの形式で、互いの拠点を取り合うゲームを指す。チームや試合ごとに様々な戦略があり、競技性が高いため、eスポーツでも人気のジャンルとなっている。

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