ゼロカーボンシティ宣言をした自治体がEV充電インフラを導入

2023年6月12日

ゼロカーボンシティは再生可能エネルギーによって稼働され、温室効果ガス(二酸化炭素)の排出を抑えることで地球に環境被害を及ぼさない都市だ。日本では、2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指すと首長が公表した地方自治体が、続々とゼロカーボンシティ宣言を表明している。温室効果ガス排出量の削減にはEV(電気自動車)の普及が欠かせないため、ゼロカーボンシティ宣言を表明した自治体ではEV充電インフラの導入が進みそうだ。

市民が利用できるEV充電インフラを公共施設に設置

ゼロカーボンシティを宣言した自治体は、2023年3月31日時点で934(46都道府県、531市、21特別区、290町、46村)ある。こうした自治体の1つ交野市は大阪・京都・奈良の中心に位置し、交野山や天野川などの豊かな自然環境を生かして、現在も水道水の8割に地下水を利用している田園都市だ。交野市では今後も持続可能で豊かな環境を次世代へつなぐために、2023年3月にゼロカーボンシティを宣言したが、脱炭素社会の実現に向けては自動車の電動化も必須であるため、市民が利用できるEV充電インフラを順次公共施設に導入していくと発表した。

(図1)大阪・京都・奈良の中心に位置する交野市(出典:交野市のホームページより)
(図1)大阪・京都・奈良の中心に位置する交野市
(出典:交野市のホームページより)

充電器の設置場所は市役所本庁の他、青年の家、保健福祉総合センター、総合体育施設などの公共施設で、計100基の導入を予定している。各施設の設置数などを調整した後、夏頃から工事に入る計画だ。交野市が導入を決めたTerra Motors製のEV充電インフラ「Terra Charge」は、コンセントタイプの3キロワット普通充電器で、EVの場合1時間の充電で約20キロの走行が可能。充電利用料は1時間200円で、利用者は同社のスマートフォンアプリを使って充電や支払いの手続きを行う。

力が入る普通充電器の充足

今回の発表で公共施設に導入されたのはいずれも普通充電器だが、EV充電インフラは目的や用途などによって、低い電圧で時間をかけてゆっくり充電する普通充電器と、高い電圧をかけて短時間で充電する急速充電器を使い分けながら普及させていく必要がある。急速充電は普通充電に比べてバッテリーへの負担が大きいため、通常は普通充電器を使った充電が推奨されている。

また、EV充電は利用シーン別に、「基礎充電」「経路充電」「目的地充電」の3つに分類される。「基礎充電」は自宅や事業所の駐車場など、EVが普段から滞在している場所で車を使わない時間帯にゆっくり行う充電で、普通充電器が適している。また、「経路充電」は移動中にガソリンスタンドや自動車ディーラーなどに立ち寄って短時間で行う充電で、急速充電器が適している。そして、「目的地充電」は公共施設や大型商業施設などを利用している間に行う充電だが、用途に応じて普通充電器と急速充電器の併設が求められる。

(図2)充電インフラにはシーンや用途に応じた充電方式が求められる(出典:経済産業省「充電インフラの普及に向けた取組について」より抜粋)
(図2)充電インフラにはシーンや用途に応じた充電方式が求められる
(出典:経済産業省「充電インフラの普及に向けた取組について」より抜粋)

政府は2021年6月に改定された「グリーン成長戦略(自動車・充電インフラ)」において、2050年の自動車のライフサイクル全体でのカーボンニュートラル化を目指すとともに、新たなエネルギー基盤としての蓄電池産業の競争力強化を図ることを宣言。EV充電インフラについては、2023年5月18日時点で急速充電器が9,666基、普通充電器が23,117基と約33,000基(GoGoEVのホームページより)が設置されているが、2030年までに急速充電器を3万基、普通充電器を12万基と計15万基の設置を目指すなど、特に普通充電器の設置に力を入れようとしている。

「目的地充電」の充実でビジネスモデルが変わる

一方で、急速充電器と普通充電器の併設が求められる「目的地充電」の充実は、商業施設や宿泊施設のビジネスモデルにも大きな影響を与えそうだ。今後EVの普及が加速すれば、施設内で充電できることで来客者の増加が期待できる。旅行や買い物・レジャーなどの目的地を決める際に、「EV充電インフラが整っているかどうか」が1つの基準になるだろう。

また、来客したドライバーが普通充電器を使ってEVを充電している間は、目的の買い物などを済ませたあとも、充電が完了するまで施設に滞在している。これによって滞在時間が増加するので、カフェを利用したり雑貨を購入するなどで購買額が伸びることも考えられる。

なお、EV充電大手、エネチェンジも、2021年11月にEV充電事業を開始し、2027年までに最大300億円を投じて、国内にEV普通充電器を3万基設置する目標を掲げて事業を推進しているという。3月には、エネチェンジが、福岡県の北九州市やみやま市、神奈川県の横須賀市が管理運営する公共施設に6kWの普通充電器を設置したと発表。EV充電設備の設置には政府の補助金制度「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」を活用できるほか、同社の設置ゼロ円キャンペーンの効果もあって導入が加速し、既に同社は、3000台を受注した。今後も全国の自治体で、EV充電インフラの導入が進んでいきそうだ。

さらに、今後EVのバッテリー性能が向上し、一度の充電でより長い距離を走れるようになったら、自宅と目的地で充電するだけですむので、ガソリンスタンドが置き換わった充電スタンドなどの施設による回数も減ってくるかもしれない。こうした変化が、さまざまな分野で新しいビジネスチャンスを生み出すことになりそうだ。

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