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地方都市における生活の質の向上を目指す会津若松市のスマートシティ構想

2025年7月7日

福島県会津若松市は、2011年3月に発生した東日本大震災を機に同年12月に復興計画を策定し、2012年から「スマートシティ会津若松」の推進を掲げてきた。その構想を実現するため、会津若松市や会津大学、地元企業、地元に拠点を持つ大手企業などが、産官学連携による「会津若松(現・会津地域)スマートシティ推進協議会」を立ち上げた。現在も、行政や企業、市民が一体となったデータ利活用型の都市運営を推進する、「日本の地方都市に適したスマートシティモデル」として注目されている。

さまざまなデータを活用した「まちの見える化」

スマートシティ会津若松の主な取り組みとして、データ駆動型の行政サービス(スマート行政)の提供がある。市民はパソコンのブラウザやスマートフォンのアプリから「会津若松+」というポータルサイトを利用することで、デジタルでの行政手続や防災情報の取得などが可能だ。他にも、除雪車の走行状況が地図上で20秒ごとに更新され、リアルタイムに位置が把握できる「除雪車ナビ」サービスなど、安心安全な生活を支えるさまざまな情報が取得できる。

また、電気・水道のスマート化として、正確でスムーズな無線検針ができる水道スマートメーターを導入し、市民の電力消費を可視化した。省エネ活動を促す実証実験(瞬時電力見える化・節電実証プロジェクト)で取得されたデータなどをもとに、住民サービスの質の向上を目指す。

会津若松市では、他にもさまざまなオープンデータを活用した「まちの見える化」に取り組み、交通や医療、教育、防災の情報を統合・分析することで行政サービスの効率化を推進している。

(図1)会津若松市の住民向けポータルサイト「会津若松+」(出典:会津若松市の「会津若松+」) イメージ
(図1)会津若松市の住民向けポータルサイト「会津若松+」(出典:会津若松市の「会津若松+」)

市民一人ひとりの環境に寄り添ったサービスを提供

防災分野の取り組みでは、「位置情報を活用したデジタル防災」として、ソフトバンクが開発したデジタル防災アプリを提供。災害時に現在地から避難所などを案内する機能や、家族間での安否情報、位置情報の共有機能があり、平時は位置情報に基づいたハザードマップが確認できる。さらに、在宅ケア支援アプリ「ケアエール」と連携することで、ケアが必要な人の安否回答や災害情報を家族や関係者に共有するなど、個別化された避難支援が提供される。

ヘルスケア分野の取り組みでは、「医療データベース構築、遠隔医療の拡充」を目指し、事前承諾されたIoTデバイスからのバイタルデータの管理と、総合病院の一部医師へのデータ連携を実現する「ヘルスケアパスポート」を拡充。市民が普段の生活で取得したライフログ情報を医療機関と共有できたり、一部の医療機関の受診履歴(処方内容)がスマートフォン上で閲覧できたりする。

さらに、オンライン服薬指導や健康相談に対応できるサービス「HELPO(ヘルポ)」では、高血圧や慢性循環器疾患に特化したオンライン健康相談サービス「テレメディーズBP」と、それ以外の診療や服薬指導などにも活用可能なサービスを提供。これによって、市民一人ひとりの生活習慣に寄り添った健康管理を支援する。

(図2)会津若松市のデジタル防災アプリ(出典:ソフトバンクWebサイト) イメージ
(図2)会津若松市のデジタル防災アプリ(出典:ソフトバンクWebサイト)

都市OSを活用したデジタル通貨コインの提供

産官学連携の取り組みでは、首都圏などのICT関連企業が機能移転できる受け皿として、「スマートシティAiCT(アイクト)」内に最新のICTオフィス環境を整備。さらに、地元大学と連携した人材育成によって、若年層の地元定着など定住や交流人口の増加を図り、新たな人の流れと雇用の創出、地域活力の維持発展につなげようとしている。AiCTの入居企業が中心となった「AiCTコンソーシアム」には、ものづくりやヘルスケア、決済など16のワーキンググループがあり、首都圏や地元の企業・団体、大学、市の担当課などが直接話しあい、産官学で協力しあうことができる体制を作っている。

AiCTには、会津若松市に都市OS兼データ連携基盤「DCP(Digital Communication Platform)」を提供するアクセンチュアの拠点、「アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)」も入居。「DCP」は、政府が定めるスマートシティリファレンスアーキテクチャに準拠したクラウドサービスであり、「会津若松+」もこの都市OS上に構築されている。

会津若松市では約30種のデータが「DCP」に接続されており、25を超えるさまざまなスマートシティサービスを市民に提供。その1つである「地域課題解決型デジタル地域通貨」では、TISの「会津財布」とみずほ銀行の「ハウスコイン」サービスを組み合わせた「会津コイン」が提供されている。今後は食・農分野と連携し、生産者と需要家実需者の納品状況に基づいて、リアルタイム精算処理を進める「現金化リードタイムゼロ」を実現させるという。また、デジタル地域通貨によるキャッシュレスを普及させ、地域で購買データを利活用することで、地域全体の生産性向上を目指しているという。

(写真1)40以上が入居する会津若松市のICTオフィスビル「スマートシティAiCT」(出典:「ゆきみらい2023 in会津 実行委員会」Webサイト) イメージ
(写真1)40以上が入居する会津若松市のICTオフィスビル「スマートシティAiCT」
(出典:「ゆきみらい2023 in会津 実行委員会」Webサイト)

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