目次
- ▼1. そもそもスマートシティとは?
- ▼2. 日本のスマートシティ事例11選
- ・事例1 静岡県裾野市「Woven City」
- ・事例2 宮城県仙台市「スーパーシティ構想」
- ・事例3 千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」
- ・事例4 静岡県藤枝市「藤枝ICTコンソーシアム」
- ・事例5 福島県双葉郡浪江町「浪江町復興スマートコミュニティ」
- ・事例6 北海道札幌市「DATA-SMART CITY SAPPORO」
- ・事例7 兵庫県加古川市「スマートシティ構想」
- ・事例8 長野県伊那市「スマートローカル」
- ・事例9 埼玉県さいたま市「スマートシティさいたまモデル」
- ・事例10 香川県高松市「スマートシティたかまつ」
- ・事例11 福岡県福岡市「FUKUOKA Smart EAST」
- ▼3. 海外のスマートシティ事例7選
- ・事例1 シンガポール「Smart Nation Singapore」
- ・事例2 バルセロナ「Barcelona Digital City」
- ・事例3 韓国「スマートシティ政策」
- ・事例4 ドバイ「スマート交通戦略」
- ・事例5 台湾「Smart City Taiwan」
- ・事例6 ニューヨーク「LinkNYC」
- ・事例7 中国・杭州市「ET City Brain(都市大脳)」
- ▼4. スマートシティに向けた自治体の取り組み
- ▼5. スマートシティの失敗事例から学ぶ教訓
- ▼6. スマートシティを成功させるためのポイント
- ▼7. まとめ
スマートシティとは、IoTやAIなど最新技術を用いて地域の課題を解決し、新たな価値づくりに取り組む都市や地域のことである。日本だけでなく、世界中でスマートシティの実現に向けた取り組みが見られている。
「スマートシティ」は具体的に何が実現でき、どんな事例があるのだろうか。
この記事では、国内・国外におけるスマートシティの事例や、自治体の取り組みを紹介する。過去の失敗例にも注目しながら、スマートシティを成功させるためのポイントを見ていこう。
そもそもスマートシティとは?
スマートシティとは、IoTやAIなど最先端技術を用いて課題を解決する都市や地域のことである。内閣府は、スマートシティを以下のように定義している。
スマートシティは、ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場と定義されています。
引用:スマートシティ|内閣府/p>
現在、都市部への人口集中による環境悪化、交通渋滞、エネルギー消費の増加が懸念されている。
そこで、持続可能な都市を実現するために、社会課題を解決できる最先端技術を用いた「スマートシティ」の開発が世界中で進んでいる。
スマートシティのメリットやデメリット、使用される技術などの詳細は、スマートシティとは?~概念から取り組みの事例・現状課題までをわかりやすく解説で詳しく解説している。
スマートシティで何ができる?
