東北大学との連携でスーパーシティを目指す仙台市

2022年07月08日NEW
東北大学との連携でスーパーシティを目指す仙台市 イメージ
#スマートシティ#スーパーシティ#特区#ドローン#AI#IoT
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#スマートシティ#スーパーシティ#特区#ドローン#AI#IoT
話し手
  • 仙台市 まちづくり政策局 政策企画部 プロジェクト推進課
    課長
  • 谷口 尚史氏
  • 仙台市 まちづくり政策局 政策企画部 プロジェクト推進課
    空港港湾担当課長
  • 寺牛 慎貴氏

東日本大震災からの復興に努めてきた仙台市では、この10年間で地域社会と科学技術が手を取り合い、さまざまな社会課題の解決につながる実証に取り組んできた。それらの取り組みを社会実装するため、仙台市は東北大学と連携した「仙台市×東北大学 スーパーシティ構想」を打ち出した。仙台市はスーパーシティを目指すために、どのような取り組みをしているのか。仙台市まちづくり政策局 政策企画部の谷口尚史氏と寺牛慎貴氏に伺った。

東北大学キャンパスを未来都市に見立て仮想市民と連携

 日本はさまざまな分野において、規制に縛られている。社会課題の解決に向けてすばらしいアイデアが生まれても、従来から残っている規制の壁に拒まれて実現できないことも多い。そこで、内閣府は、第四次産業革命を体現する世界最先端都市を先行実現する「スーパーシティ構想」を立ち上げ、2020年に国家戦略特別区域法を改正した。その構想を実現するために、限定されたエリアを「スーパーシティ型国家戦略特区」に指定し、大胆な規制緩和を行いながら複数分野のデータ連携や先端サービスを提供して未来の生活を先行して実現しようしている(図1)。

(図1)「スーパーシティ構想」で想定されているデータ連携と規制・制度改革 イメージ
(図1)「スーパーシティ構想」で想定されているデータ連携と規制・制度改革

 スーパーシティ構想には、全国31の地⽅公共団体からさまざまな提案が集まっている。その1つとして仙台市が提案するのが、「仙台市×東北大学 スーパーシティ構想」だ。東京ドーム約71個分に相当する約330万平米の東北大学のキャンパスを未来都市と仮定し、自由な発想をもった仮想住民が社会変革に挑戦する場を特区として提供する。

 仮想市民の住民像としては、学生などの若者や国籍や文化の異なる多様な留学生、知識集約型社会を担う専門家、幅広い産業分野のイノベーション人材、さらには大学がもつさまざまな資産を利用する市民や社会連携事業に参画するサポーターなど、多彩な人材を想定。そういった仮想市民と大学、民間事業者、行政などが協働することで、「人と社会のつながり」「パーソナルヘルスケア」「ロボットとの共生」「エネルギー自立分散」「マイクロモビリティ」といった5つのサービス領域において、自由な発想で未来志向の先端サービスが展開される(表)。

(表)「仙台市×東北大学 スーパーシティ構想」で実装を目指すサービス領域(仙台市の公開資料より作成) イメージ
(表)「仙台市×東北大学 スーパーシティ構想」で実装を目指すサービス領域
(仙台市の公開資料より作成)

東北大学のキャンパスで提供されるサービスへの取り組み

 仙台市はこうした5つのサービス領域に対して、東北大学のキャンパスをフィールドとしてどう取り組んでいくのか(図2)。仙台市まちづくり政策局政策企画部プロジェクト推進課課長の谷口尚史氏は、「人と社会のつながり」のサービス領域に関して、「仙台市は東日本大震災の後に社会起業家の方々が増えました。そうした方々の活動は、社会的な意義が大きい一方で、あまり認知されていなかったりします。そうした方々の活動に対してデジタルを活用して簡易的な認証を行い、可視化していくような取り組みを考えています」と説明する。

(図2)「仙台市×東北大学 スーパーシティ構想」で未来都市と仮定される東北大学のキャンパス(仙台市の公開資料より引用) イメージ
(図2)「仙台市×東北大学 スーパーシティ構想」で未来都市と仮定される東北大学のキャンパス
(仙台市の公開資料より引用)

 また、東北大学のキャンパスにはゲノムの先端的な研究を行う研究機関「東北メディカルメガバンク機構」がある。「パーソナルヘルスケア」のサービス領域ではそういった研究機関とも連携して、ゲノム関係のヘルスケアサービスを提供する構想もあるという。「ロボットとの共生」のサービス領域に関しても、「ロボットは今後も日常のさまざまな分野で増えていくと思いますが、そういう見立てのもとで、多種多様なロボットサービスを大学の中で展開できないかと考えています」と谷口氏は語る。

 このほか、「エネルギー自立分散」のサービス領域では、廃棄物からエネルギーを生み出す仕組みを検討しているほか、「マイクロモビリティ」についても、谷口氏は「キャンパス内での移動に、AIを活用したオンデマンドによるEVバスの運行やシェア型の電動自転車、電動キックボードなどの活用を想定しています」と説明した。

