世界のスマートシティランキング

2021年7月19日

スマートシティランキング「IMD Smart City Index 2020」で、シンガポールが2年連続1位を獲得した。アジアでは、台北や香港が上位に入る一方、東京と大阪は、前年から大きく順位を落とした。IMDのランキングでは、スマートシティのどのような要素が高く評価されているのか、そして、日本のスマートシティの評価を上げるためには何が必要なのかを探った。

スマートシティランキングで、シンガポールが二年連続一位を獲得

スイスのビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)と、シンガポール工科デザイン大学が発表した2020年のスマートシティランキング「IMD Smart City Index 2020」で、シンガポールが1位となった。同ランキングが作成されるのはこれが2回目で、シンガポールは2019年に続き1位を獲得している。一方、東京や大阪は、2019年からそれぞれ前年の62、63位から、79、80位へと大きく順位を落とす結果となった。

シンガポール イメージ

「IMD Smart City Index 2020」は、都市のインフラや住環境、サービスにどの程度住民が満足しているか、そして、住民にテクノロジーを活用した多様なサービスが提供されているか、という2つの軸で評価が行われる。そしてこの2つの軸は、健康と安全、モビリティ、アクティビティ(文化的な活動の充実度など)、就業と教育の機会の保障、ガバナンスの5つの分野で評価される。モビリティであれば、渋滞の状況や公共交通の充実度といったインフラに対する評価と、カーシェアリングサービスやオンラインでのチケット購入、渋滞情報の手に入りやすさといった、住民が利用できる技術やサービスに対する評価を元に、ランキングが決定される仕組みだ。

ランキングに大きく影響した新型コロナ感染拡大防止策成功の可否

同ランキングは、住民の意見を元にランキングが決定されるため、多分に主観的な指標といえる。健康と安全の分野では、医療体制の充実度や、オンラインでの診察予約が容易かどうかといった質問もある。2019年と比較して、中国や欧米の都市の多くがランキングを落とした背景には、住民を対象としたアンケート調査が2020年の4月から5月にかけて実施されたことがあると見られる。逆に、新型コロナウイルスの感染拡大防止に成功した都市は、ランキングを上げる傾向にある。二年連続で一位となったシンガポールは、2021年6月時点で、新型コロナウイルスによる累積死者数が36人と、被害を抑え込むことに成功している。前年から順位を6つあげ2位となったヘルシンキがあるフィンランドも、EUで最も感染者数が少ない国だ。

東京、大阪の低評価は、コロナ対策よりもスマートシティへの充実化の遅れ

東京と大阪は、上述の通り、もともと高いとは言えないが、大きく順位を落とした。交通渋滞などの課題があることや、カーシェアリングの利用、学校でのIT教育、投票のデジタル化などの技術面での評価が低かったことが理由だ。住民への調査が、第1回目の緊急事態宣言の発令と重なったという事情はあるものの、コロナ禍による影響よりも、スマートシティを実現するための技術やサービスが充実していないことが大きい。

IMDが発表するデジタル競争力のランキングで27位となるなど、デジタル化に遅れをとっていた日本であるが、コロナ禍を機に状況は大きく変わりつつある。GIGAスクール構想による一人一台端末環境は、2020年度にほぼ実現した。2021年5月には、AIやビッグデータなど先端技術を活用した都市「スーパーシティ」構想を実現する改正国家戦略特区法が成立し、自動運転やキャッシュレス決済、ドローンの自動配送、遠隔診療といったサービスの実現に向けた動きが加速する。そして9月には、日本のデジタル化を推進するためにデジタル庁が創設される。

住民に評価されるテクノロジーによるスマートシティの実現が必須

東京都は、「スマート東京(東京版Society5.0)」構想を掲げ、先行実施エリアとして大手町エリアや竹芝、豊洲を採択した。大阪府・大阪市は、2025年の大阪・関西万博の会場で空飛ぶ車やドローンなどの活用を検討する。こうした取組が進んでいくことで、住民にテクノロジーを活用した多様なサービスが提供されていくだろう。

CASBEE(建築環境総合性能評価システム) イメージ

しかし、個人データの収集や顔認証技術の活用には、プライバシーの観点から不安を覚える市民も多い。IMDのランキングが評価しているのは、テクノロジーが導入されているかどうかではなく、そのテクノロジーが住民に評価されているかどうかであることに注意が必要だ。住民が重視する課題に対して、テクノロジーを活用したサービスを提供していくこと、そして、テクノロジーに対する不安感を払拭し、安心して利用できるサービスにしていくことが、スマートシティの実現の鍵となる。

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