スマートシティでは、社会インフラの向上、エネルギー効率の向上、災害対策の強化、防犯体制の向上、交通渋滞の緩和、生活の質の向上が期待できる。
例えば、これまでは管理が難しかった森林の状況を、LiDAR(Light Detection And Ranging)や可視光などの「リモートセンシング技術」で容易に確認できると、林業や農業などの一次産業におけるインフラ整備に役立つ。
また、EV(電気自動車)の充電施設を増設することで、エネルギー効率の向上や導入したビルの付加価値が向上する。センサーや防犯カメラを設置し取得した情報をAIで解析すれば、災害予測や防犯体制を強化でき、交通渋滞の緩和も期待できるだろう。
スマートシティで最先端技術を効果的に活用できれば、市民の生活の質が高まり、満足度の向上につながっていく。
日本のスマートシティ事例11選

まずは、国内の事例11選を紹介する。
都市・地域 | 概要 |
静岡県裾野市 「Woven City」 | 自動運転技術、AI、ロボットなどの検証や実験を実施 |
宮城県仙台市 「スーパーシティ構想」 | 映像をAIで解析し、通行量や属性を集計するシステムをデータ基盤に連携 |
千葉県柏市 「柏の葉スマートシティ」 | ライフサイエンス、モビリティ、エネルギーの領域で、街全体がオープンイノベーションの場になることを目指す |
静岡県藤枝市 「藤枝ICTコンソーシアム」 | AI防災、オンデマンド交通、データ活用による見守りなどの取り組みを推進 |
福島県双葉郡浪江町 「浪江町復興スマートコミュニティ」 | EV(電気自動車)を活用したレンタカーやカーシェアリング、乗合タクシーを提供 |
北海道札幌市 「DATA-SMART CITY SAPPORO」 | ビッグデータを活用し、生活、経済、教育、行政の生産性や質を向上させるために、専用のWebサイトを開設 |
兵庫県加古川市 「スマートシティ構想」 | 見守りカメラや見守りサービス、市民参加型合意形成プラットフォーム、オンライン申請などを実施 |
長野県伊那市 「スマートローカル」 | ドローンによる当日配送、AIを活用した自動配車乗合タクシー、移動診療車、モバイル市役所などを提供 |
埼玉県さいたま市 「スマートシティさいたまモデル」 | AI、IoT、データを活用して、AIによるインフルエンザ予報サービスなど、生活支援サービスを提供 |
香川県高松市 「スマートシティたかまつ」 | カメラやセンサーによる河川の水位観測や安全情報の伝達、GPSによるレンタサイクルの動体を把握 |
福岡県福岡市 「FUKUOKA Smart EAST」 | 自動配送ロボットや自動運転バス、ドローンによる飛行、災害情報の翻訳ツールなどの実証実験を実施 |
事例1 静岡県裾野市「Woven City」
「Woven City」は、トヨタが静岡県裾野市で進めるスマートシティである。
自動運転技術、AI、ロボットなどの検証や実験を行うための街で、実際に人が住むと想定されている。
2024年夏に建物が完成し、2025年に一部の実証実験を開始する予定だ。
Woven Cityについては、デジタルツインで実現するスマートシティが都市の課題を解決でも詳しく紹介している。
事例2 宮城県仙台市「スーパーシティ構想」
宮城県仙台市は、持続的な経済成長を実現するために、複数分野のデータ連携と最先端技術による「まるごと未来都市」を目指している。
最先端技術を有する東北大学と「スーパーシティ構想」を取りまとめ、NTTドコモと協働でドローンやXR技術などを活用した実証実験を行った。

NTTドコモとの連携による「IoTセンサーを活用したレール温度遠隔管理システム」の実証実験
(出典元)NTTドコモの発表資料
さらに、データ連携基盤を構築し、カメラ撮影した映像をAIで解析し、通行量や属性を集計するシステムを連携している。
仙台市と東北大学のスーパーシティ構想は、東北大学との連携でスーパーシティを目指す仙台市でも詳しく紹介している。
事例3 千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」
千葉県柏市では、「柏の葉スマートシティ」の実現に向け、公・民・学の連携で「柏の葉国際キャンパスタウン構想」を共有し、「モビリティ」「エネルギー」「パブリックスペース」「ウェルネス」の4つのテーマに取り組んでいる。