 こうしたさまざまな取り組みを行う事業者に関しては、2021年の1月から2月にかけて行った公募によって、全部で63者が選定されている。

スマートシティの実現に向けた仙台市の取り組み

 一方で仙台市は、「仙台市×東北大学 スーパーシティ構想」が提案される前から、スマートシティを見据えた先端のテクノロジーを活用したまちづくりに取り組んできた。2019年11月には民間企業との連携窓口として、「クロス・センダイ・ラボ」をオープン。ラボでは大きく、「AIおよびIoT」、「自動走行」、「ドローン」という3つの分野に取り組んできたが、これらの技術を防災減災分野に活用する取り組みも進められている。

 仙台市まちづくり政策局政策企画部プロジェクト推進課空港港湾担当課長の寺牛慎貴氏は、「例えばドローンを活用した橋梁の点検や、雪山での遭難者を捜索する実証実験なども行っています」と「クロス・センダイ・ラボ」の取り組みを紹介する(写真1)。

(写真1)2022年3月に行われた、ドローンによる遭難者捜索支援の実証実験の様子。地震を感知すると自動で小型ドローンが飛び立ち(左)、上空から山あいの様子を撮影して情報収集を行い、赤外線カメラを搭載した大型ドローンで遭難者の居場所を特定する(右)(仙台特区のWebページより引用) イメージ
(写真1)2022年3月に行われた、ドローンによる遭難者捜索支援の実証実験の様子。地震を感知すると自動で小型ドローンが飛び立ち(左)、上空から山あいの様子を撮影して情報収集を行い、赤外線カメラを搭載した大型ドローンで遭難者の居場所を特定する(右)(仙台特区のWebページより引用)

 防災減災でのドローンの活用としては、他にも地震が起きたらドローンが自動で飛び上がり、沿岸にいる人に「津波から逃げてください」と声で警告する「津波避難広報ドローン事業」などの実証実験が行われ、令和4年度中の実装に向けて準備が進められている。(図3)。

(図3)2016年11月から取り組んでいる「津波避難広報ドローン事業」の運用イメージ(左)と飛行ルート(右)(仙台特区のWebページより引用) イメージ
(図3)2016年11月から取り組んでいる「津波避難広報ドローン事業」の運用イメージ(左)と飛行ルート(右)(仙台特区のWebページより引用)

 IoTセンサーの活用による実証実験では、仙台市がNTTドコモと地下鉄南北線における「レール温度遠隔管理システム」で連携協定を締結した。地下鉄が地上を走る区間では、夏にレールが熱せられると伸びたり曲がったりして脱線事故が起きる危険性がある。従来は、仙台市交通局の職員が現場に出向き、実際にレールの温度を測って点検していた。その作業をIoTセンサーに置き換え、遠隔地からレールの温度を観測できる実証実験を2020年と2021年の夏に実施したが、現在はすでに実装されているという(図4)。

(図4)NTTドコモとの連携による「IoTセンサーを活用したレール温度遠隔管理システム」の実証実験(NTTドコモの発表資料より引用) イメージ
(図4)NTTドコモとの連携による「IoTセンサーを活用したレール温度遠隔管理システム」の実証実験
(NTTドコモの発表資料より引用)

 さらに、オンライン診療にも力を入れる仙台市では、2020年7月から2021年3月まで仙台市の医師会や薬剤師会と共同で実証実験を行っている(図5)。当時は新型コロナウイルス感染症が広がり始めた頃だったので、まだ全国的にもオンライン診療を積極的に進めようというほどの雰囲気ではなかったという。「とはいえ、もともと東北地方は過疎地域も多く、今後は医師不足が深刻になってくるだろうと認識していました。そこで、仙台市医師会および仙台市薬剤師会と共に、オンライン診療とオンライン服薬指導を一気通貫で行う実証実験を行いました。この時も、国家戦略特区を活用して国に規制改革を求めることも念頭に置きながら、オンライン診療・オンライン服薬指導を行う上での課題の洗い出しを行いました。」(谷口氏)。

(図5)仙台市が目指す診療と服薬を一気通貫させたオンライン医療のイメージ(仙台特区のWebページより引用) イメージ
(図5)仙台市が目指す診療と服薬を一気通貫させたオンライン医療のイメージ
(仙台特区のWebページより引用)

 「クロス・センダイ・ラボ」では、こうした近未来技術の実証実験を国家戦略特区として支援する「実証フィールド支援事業」も実施されている。「国との協働で、先端的な技術に関わる事業者からの相談窓口を設置しています」(谷口氏)。

仙台市 まちづくり政策局 政策企画部 プロジェクト推進課 課長 谷口尚史氏(右)、同課 空港港湾担当課長 寺牛慎貴氏(左) イメージ
仙台市 まちづくり政策局 政策企画部 
プロジェクト推進課 課長 谷口尚史氏(右)、同課 空港港湾担当課長 寺牛慎貴氏(左)

防災減災に力を入れたスマートシティの実現を推進

 「仙台市×東北大学 スーパーシティ構想」を進めていく仙台市は、スマートシティ化に関しては具体的にいつまでに何をするかまでは決めていないが、谷口氏は「スマートシティとは、そもそもまちづくりのあり方そのものだと思っているので、市民の方々により便利な生活をしていただけるように、少しずつ新しい技術を取り込んでいきたいと考えています」と語った。

 寺牛氏も今後の方向性について、「東日本大震災での教訓から、仙台市では防災減災への関心やニーズも非常に高くなっています。地域企業も防災減災に焦点を当てた新技術に取り組むケースが多いので、スマートシティに向けた取り組みについても、そういった分野に重点を置くことが重要であると考えています」と語った。

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