水道DXとは?現状と課題・取り組み事例5つ
目次
- ▼1. 水道DXとは
- ▼2. 水道事業の現状と課題
- ・水道施設の老朽化
- ・職員数の減少
- ・人口減少による料金収入の減少
- ▼3. 水道DX推進の具体的な取り組み
- ・人工衛星データを活用したAIによる漏水検知
- ・AIを活用した水道管の劣化診断
- ・水道スマートメーターの導入
- ・ドローンによる水管橋点検
- ▼4. 水道DXの事例5つ
- ・事例①スマートメーターを排水管に設置|会津若松市上下水道局
- ・事例②ARやスマートグラスによる遠隔作業支援|横浜市水道局
- ・事例③クラウド型監視システムで水道施設の状況を把握|石川県川北町土木課
- ・事例④水道マップの電子化で業務効率化を実現|福岡県苅田町
- ・事例⑤ドローンによる水管橋・配水池の監視・点検|神奈川県営水道
- ▼5. 株式会社ミライト・ワンの「水道DXソリューション」
- ▼6. まとめ
水道施設の老朽化や職員の高齢化、人口減少に伴う料金収入の減少など、水道事業を取り巻く環境は複雑化している。このような課題に対応する手段として、水道DXが注目されている。これはAIやIoTなどのデジタル技術を活用し、水道施設の管理を効率化して新しい価値の創出を目指す取り組みである。
本記事では、水道DXの意味や水道事業の現状と課題、具体的な取り組み、導入事例などについて詳しく紹介する。
水道DXとは

水道DXとは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用し、上下水道施設の管理やメンテナンスを効率化することで、持続可能な水道サービスの提供を目指す取り組みである。近年、自治体が中心となり運営する水道事業は、設備の老朽化や人手不足などの課題に直面しており、従来の運用では安定的な水の供給が困難になると懸念されている。
国内における水道普及率は、2023年時点で98.2%と極めて高く、ほぼ全国民が「安全でおいしい水」を利用できる環境が整っている。しかし、現在は市町村単位の事業体で水道事業に取り組んでいるため、とくに小規模事業体では人材や財源などが限られ、今後は継続的な対応が難しくなる可能性もあると考えられている。
このような状況を受け、これからも安定的に水の供給を維持するために、政府はデジタル技術を用いた「上下水道DX」を推進している。次からは、水道事業に関する課題や具体的なデジタル技術について紹介する。
水道事業の現状と課題
ここでは、日本の水道事業における現状と課題について解説する。
● 水道施設の老朽化
● 職員数の減少
● 人口減少による料金収入の減少
水道施設の老朽化
現在使用されている多くの水道施設は、高度経済成長期に整備されたものであり、すでに数十年が経過し老朽化も進んでいる。耐用年数を超えた水道管路がいまも使用されており、年間2万件以上の漏水・破損事故が起こっている。
とくに災害時においては、老朽化が進んだ水道施設の使用は断水リスクを高めると考えられる。実際、2024年に発生した能登半島地震では、上下水道施設に深刻な被害が及び、最大約14万戸で断水が生じる事態となった。
職員数の減少
水道事業に従事する職員数の減少も課題の一つとしてあげられる。公益社団法人日本水道協会の資料によると、1990年には全国で80,105名の職員がいたが、2022年には72,758人まで減少していることがわかった。
とくに小規模事業体では、人手不足に加え、職員の高齢化も深刻化していて、技術やノウハウの継承が困難になっていると考えられる。このままでは、水道施設の管理を適切に行えなくなる可能性があるだろう。
人口減少による料金収入の減少
人口減少や節水型社会への移行により水道の利用量が減少している。それに伴い、水道事業における料金収入も低下している。一方で、老朽化により水道設備の更新や維持管理費など、投資額は増加傾向にあるため、収支バランスが崩れつつある点も課題の一つである。
総務資料の資料をもとに計算すると、2022年には全国の水道事業体のうち約12%が赤字経営に陥っていることがわかった。今後、さらなる高齢化や人手不足が進行すれば、十分な対応ができなくなり、水道サービスの継続が困難になる地域も出てくるだろう。
水道DX推進の具体的な取り組み
水道DXの実現に向けて、民間企業や自治体ではさまざまな技術の導入が進められている。ここでは、次の4つの取り組みについて紹介する。
● 人工衛星データを活用したAIによる漏水検知
● AIを活用した水道管の劣化診断
● 水道スマートメーターの導入
● ドローンによる水管橋点検
人工衛星データを活用したAIによる漏水検知
水道DXの取り組みの一つとして、人工衛星データを活用したAIによる漏水検知技術が挙げられる。これは、人工衛星が上空から水道水の反射波データを検知し、AIが解析して漏水区域を特定する技術である。