民間と公共のデータプラットフォームを活用し、街全体がオープンイノベーションの場になるよう目指している。 「柏の葉スマートシティ」については、柏の葉が目指すスマートシティ構想でも詳しく紹介している。
参考:KASHIWA-NO-HA SMART CITY|柏市
事例4 静岡県藤枝市「藤枝ICTコンソーシアム」
静岡県藤枝市は、ふじえだスマートコンパクトシティ「藤枝ICTコンソーシアム」を構築した。
AI防災、オンデマンド交通、データ活用による見守りなどの取り組みを進め、産学官連携組織である「藤枝ICTコンソーシアム」をハブに、コスト捻出ができる仕組みを構築している。
参考:ふじえだスマートコンパクトシティの形成(藤枝ICTコンソーシアム)|藤枝市
事例5 福島県双葉郡浪江町「浪江町復興スマートコミュニティ」
福島県浪江町では、復興にあたり「非常時の安全・安心」「再生可能エネルギーの導入」「生活利便性の向上と新たな雇用の創出」の3点を、スマートコミュニティの構築で実現することを目指している。

スマートコミュニティの街並みと高さ8mmのLoRaWAN ゲートウェイ・ポール
(出典:株式会社ミライト・ワン|福島県浪江町の復興スマートコミュニティにおいて、災害公営住宅太陽光発電などの工事を受注)
道の駅を拠点とし、EV(電気自動車)を活用したレンタカーやカーシェアリング、乗合タクシーを提供し、町民や訪問者の利便性を高めるための取り組みだ。
さらに、スマートコミュニティの構築により、約500トンのCO2削減や、再生可能エネルギーの導入率26%などを導入効果として期待している。
「浪江町復興スマートコミュニティ」の詳細は、福島県浪江町の復興スマートコミュニティにおいて、災害公営住宅太陽光発電などの工事を受注で紹介している。
参考:浪江町復興スマートコミュニティ構築事業について|浪江町
【事業名】浪江町復興スマートコミュニティ構築事業(概要)|浪江町
事例6 北海道札幌市「DATA-SMART CITY SAPPORO」
北海道札幌市では、ビッグデータを活用し、生活、経済、教育、行政の生産性や質の向上を図るために、Webサイト「DATA-SMART CITY SAPPORO」を開設した。
「DATA-SMART CITY SAPPORO」では、データ管理のダッシュボードを公開し、観光、雪対策、健康などに関するデータを確認できる。
さまざまな分野における課題解決にデータを活用し、データ駆動型のまちづくりを目指している。
参考:スマートシティ実現に向けた札幌市の取組と目指す姿|札幌市
DATA-SMART CITY SAPPORO|札幌市
事例7 兵庫県加古川市「スマートシティ構想」
兵庫県加古川市のスマートシティ構想では、「データ利活用型スマートシティ推進事業」を実施している。
見守りカメラや見守りサービス事業から始まり、市民参加型合意形成プラットフォーム、オンライン申請、地デジ波を用いた災害情報の伝達などに取り組んできた。
安心安全な街づくりを実施しながら、市民中心の課題解決型スマートシティを目指している。
参考:市民と行政が協力し、よりよいまちづくりを目指す 加古川市スマートシティ構想 ~日本初の取り組みからICTを活用した最先端の取り組みまで~|PR TIMES
事例8 長野県伊那市「スマートローカル」
長野県伊那市は、最先端技術を用いて「スマートローカル」を目指している。
アルプスの山々に囲まれた伊那市は、高齢化が進み生活インフラの確保が難しい。そこで、ケーブルテレビのリモコン操作で食料品や日用品を購入でき、ドローンによる当日配送が可能なサービスを取り入れた。

(図1)伊那市が提供を開始した、ドローンで商品配達を行う買物サービス「ゆうあいマーケット」の概要
(出典:KDDIのニュースリリースより)
さらに、AIを活用した自動配車乗合タクシー、移動診療車、モバイル市役所などさまざまなサービスを提供している。
伊那市の事例は、中山間地の暮らしをサポートするドローン配送事業が自治体主導でスタートでも、チェックしてみてほしい。
事例9 埼玉県さいたま市「スマートシティさいたまモデル」
埼玉県さいたま市では、「スマートシティさいたまモデル」の構築に向けて、データ、モビリティ、エネルギー、健康、コミュニティの5つの分野で公民学が連携し、取り組んでいる。
さいたま市の美園地区を、さいたま市が目指す理想都市の縮図として、AI、IoT、データ活用により生活支援サービスを提供している。
