海外で広がるドローン配送サービス

2022年12月5日

日本では国や自治体などの主導によって、山間部や離島などに住む買い物困難者を支援するために活用されるイメージが強いドローン配送。海外では、企業が独自にシステムを開発し、自社の顧客サービスの一環としてドローン配送を活用しようとする例もみられる。世界市場においては、今後ドローン配送はどのような分野で期待され、実際に導入されているのだろうか。

世界のドローン物流・輸送の市場規模は2030年までに178億ドル超えに

市場調査企業のグルーバルインフォメーションが2022年8月に発表した市場調査では、世界におけるドローン物流・輸送の市場は、2022年から2030年まで年平均成長率55.1%で成長するという見通しが立てられている。これによって、市場規模予測は2022年の5億3,400万ドルから、2030年までに178億8,100万ドルに達する。その理由として、ドローンへの民間投資の増加やeコマースの販売増加、新型コロナウイルス感染症のパンデミック後の非接触型配送の需要などが市場成長を後押しするという。

(図1)グローバルインフォメーションが発表した世界におけるドローン物流・輸送の市場予測(出典:グローバルインフォメーションのホームページより) イメージ
(図1)グローバルインフォメーションが発表した世界におけるドローン物流・輸送の市場予測
(出典:グローバルインフォメーションのホームページより)

物流・輸送分野でのドローン配送は今後大きなトレンドになると言えそうだが、今回の調査でドローンによる空輸が本当に役に立つと考えられる分野の1つが、陸から船、船から船への荷物配送だ。こうした分野においては、海上でも人手を介さないドローンの自律飛行による荷物配送が、人件費などのコスト削減につながるとみられている。

また、ドローン物流・輸送の市場規模を飛行距離別で比較した場合、近距離型が大きなシェアを占めるとみている。一方で、より長い距離を飛行できる配送用ドローンは、荷物を配達するサービスプロバイダーの全体的な運用コストの削減に役立つ。

そして、アジア太平洋地域のドローン物流・輸送市場においては、インドやオーストラリア、中国における大規模な投資と自動化、グローバル化の高まりが成長に拍車をかけているという。特にこの地域では、配送だけでなく不動産や農業の分野で、空からの点検で利用されるドローンの活用が進んでいるようだ。

ドローンの配送エリアを拡大するウォルマート

米国小売り大手のウォルマートは2022年5月24日、2021年から始めたドローンによる宅配サービスの対象地域を、フロリダ州やテキサス州などの全米6州の400万世帯に拡大すると発表した。2022年内に34ヵ所のドローン配送拠点を設置することによって、年間100万個分の荷物をドローンで配達する目標を掲げ、ラストワンマイルの配送を強化する。

ドローンの運航はスタートアップ企業であるドローンアップが手がけ、米連邦航空局(FAA)のガイドラインに沿って認定を受けたドローンアップのパイロットがドローンの飛行を監視する。配達圏内に住む顧客が、ウェブサイトから食料品や医薬品など数万点の対象商品を注文すると、配送拠点でドローンアップが梱包した商品をドローンに積み込み、最短30分で顧客の自宅に届ける仕組みだ。

(写真1)ウォルマートが提供するドローン配送サービス(出典:ウォマートの発表資料より) イメージ
(写真1)ウォルマートが提供するドローン配送サービス
(出典:ウォマートの発表資料より)

アマゾンが年内にカリフォルニア州でドローン配送サービスを開始

アマゾンは2022年6月13日、2022年後半にはカリフォルニア州ロックフォードでドローンによる配送サービス「Amazon Prime Air」を開始すると発表。アマゾンはこのサービスのために、目視なしでの操作を可能にし、他の航空機や人、ペット、および障害物を回避しながら、ドローンをより遠くまで飛ばす飛行システムを開発した。

ロックフォードの顧客が「Amazon Prime Air」の対象商品を注文すると、注文者に到着時間が通達される。その後、商品を搭載したドローンが指定された配達場所まで飛行し、顧客の裏庭に到着すると安全な高さでホバリングして、梱包されたパッケージを解放した後戻っていくという。

(写真2)アマゾンが年内のサービス開始を予定している「Amazon Prime Air」の配送用ドローン(出典:アマゾンの発表資料より) イメージ
(写真2)アマゾンが年内のサービス開始を予定している「Amazon Prime Air」の配送用ドローン
(出典:アマゾンの発表資料より)

グーグルのグループ会社がドローン配送を開始

グーグルの親会社アルファベットが運営するドローン配送会社のウィング・アビエーションは、2022年4月より大都市圏では同社初となるドローン配送の商業サービスを、テキサス州ダラス・フォートワース都市圏で開始した。ウィング・アビエーションは、これまでに米国やオーストラリア、欧州の一部地域でサービス提供を開始しており、合計20万件以上の配達を達成しているという。

また、ウィング・アビエーションは薬局チェーン大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスと提携しており、顧客はドローン配送アプリを利用して市販薬や生活必需品など、およそ100品目の中から注文できる。当初の対象地域は、ダラス市内から北に約30マイル(約48キロ)の距離に位置するフリスコ市・リトルエルム地区で、注文から配達まで通常10分以内で商品が届けられる。

(写真3)ウィング・アビエーションの配送用ドローン(出典:ウィング・アビエーションの発表資料より) イメージ
(写真3)ウィング・アビエーションの配送用ドローン
(出典:ウィング・アビエーションの発表資料より)

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