電波の違いにより雨水・湧水と漏水を区別できるため、漏水区域の正確な特定につながりやすい。直径200mの範囲で漏水エリアを抽出でき、漏水調査の効率化に役立つと期待されている。
AIを活用した水道管の劣化診断
水道管の設置年や材質、位置などの各種情報と環境ビッグデータを活用し、AIが水道管の劣化予測を行う診断技術も活用されている。掘削することなく水道管の劣化リスクを予測でき、漏水が発生する前に管路更新計画の策定につながると期待されている。管路1本ごとに劣化状況を診断できるため、各自治体は適切な予防対策を講じることができるだろう。
株式会社ミライト・ワンは、既存データと独自の環境データベース、AIによるアルゴリズムを用いて水道管の劣化状態を予測する「水道管劣化予測・影響度評価・更新計画策定ソリューション」を提供している。
漏水発生時のリスクをマップ上に可視化し、自動で更新計画を立案することが可能。限られた予算内でも、効果的な更新計画の策定を実現する。詳しくは、以下のリンクをチェックしてみてほしい。
水道スマートメーターの導入
水道スマートメーターとは、水道使用量の検針業務を遠隔から行える水道メーターのことである。指定時間または一定水量の使用時などにデータが送信され、流量を把握できる。現地に職員が訪れて検針する必要がなくなり、業務効率化や人手不足の解消に役立つだろう。
株式会社ミライト・ワンは、流量の遠隔監視と遠隔検針を行える「水道スマートメーター遠隔監視システム」を提供している。通常の検針業務だけでなく、トラブル時や災害時にも設備の状態を遠隔から確認できるため、迅速な対応が実現しやすい。
流量計などに取り付ける計器盤はベンダーフリーで、どの製品にも設置可能。柔軟性が高いことから、さまざまな自治体の水道局で利用されている。

また、「水道スマートメーター遠隔監視システム」は国土交通省による「上下水道DX 技術カタログ」にも掲載されている。これは、上下水道施設におけるメンテナンス業務を高度化するために策定されたカタログで、同システムが工業用水の管理・検針業務を効率化する技術として紹介されている。
「水道スマートメーター遠隔監視システム」について、詳しくは以下のリンクもチェックしてみてほしい。
「水道スマートメーター遠隔監視システム」をクラウド化、水道事業体向けに提供開始 ~工業用水の運用維持管理を効率化~
ドローンによる水管橋点検

ドローンによる水管橋点検を導入することで、業務効率化だけでなく、職員の安全確保にもつながると考えられる。足場がない水管橋の点検は目視確認が困難で、異常を見落としてしまう可能性がある。そこで、ドローンを活用すると、さまざまな角度からの点検が可能になる。これにより、老朽化している場所の見落としを防げる他、足場のない危険な場所でも安全に点検できる。
株式会社ミライト・ワンは、水管橋をはじめとするインフラ点検や建物壁面点検に活用できる「ドローンフライトソリューション」を提供している。実際、同社と愛知県豊田市の上下水道局は、水管橋点検におけるドローンの有用性に関する実証実験を川田水管橋で実施している。
実証実験では、可視光カメラと赤外線カメラを用いてドローンが撮影した画像をもとに、管外面の亀裂や塗装の剥がれ、錆、ひび割れなどを、的確に把握できることを示した。詳しくは、以下のリンクをチェックしてみてほしい。
水道DXの事例5つ
続いて、水道DXに関する5つの事例について紹介する。
● 事例①スマートメーターを排水管に設置|会津若松市上下水道局
● 事例②ARやスマートグラスによる遠隔作業支援|横浜市水道局
● 事例③クラウド型監視システムで水道施設の状況を把握|石川県川北町土木課
● 事例④水道マップの電子化で業務効率化を実現|福岡県苅田町
● 事例⑤ドローンによる水管橋・配水池の監視・点検|神奈川県営水道
事例①スマートメーターを排水管に設置|会津若松市上下水道局
会津若松市上下水道局は、排水管にスマートメーターを設置し、IoTを活用したクラウド型の排水管理を導入している。
同市では、人口減少による水需要の減少や、老朽化による漏水の増加を課題として掲げていた。そこで、対象地区の各ブロックにスマートメーターを設置し、日々の排水量データを収集。その結果、ブロックごとの流量が把握でき、配水量と使用水量を比較することで、漏水量の多いブロックの特定につながった。特定した地域を優先的に調査することで、漏水管理業務の効率化を実現している。
参考:IoT・新技術活用推進モデル事業(会津若松市上下水道局)|国土交通省
事例②ARやスマートグラスによる遠隔作業支援|横浜市水道局
横浜市水道局は、熟練職員の高齢化と技術継承の課題に対応するため、AR(※1)技術とスマートグラス(※2)を活用した遠隔作業支援を導入している。
若手職員が現場でスマートグラスを装着し、映像や音声を通じて事務所にいる熟練職員とリアルタイムで情報を共有。熟練職員が作業指示を遠隔で行うことで、移動の手間を省きながら現場を効率的に支援できる体制を整備した。ARによる視覚情報により指示を明確に伝えられ、作業の安全性と正確性の向上にもつながっている。