これまで、AIを活用したインフルエンザ予報サービスなどの実証実験を行ってきた。
事例10 香川県高松市「スマートシティたかまつ」
香川県高松市の「スマートシティたかまつ」では、IoTなどを活用し複数分野のデータを収集して分析するプラットフォームを構築した。
誰もがデジタル社会の恩恵を享受できる環境を目指し、防災や観光分野でのデータを活用している。
例えば、カメラやセンサーによる河川の水位観測や安全情報の伝達、GPSによるレンタサイクルの動体把握での利用が予定されている。
参考:スマートシティ実現に向けた高松市の取組〜データ利活用で未来のまちづくり〜|高松市
事例11 福岡県福岡市「FUKUOKA Smart EAST」
移転した九州大学箱崎キャンパス跡地を利用した「FUKUOKA Smart EAST」では、市民のニーズをもとにした社会貢献の実現に向け、スマートシティづくりを実施している。
福岡市では、自動配送ロボットや自動運転バス、ドローンによる飛行、災害情報の翻訳ツールなどの実証実験が行われた。
海外のスマートシティ事例7選

次に、海外の事例7選を紹介する。
都市・地域 | 概要 |
シンガポール 「Smart Nation Singapore」 | ・99%の政府サービスをデジタル化 ・市民へのAI教育活動を支援 |
バルセロナ「Barcelona Digital City」 | カタルーニャ州を5Gのデジタルハブとして、5G技術を検証する他、デジタル参加型民主的プラットフォームを構築 |
韓国「スマートシティ政策」 | AI、5G、ブロックチェーンなどの最新技術を活用し、スマートエネルギーや自動運転などの産業を支援 |
ドバイ「スマート交通戦略」 | 2030年までに、交通機関の4分の1を自律走行へ移行することが目標 |
台湾「Smart City Taiwan」 | スマート台北プロジェクト、再生可能エネルギー、サイエンスシティプロジェクトを実施 |
ニューヨーク「LinkNYC」 | 電話ボックスをデジタルキオスクに置き換え、無料で超高速Wi-Fiを提供 |
中国・杭州市「ET City Brain(都市大脳)」 | クラウドとAI技術を活用した都市管理システム「ET City Brain(都市大脳)」を導入 |
事例1 シンガポール「Smart Nation Singapore」
シンガポールでは、「Smart Nation Singapore」と掲げてスマートシティ化を推進し、スマートシティランキングにおいて2023年はアジアで1位となった。
デジタル政府、デジタル経済、デジタル社会をビジョンとして、99%の政府サービスをデジタル化している。
例えば、GoBusinessと呼ばれる政府のe-サービスへのアクセス、健康、テクノロジーを使って最適な交通システムを実現するSmart Urban Mobility、市民へAIの教育活動を実施している。
事例2 バルセロナ「Barcelona Digital City」
スペインのバルセロナは、データ駆動型テクノロジーがもたらす機会を最大限に活用し、スマートシティを構築している。
センサーネットワークやガジェット、コネクティビティだけでなく、デジタル公共インフラへの投資を重要視している。
具体的には、カタルーニャ州を5Gのデジタルハブとして、5G技術やサービスを検証する予定だ。また、デジタル参加型プラットフォームを用いて、市民が意思決定に参加できるシステムを構築する。
参考:5G Barcelona | Barcelona Digital City
Decidim Barcelona | Barcelona Digital City
事例3 韓国「スマートシティ政策」
韓国では、スマートシティの実現に向けてパイロット型の都市を選定している。
AI、5G、ブロックチェーンなどの最新技術を活用し、スマートエネルギーや自動運転などの産業を起こす狙いだ。
2都市を選定し、最適な交通手段を提供できるよう都市開発を進めている。コロナ禍では、スマートシティ・イノベーションセンターが疫学調査を実施し、データハブに基づいた感染経路を分析した。
参考:韓国におけるスマートシティの政策と技術の動向|Science Portal Korea
事例4 ドバイ「スマート交通戦略」
スマートシティ化を進めるドバイでは、2030年までに交通機関の4分の1を自律走行へと移行することを目標としている。
