ドローン物流は安心・安全なドローン運用から

2022年12月19日NEW
ドローン物流は安心・安全なドローン運用から イメージ
#ドローン#物流#配送
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#ドローン#物流#配送
話し手
  • 一般社団法人セキュアドローン協議会
    会長
  • 春原 久德

もともとは軍事利用を目的に開発されたドローン。2010年にスマートフォンでも操縦ができ、リアルタイムに空撮映像が見られるようになった一般消費者向けのドローンが発売されて以来、娯楽やホビーとしても楽しまれてきた。そして、近年注目されているのが、荷物の搬送や空中からの監視、点検、測量など、さまざまな産業分野におけるドローンのビジネス活用だ。ドローンをビジネス活用するなら、その運用にはさまざまなルールが必要になる。今回は、ドローンの安全な運行を支援するセキュリティガイドラインを作成した、セキュアドローン協議会の春原久德氏に、ドローンの安全な運用と物流分野でのドローン活用の展望について伺った。

日本のドローンのビジネス活用は農業分野から

セキュアドローン協議会が立ち上がったのは、2015年6月。その頃は、一般向けに浸透してきたドローンが、どこでどんな風に使われるのかがまだ不明確だった。協議会を立ち上げた当時のことを、春原氏は「その段階で私たちが見据えていたドローンの用途は、ものを運ぶというよりもドローンを使ってデータを集めるようになるということでした。そこで、当時ドローンに興味を持っていたIT関連企業の人たちが集まり、ドローンで集められたデータのセキュリティをどう守るのかを考える、協議会を作ろうということになりました」と振り返る。

(写真1)セキュアドローン協議会 会長の春原久德氏 イメージ
(写真1)セキュアドローン協議会 会長の春原久德氏

そうやって、セキュアドローン協議会は日本でドローンを安心・安全にビジネス活用するために、パソコンやスマートフォンを活用したシステム構築で培かってきた、M to M認証(機械同士の認証)などの技術を活用することを目的に活動を始めた。当初、力を入れたのが、農地や農作物の状態を観察し、きめ細かく制御して次年度の計画を立てるという、精密農業分野へのドローン活用の普及だ。「それまで日本では、農業の分野でデータを取得して、何かに活用するような発想はありませんでした。一方、欧米ではドローンを使って、農業分野で取得したデータを活用する動きが本格化していました。そこで、どんな風にデータを取得して、どう活用すると、生産者や食品加工会社などの役に立つのかを研究しました」(春原氏)。

(図1)ドローンによる圃場の空撮を活用した精密農業の例(資料提供:ドローン・ジャパン) イメージ
(図1)ドローンによる圃場の空撮を活用した精密農業の例
(資料提供:ドローン・ジャパン)

ドローンのセキュリティガイドラインを作成

その後、2018年くらいから徐々にドローンのビジネスでの活用形態が見え始め、一部実用化されてきた。そこで、セキュアドローン協議会では、ドローンのビジネス活用でもセキュリティが重要になってくると考え、2020年にドローンのセキュリティガイドラインの第1版を作成した。ドローンのビジネス活用が進むと、墜落などの事件・事故の増大が危惧されるが、産業用ドローンを安全に運用するには、物理的な安全性だけではなく、取得したデータの保護や安全な通信手段の確立など、さまざま面からのセキュリティ対策が必要になる。こうした背景から、ドローンの非耐空性に関わるサイバーセキュリティ、すなわち、測量や設備点検、物流などの産業利用分野と、警備や災害対応など人命や安全に影響する分野におけるガイドラインは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と経済産業省によって作成された。

一方、セキュアドローン協議会が策定した「ドローンセキュリティガイド」は、ドローンの耐空性に関わるセキュリティ、すなわち、機体の故障や悪意のある第三者による乗っ取りなどから守るガイドラインだ。「会員企業各社の先端ドローン技術やセキュリティ技術、IoT技術といったICT関連技術や経験、知見を生かし、ドローンの安心・安全な運用環境を確立するための指標を目指しています。毎年更新しているので現在第3版になりましたが、どんどん内容が具体的になってきました」(春原氏)。

例えば、今後ドローンの社会実装が進んでいく中では、耐空性のセキュリティに関して4つの状態を考える必要があるという。1番目は「正常なドローンを正規の人が操縦している状態」、2番目は「ドローンに異常があるが正規の人が操縦している状態」、3番目が「正常なドローンだけれど、悪意ある第三者が操縦している状態」、4番目が「不正に作られたドローンを、悪意ある第三者が操縦している状態」。

2番目のドローンのトラブルは、電波やバッテリー、モーター、GPS、各種センサーなどが正常に動作するよ うに二重化したり、異常が起きた場合の対応を決めておくことでリスクを最小化できる。ところが、3番目のような悪意ある第三者によるドローンの乗っ取りに対応することは難しい。「そういったドローンが飛んできても、見ただけでは判断がつきにくいからです。結局、耐空性のセキュリティは接続が許可されたユーザーのパソコン自体が乗っ取られてしまうという、ネットワークのサイバーセキュリティと同じ対策が必要になってきます」(春原氏)。