(※2)スマートグラス:カメラやディスプレイ機能を備えた眼鏡のようなウェアラブル端末
参考:IoT・新技術活用推進モデル事業(横浜市水道局)|国土交通省
事例③クラウド型監視システムで水道施設の状況を把握|石川県川北町土木課
石川県川北町では、1人の職員が水道施設だけでなく道路や河川の管理も担っており、業務負担が大きな課題となっていた。そこで、同町ではクラウド型の監視カメラシステムを導入。水道施設や河川の状況を遠隔で常時監視しながら、異常時には即時に通報メールが送信される体制を構築した。
クラウド型監視システムの活用で、現場に駆けつけなくても適切な判断と対応が可能になり、パトロール業務の負担軽減に貢献している。
参考:IoT・新技術活用推進モデル事業(石川県川北町土木課)|国土交通省
事例④水道マップの電子化で業務効率化を実現|福岡県苅田町
福岡県苅田町では、水道管路図の紙資料を電子化し、スマートフォンのアプリから確認できる仕組みを構築した。従来は職員が事務所へ戻って確認していた管路情報を、現場で即時に確認できるようになり、漏水事故への対応時間が大幅に短縮された。
また、管路に関する問い合わせにも素早く対応できる体制が整い、業務全体の効率化につながっている。水道管路マップ作成については外部委託を行わず、蓄積したノウハウを活かし職員自らがデータ化することで、導入・保守コストの抑制にもつながっている。
参考:自治体DX事例|総務省
事例⑤ドローンによる水管橋・配水池の監視・点検|神奈川県営水道
神奈川県は、水管橋や配水池などの監視・点検にドローンを活用している。従来は職員が目視で点検していたが、水管橋の裏側を点検するには足場の組み立てや専用の点検車が必要で、準備に手間がかかるほか、交通に影響が出るなどの課題があった。
そこで、ドローンを導入したことで、空中撮影や赤外線カメラによる表面温度の異常が把握しやすくなり、水管橋や配水池の劣化や異常の早期発見、業務効率化につながっている。
株式会社ミライト・ワンの「水道DXソリューション」
株式会社ミライト・ワンは、水道事業体に向けて、調査・診断から施工・保守までを一貫して支援する水道DXソリューションを提供している。これまでの豊富な施工実績と、全国の自治体などから寄せられたニーズをもとに、以下の5つの水道DXソリューションを展開している。
水道DXソリューション | 概要 |
水道スマートメーター遠隔監視システム | 流量の遠隔監視や自動検針が可能なシステムで、通常の検針業務の効率化に加え、災害時などの緊急時にも現場の状況を即座に把握できる。計器盤はベンダーフリーで、柔軟に導入可能。 |
水道管劣化予測・影響度評価・更新計画策定ソリューション | 既存の管路データに加え、独自の環境データベースとAIアルゴリズムを活用し、水道管の劣化状態や漏水リスクを予測。マップ上に可視化された情報をもとに、自動で最適な更新計画を立案できる。限られた予算内での更新も提案する。 |
上下水設備の環境改善装置「ナノゲート」 | 給排水管に巻き付けて使用するセルフクリーニング装置。洗剤や薬剤の使用量を抑制し、配管内部の清浄化・長寿命化を促進。止水が不要な点も現場の負担軽減につながる。 |
上・下水道関連事業 上下水道管路・施設の老朽対策・維持更新 | 老朽化した上下水道管路や施設の改築・修繕において、豊富な経験と高い技術力で対応。非開削工事の提案から施工まで行っている。 |
ドローンフライトソリューション | 水管橋や配水池、建物壁面などのインフラ施設を対象とした、ドローンによる点検サービス。豊田市と実施した実証実験では、可視光・赤外線カメラによる水管橋の劣化発見に成功しており、点検精度と作業安全性の両立を実現している。 |
上記5つのソリューションについて、詳しくは以下のリンクもチェックしてみてほしい。
まとめ
国内の水道事業は、老朽化した設備や職員の高齢化による人手不足、人口減少に伴う収益減少など、さまざまな課題に直面している。今後も安定的な水の供給を実現するために、AIやIoT、クラウドサービス、ドローンといったデジタル技術を活用して運用・保守を行う「水道DX」が注目されている。
株式会社ミライト・ワンは、水道メーターの遠隔監視から劣化予測、環境改善、設備更新、さらにはドローンまで、一貫した水道DXソリューションを展開している。各ソリューションについて詳しくは、以下のリンクもチェックしてみてほしい。
水道スマートメーター遠隔監視システム
水道管劣化予測・影響度評価・更新計画策定ソリューション
上下水設備の環境改善装置「ナノゲート」
上・下水道関連事業 上下水道管路・施設の老朽対策・維持更新
ドローンフライトソリューション
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