交通機関の自律走行で、44%の交通費削減、12%の空気汚染削減などの実現が狙いだ。
さらに、EV(電気自動車)市場の成長に向けた政策も重要視しており、2030年までに4万2,000台のEV(電気自動車)の導入を目指している。
参考:スマートシティのためのスマート交通|ドバイ経済・観光局
事例5 台湾「Smart City Taiwan」
台湾では、スマート台北プロジェクト、再生可能エネルギー、サイエンスシティプロジェクトを通して、スマートシティの構築が進められている。
スマート台北プロジェクトでは、交通、住宅、医療、教育などのスマート化を進め、台北駅におけるスマートパーキングシステムの導入を実施した。
将来を見据えたインフラ計画を策定し、2025年までに全発電量の2割を再生可能エネルギーにする目標を掲げている。また、さまざまな研究所が集うサイエンスシティを設置して、実証実験を行う予定だ。
参考:台湾のスマートシティの現状と日本企業のビジネスチャンス|日本台湾交流協会
事例6 ニューヨーク「LinkNYC」
ニューヨークで実施されている「LinkNYC」は、街中の電話ボックスをギガビットのネットワークに接続したデジタルキオスクに置き換えるプロジェクトだ。
LinkNYCは、無料で超高速Wi-Fiを提供している。インターネット環境が無い世帯からのインターネットアクセス確保が目的とされた。
参考:Free super fast Wi-Fi. And that’s just the beginning. | LinkNYC
事例7 中国・杭州市「ET City Brain(都市大脳)」
中国の杭州市は、アリババグループと契約を結び、クラウドとAI技術を活用した都市管理システム「ET City Brain(都市大脳)」を導入した。
道路に設置されたネットワークカメラの映像から車の流れを把握し、渋滞や事故の検出を速やかに行ったり、リアルタイムで信号を最適化したりすることで、都市の渋滞緩和に貢献している。
救急車の到着が早まるだけでなく、事故の特定精度も92%までアップした。他にも、スマートシティ化により、福祉障害者の支援にもつなげている。
スマートシティに向けた自治体の取り組み

現在、スマートシティに向けて、自治体はどのような取り組みをしているのだろうか。
ここでは、国内外における自治体の取り組みを紹介する。
国内自治体の取り組み
国内の自治体は、主に次のような取り組みをしている。
技術と政策の連携
スマートシティは、自治体と民間企業が連携し、民間企業が有する技術を活用することで加速する。
国内では「官民連携プラットフォーム」を設立しており、自治体が必要とする技術を保有する企業とのマッチング支援などにより、スマートシティの推進が支援されている。
シティプランニングと市民参加
スマートシティに限らず、シティプランニングには市民参加が重要視されている。
どれだけ優れた技術でも、市民が使いづらければ意味がないので、市民を起点とした満足度の高いスマートシティづくりが大切である。意思決定に、市民の参加を取り入れられると良い。
海外自治体の取り組み
海外の自治体は、主に次のような取り組みをしている。
● 多国籍企業との協力
● 地域特性を活かしたスマートシティ開発
多国籍企業との協力
国内だけで必要な技術を補えない場合、外国籍企業の技術を導入することもある。
日本は災害対策に向けて積極的に取り組んできた背景があるため、社会インフラの強化や災害の予測、予防などで海外自治体を支援できる可能性がある。
地域特性を活かしたスマートシティ開発
都市部と地方、先進国と発展途上国など、地域の特性にあったスマートシティ開発が重要である。
スマートシティは、個別分野の課題を解決しながら開発を進めることが多く、地域によって課題は違う。
実際、世界の目線でスマートシティに関する明確な定義は存在せず、評価方法も異なる。そのため、自国の課題を正確に把握した上で、解決につながる技術を導入する必要がある。
スマートシティの失敗事例から学ぶ教訓
スマートシティの取り組みは世界各国で進められているが、必ずしも成功しているわけではない。
ここでは、さまざまな事情でスマートシティの開発が途中で終了した事例から、今後に向けて学ぶべきことを紹介する。
● トロント市の未来都市「IDEA」
● 裾野市の「次世代型近未来都市構想」
● ポルトガルの「PlanIT Valley」