(図2)耐空性のセキュリティの4つの状態(出典:「ドローンセキュリティガイド 第3版」) イメージ
(図2)耐空性のセキュリティの4つの状態
(出典:「ドローンセキュリティガイド 第3版」)

海外で成功しているドローン配送は医薬品のデリバリー

日本でも有人地帯における補助者無しの目視外飛行として、レベル4でのドローン運用が解禁された。こうしたドローンの運用について春原氏は、技術的には可能だが、耐空性のセキュリティの3や4の状態を防ぐ対策が整備されない限り、現時点では有人地帯でのドローン物流は危険が伴うと語る。「そう考えると、やはり現状ではレベル3のドローン物流として、山間部や離島などにものを運ぶことがもっとも合理性があると見ています。とはいえ、そういう地域は元々人が少ないから流通網が成り立たないわけです。そういった地域にドローンを投入しても、1回当たりの輸送量が非常に少ないわけで、民間企業のコスト計算からすると高コストになり、国や自治体の支援に頼らざるをえません」(春原氏)。

また、現在全国各地でドローン物流の実証実験が行われているが、実験で使われている機体が毎日の飛行に耐えられるのかどうかも考える必要があるという。「今回レベル4のドローン運用が解禁されるにあたって、新たに自動車の車検にあたる、ドローンの機体認証という制度が取り入れられます。これは、山間部でドローン配送を行うレベル3での運用でも必要になるのですが、その認証を通すために耐久性の高い部品に変えたり保安部品などを付けていくことでもコストがかさむので、その負担も考えなければならないのです」(春原氏)。

一方で春原氏は、海外でドローンを活用した配送事業の成功例として、東アフリカの内陸国ルワンダに拠点を持つ、米国のZiplineが提供する最先端の医療サービスに注目している。このサービスでは、病院から依頼がくるとスタッフが医薬品などを専用のケースに入れて飛行場に運び、今度は飛行場のスタッフが固定翼(飛行機型)のドローンを専用の発射台から病院に向けて射出する。ドローンが病院の上空に到達するとパラシュートでケースを病院の近くに落とし、そのままUターンして飛行場に戻ってくる。最終的に、ドローンは特殊なフックを使って直接キャッチされる。サービスの利用において、病院や患者側はコストを負担する必要はなく、ルワンダ政府がZiplineに対して利用料を支払う。

「このビジネスモデルがうまくいった最大の理由は、ルワンダ政府としても新たに山村部に道路を作るよりも、ドローンで飛ばす方が安いと判断したことです。他にも、着陸地点にドローンの専門家がいらないこともサービスを継続させる上での大きなポイントになります」(春原氏)。

Ziplineは日本でも、豊田通商の出資によって関連会社を設立し、長崎県の離島である五島列島で2022年5月から固定翼ドローンによる医療用医薬品の配送を始めている。


(動画1)長崎県五島市で開始された医療用医薬品のドローン配送事業
(出典:そらいいなのYoutube)

ドローン物流の課題解決には横串の連携が必要

こうしたことからも、春原氏はドローン物流に関しては、価値が高くて軽い医薬品の配送が最もリアリティがあると語る。「新型コロナウイルス感染症の影響で、遠隔診療についてはある程度受け入れられそうです。とはいえ、山間部では診療時に処方された薬をすぐに手に入れることが難しいかもしれません。日本で医薬品のドローン配送を行うには、さまざまな法改正が必要になると思いますが、調剤なども手がけているチェーンのドラッグストアにとっては、新しいビジネスチャンスになるかもしれません」(春原氏)。

一方で春原氏は、物流の課題解決に関してはドローン活用だけの議論よりも、自動運転車や水上の自動運転など、さまざまな自律移動の手段を連携させるシステムの構築が重要だと考えている。「そうして作られた無人の物流システムならば、海外にも事業展開できるのではと思っています。そもそも、料理の出前なんて人手が足りなくて無理だと思われていたのに、Uber Eatsのようなシステムが導入されたことで人手の問題が解決されました。地域住民が物流で困っている内容はそんなに変わらないと思うので、もっと自治体同士が横串で地域の課題に取り組んでいけるような場づくりも必要になると思っています」(春原氏)。

(写真2)セキュアドローン協議会では親子を対象としたドローン教室を全国で開催し、小学生の頃からドローンに興味をもってもらい将来の人材育成に役立てようとする啓発活動も進めている(写真提供:セキュアドローン協議会) イメージ
(写真2)セキュアドローン協議会では親子を対象としたドローン教室を全国で開催し、小学生の頃からドローンに興味をもってもらい将来の人材育成に役立てようとする啓発活動も進めている
(写真提供:セキュアドローン協議会)

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