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「ENEOS Charge Plus」でEV事業を強化するENEOSの強みと課題

2023年6月26日
話し手
  • ENEOS株式会社
    EV事業推進部 EV事業企画グループ グループマネージャー
  • 西山 拓雄

ガソリンや灯油などを販売する ENEOS は、2021年7月、「EV事業推進部」を新たに設置し、EV(Electric Vehicle:電気自動車)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle:外部電源からの充電が可能なエンジンとモーターのハイブリッド車)といった電動車両向け事業を加速していくことを発表した。

ENEOS EV事業推進部 EV事業企画グループ グループマネージャー 西山拓雄氏は、EV事業推進部を設置した背景を、「ヨーロッパや中国は完全にEVシフトになっており、ガソリンの需要が減っていく中、EVが広く普及する社会を見据え、ENEOSとして今の段階からEV関連事業も一緒に推進していくというのが、EV事業推進部が発足した理由になります。近年、EV車両や車載バッテリーの性能も飛躍的に向上しており、CO2や排気ガスを出さないクリーンなモビリティであることがEVの大きなメリットで、今後、EVが飛躍的に普及する可能性は十分にあると思っています」と説明した。

ENEOS EV事業推進部 EV事業企画グループ グループマネージャー 西山拓雄氏
ENEOS EV事業推進部 EV事業企画グループ グループマネージャー 西山拓雄氏

そして、EV事業推進部が発足して約1年後の2022年6月に、同社はNECからEV充電サービスの事業譲渡の契約を締結し、EV充電器約6,100基の運営を承継した。また2030年までにEV急速充電器1万基の設置を目標に掲げている。

「2030年のEV急速充電器の政府目標が3万基ですので、その1/3程度のシェアを取っていきたいとい考えています」(西山氏)

普通充電器と急速充電器の違いは出力で、現在、普通充電器は3kwのものが主流で、今後は6kwの充電器も普及していくという。これに対して、急速充電器は出力が10kw以上のものを指し、ENEOSでは50kwの充電器を展開している。

この急速充電器は同社が新たに開発したもので、昨年の11月から設置を開始し、「ENEOS Charge Plus」というサービスブランドを新たに立ち上げ、設置を拡大している。

ENEOSの急速充電器(出典:ENEOS)
ENEOSの急速充電器
(出典:ENEOS)

「現在は経路充電の急速充電器が中心になりますが、マンションの基礎充電やショッピングセンターの目的地充電など、SS(サービスステーションの略でガソリンスタンドのこと)以外にも、どんどん充電器を設置していきたいと思っています。今後は、幅広くEVへの充電サービスを『ENEOS Charge Plus』という総称で展開していきます」(西山氏)

基礎充電とは、自宅や法人の事業所など、普段、車を置いておく駐車スペースでの充電で、目的地充電は、スーパーやショッピングセンター、レジャー施設など、目的地で充電を行うこと。そして経路充電は、目的地に向かう途中で充電することで、高速道路のサービスエリアやガソリンスタンド、コンビニなどが想定される。

経路充電では、短時間での充電が求められるため、急速充電器が必要とされ、基礎充電であれば、比較的時間をかけての充電が許容されるため普通充電器が求められる。ちなみに、ENEOSが展開する50kwの急速充電器の場合、充電時間は30分程度だという。

「この30分間で何ができるかを考えると、車の洗車後の拭き上げやメンテナンスなどに加え、最近ではコーヒーショップやコンビニを併設しているSSも増えてきており、われわれは充電時間をこういったものを利用してもらえることで、新しいビジネスチャンスにつながればと考えています」(西山氏)

ENEOSでは、2030年のEV急速充電器の設置目標1万基のうち、半分程度をSSに、残り半分をSS以外の施設に設置する計画だという。

同社の急速充電器の大きな特徴は、10.1インチ(1,280×800画素)の大きなディスプレイを使いUIをわかりやすくした点や、「ENEOS Charge Plus充電会員カード」のほか、電子マネーや各種クレジットカードなど、さまざまな決済手段が使える点だという。

同社はキーホルダー状の非接触型キャッシュレス決済ツール「EneKey」をこれまで展開しており、「EneKey」はクレジットカードに紐づけられているため、現金やクレジットカードを持っていかなくても給油が可能だ。モバイルアプリ版の「モバイルEneKey」もあり、ENEOSサービスステーションアプリに紐づけて管理でき、利用時にQRコードで会員情報を読み取らせると決済できる仕組みになっている。「EneKey」と「モバイルEneKey」を合わせると、すでに900万人程度の会員がおり、2023年2月からENEOS Charge Plus充電器でも当該決済ツールの利用を開始した。

「EneKey」(出典:ENEOS)
「EneKey」
(出典:ENEOS)
ENEOSサービスステーションアプリ(出典:ENEOS)
ENEOSサービスステーションアプリ
(出典:ENEOS)

EV用の充電アプリも現在開発中で、お客様にとって最良な決済ツールを引き続き検討する。

また、「ENEOS Charge Plus」では基本料金をなくし、従量料金のみの課金である点も特徴だ。

「他社で展開している充電料金は、多くが基本料金を取った形のサービスになっています。充電しない月にも基本料金を払うことに抵抗がある人もおり、現在のガソリンと同じ従量料金のみの仕組みを作ることは、お客様に対する大きなメリットだと思っています」(西山氏)

「ENEOS Charge Plus」の他社に対する優位性を聞くと西山氏は、好立地のSSに充電器を設置できる点と「ENEOSでんき」、「ENEOSカーリース」など、同社内にEVに関連するサービスを持っている点だと語った。

「家庭でも、外出先でも充電でき、経路充電と基礎充電のセットで販売ができる点は大きな強みだと考えています。最近はリースで車を持つというスタイルも増えてきていますので、われわれの『ENEOSカーリース』とともに一体のサービスを提供できるという点は、一つ大きな訴求ポイントになると考えています」(西山氏)

また、同社は今年の4月、法人向けのサービスとして「ENEOS Charge Plus法人充電会員サービス」も提供を開始した。このサービスは、業務車両の充電を法人単位で一括請求・管理することが可能となる。

また、実質再エネ100%の充電を希望の法人には、利用実績に基づき非化石証書を仲介のうえ、実質再エネ充電証明書を発行する。実質再エネ充電サービスは、法人充電会員カードに紐づく充電量を実質再エネ100%とする充電サービス。

「いろいろな場所で充電したものを再エネとしてカウントするのは、独自に開発した機能で、法人のお客様にニーズがあると考え提供したものになります。」(西山氏)

実質再エネ充電サービス(出典:ENEOS)
実質再エネ充電サービス
(出典:ENEOS)

一方、現在の充電サービスの課題は、充電器の数が足りないという点だ。そのため、同社は充電が利用可能なスポットを検索できるサービスを昨年11月から提供し、利便性の向上を図っている。

スポットを検索できるサービス(出典:ENEOS)
スポットを検索できるサービス
(出典:ENEOS)

また、充電器の最適な設置方法も今後、検討していく必要があるという。

滞在時間の長さや移動距離によって、求められる充電器のニーズが異なる。急速充電器は設置コストが普通充電器に比べ高くなるため、採算性も考慮しながら、経路充電、目的地充電を組合わせながら、どの出力の充電器を何台、何処に設置していくのが最適なのかを今後探っていく必要があるという。

そんな中、同社はマルチプラグ、大容量急速充電器の開発を進めており、2024年度以降、提供していく予定だという。

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