事例1 トロントの未来都市「IDEA」の開発中止
Google親会社のアルファベット傘下「Sidewalk Labs」は、2017年にカナダのトロント市と提携し、未来都市「IDEA」の開発を計画していた。
IDEAでは、自動運転、ロボット、データ活用など、Googleの技術を使った未来都市の構築が計画されていた。
ところが、2020年5月にSidewalk Labsは、開発への参画を中止すると発表。理由は、コロナ禍により、開発資金や報酬の不確実性が高まったためと報告された。
しかし実際は、アルファベットのデータ収集方法や管理者、データ管理の合法性について、市民から疑念の声が上がっており、疑念を拭いきれなかったことが中止につながったと考えられている。
コロナによる経済状況の悪化は、避けられない外的要因であったとしても、データの収集や管理に関しては、市民とよく話し合うべきだったといえるだろう。
事例2 裾野市の「次世代型近未来都市構想」を廃止
静岡県裾野市「Woven City」の事例のとおり、静岡県裾野市は、トヨタが建設中の「Woven City」と連携して「次世代型近未来都市構想」で街づくりを進める予定だった。
ところが、先進的な技術を市民生活につなげることが難しく、実装がなかなか進まない状況を受けて街づくりの廃止が決定された。
Woven City自体が廃止になるわけではないので、スマートシティそのものが失敗した事例ではないが、市民の意志や生活を理解した上で、目指すべき街の姿を決定する重要性を学べる事例である。
事例3 ポルトガルの「PlanIT Valley」の失敗
元Microsoftのソフトウェアエンジニアは、センサーネットワークによって集中管理された、カーボンニュートラルなビルの建設、自律走行車の運行など「ポルトガルのシリコンバレー」となる「PlanIT Valley」の構築を計画していた。
しかし、自分達のビジョンにとらわれるあまり、市民の声に耳を傾けず生活の質がどのように向上するかまで検討せずに計画を進めていた。
結果、賛同者を集められず、PlanIT Valleyは建設されずに終わってしまったのだ。
この事例から、技術ファーストではなく、市民の課題にフォーカスすべきだったことがいえるだろう。
スマートシティを成功させるためのポイント

スマートシティの構築を失敗で終わらせないためには、どのような対策が必要なのだろうか。
次の3つは、スマートシティを成功させるための主なポイントである。
● 市民参加とコミュニケーションの重要性
● 全体最適化と地域特性を考慮した取り組み
● PPP(パブリック-プライベートパートナーシップ)の効果的活用
市民参加とコミュニケーションの重要性
市民の暮らし方や文化を理解するために、市民参加型のコミュニケーションが重要である。
市民との合意形成が成されなければ、スマートシティの失敗事例から学ぶ教訓で紹介したように、スマートシティ計画が頓挫してしまう可能性がある。
そこで、デジタルプラットフォームを構築し、市民と意見交換ができる場を設けるとコミュニケーションを促進できる。
全体最適化と地域特性を考慮した取り組み
全体最適化を図るために、地域ごとの個別課題に取り組むことも大切である。
データ連携基盤を構築し、複数の分野でデータを共有することで、スマートシティ化を推進できる。
インフラ、経済、交通、医療、教育、生活などの領域において、横断的にスマート化を進め、全体最適化を図ることが必要とされる。
PPP(パブリック-プライベートパートナーシップ)の効果的活用
スマートシティの開発を進めるには、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)を効果的に活用する必要がある。PPPとは、官民パートナーシップのことだ。
官民が連携してスマートシティの開発に取り組むことで、多角的なアプローチが実現する。
行政がビジョンを提示してリーダーシップを発揮し、先端技術を有する民間企業が積極的に参加することで、スマートシティの構築を促進できるだろう。
まとめ
スマートシティを実現させるには、成功例だけでなく、失敗例も参考にすることが大切だ。
国内外の先行事例から知見を得ることで、スマートシティの計画や実証実験、官民パートナーシップ、実装化に向けた取り組みで活用できる。
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