スポーツテックの市場動向について
スポーツテックとは
「スポーツテック(Sports Tech)」とは、「スポーツ(Sports)」と「テクノロジー(Technology)」の組み合わせから成る造語で、スポーツ分野において、ある目標を達成するための手段のことです。この場合の「テクノロジー」とは、ITやAIなどの先端情報技術を指しています。スポーツテックは、用品・グッズの開発やアスリート・選手のサポートに限らず、競技における判定や観戦・観覧の環境改善など、さまざまな分野に導入されています。具体的にはスマートウォッチやフィットネスアプリ、スポーツ用品のIoT化などがあり、スポーツのパフォーマンスやトレーニング効果を高めることができるだけではなく、健康やフィットネスへの利点もあるため注目されています。また、eスポーツの分野も、「スポーツテック」に含まれます。
スポーツテックの事例
スポーツテックは、「支える」「観る」「する」「創る」の4つの要素に分けられます。
ここでは、「支える」の事例をご紹介しましょう。
株式会社アクロディア 、KDDI株式会社 、株式会社KDDI総合研究所は、スポーツIoTプラットフォーム「アスリーテック」をベースに、投手の投球パフォーマンス診断や投球フォーム解析ができる新たな機能「アスリーテックラボ」を開発しました。同サービスはアクロディアが提供する野球向けセンサー内蔵型ボール「TECHNICAL PITCH」を使用することで、ボールから取得した球速や回転数のデータを同世代選手と比較し個人の投球偏差値を確認することができる「パフォーマンス診断機能」を提供しています。また、スマートフォンアプリで撮影した投球動画から全身65ヵ所の骨格点を抽出して投球フォームを解析できる「投球フォームチェック機能」も提供しています。同サービスを利用することで、データ化された自身の投球フォームを活用して、誰でもフォームの改善やコンディション管理が可能になります。
スポーツテックの市場動向
日本におけるスポーツテック市場は、年々拡大を続けています。野村総合研究所が2019年12月に発表した調査データによると、2019年の時点では310億円ほどであったスポーツテック市場は2022年時点で1,062億円まで膨らんでいます。2025年には45%増の1,547億円にまで急拡大すると予測されています。
このような急拡大の背景には、スポーツ視聴のための動画配信サービスが広まっていることが一因とされています。5Gの商用サービスが世界各国で開始されはじめたことによって、スポーツテック関連の動画配信サービスのマーケットも活性化しています。5Gの通信速度は4Gの約20倍で、同時に接続できる端末も10倍になるため、リアルタイムのストリーミング配信との親和性が高いスポーツ観戦では、需要を喚起すると期待されているのです。野村総合研究所による調査では、スポーツテック関連動画配信サービスの市場規模は、2019年に276億円を記録し、2022年には651億円、2025年には863億円に達すると予測されています。
現在スポーツ庁は、スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ環境の改善に還元し、スポーツ参画人口の拡大につなげるという好循環を生み出すことを目標に掲げています。そのような背景から、スポーツ庁では、「スポーツ×テクノロジーの活用推進」として、スポーツの場におけるDX推進等支援事業やスポーツDX人材調査事業、バーチャルスポーツ・メタバース活用調査事業などを行っています。
株式会社電通が主催する「SPORTS TECH TOKYO」が 2020年の「第2回日本オープンイノベーション大賞 スポーツ庁長官賞」を受賞しました。この賞は、内閣府が主催するオープンイノベーションをさらに推進するために、今後のロールモデルとして期待される先導性や独創性の高い取組を「日本オープンイノベーション大賞」として称え表彰するものです。「SPORTS TECH TOKYO」には、世界33カ国からスタートアップ約300社の応募があり、スタートアップ以外では約200の個人・団体が参画しています。また、伊藤忠商事株式会社やソフトバンク株式会社などの大企業がプログラムパートナーとなっています。このことから、大企業がこぞって新しいスポーツテックを探求し、その取り組みを政府が後押ししており、今後のさらなる市場拡大が期待されていると言えます。
スポーツテックの未来
スポーツテック市場には、スポーツ用品メーカーだけではなく、IT企業やヘルスケア企業など様々な企業が参入しています。各企業は、新しい価値を生み出すチャンスを狙っており、競争の激化が予想されます。
特に、AIやビッグデータの活用、ウェアラブル技術の進化は、選手のパフォーマンス向上やファンエクスペリエンスの豊かさに大きく貢献しています。ITを駆使した効率的なトレーニング方法が発展していくことで、アスリートの練習環境の改善に大きく寄与するだけではなく、これまでスポーツと縁がなかった人でも、魅力的なスポーツテックの登場によって気軽に参加できるコンテンツや競技が増える期待も高まります。ウェルネス志向の高まりとともに、フィットネスアプリや健康管理ツールの需要も増加し続けるでしょう。
日本のスポーツテック市場は、多方面からの技術革新と社会的変化により、今後も着実な成長を遂げることが予測されます。デジタル化の進展と社会の変化が相まって、スポーツビジネスにおいて、新たなビジネスモデルやマーケティング手法が登場することになるでしょう。
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