カーボンニュートラルに貢献するBEMS

2021年6月28日

昨年10月、日本政府は、2050年にカーボンニュートラルを目指す方針を示した。それを受けて、省エネが改めて注目されている。日本のCO2排出量を分野別にみると、発電や石油精製などエネルギー転換部門が約4割を占めている。ビルなどの建物、施設からの直接排出量は5%程度に過ぎない。しかし、間接的な排出、つまりビルで利用している電力から生じるCO2を含めると、排出量は全体の約17%であり、運輸部門からの直接排出量(約18%)に匹敵する。膨大なエネルギーを日々消費するビルや施設は、巨大なCO2排出源であり、カーボンニュートラル達成には、この分野での省エネが不可欠だ。今回のNews Flashでは、進化するBEMS(Building and Energy Management System: ベムス)の技術や、今後BEMSがますます重要になる、その背景を探る。

「見える化」と一元管理、自動制御で最適なエネルギー管理とコスト削減を実現

BEMSは、空調設備をはじめとする様々な設備機器の稼働状態やエネルギーの使用量を計測、解析し、効率よく制御することで省エネ性を向上するシステムだ。初期のBEMSは、電力消費が設定したレベルに到達することが予測された場合に、警報ランプを点灯するなどのシンプルなものが多かったが、現在では、自動制御が主流となっている。また、制御のレベルも、ただオンオフを切り替えるのではなく、空調の設定温度を自動で変更し、快適さを保ちながら省エネを実現することが可能になっている。BEMSを自社ビルに導入したミライトでは、BEMSによる空調の自動制御により、年間電力消費を約5%削減することに成功した。

BEMS イメージ

AIやIoT技術の活用で進化するBEMS

近年は、BEMSにAIやIoT技術を活用する動きが進んでいる。きんでんは、空調設備をAIで最適制御するサービスを昨年7月に開始した。AIで温度や湿度、CO2濃度などのデータを分析し、空調設備の制御を最適化することで、エネルギー消費を10~20%削減できる。鹿島建設の「鹿島スマートBM」など、ビル単体ではなく複数のBEMSで蓄積されるデータをAIで分析し、類似施設との比較解析を行うことで、省エネ提案や設備の異常検知、予防保全につなげる試みもある。空調だけではなく照明の制御にもAIが活躍する。ビル内に設置されたカメラで撮影した映像から、AIが人や書類を認識し、「打合せしている」、「集中して作業している」といった分析に基づき、照明の明るさや空調を自動でコントロールする仕組みだ。

昨年9月に開業した東京ポートシティ竹芝では、建物の屋内外に多数のカメラやセンサーが設置され、温度や湿度、CO2濃度などの環境データを収集している。ソフトバンクでは、同社の本社ビルの「IoTプラットフォーム」にビルや周辺の人流データ、また、混雑情報もあわせて収集し、解析しており、省エネだけではなく、設備点検の効率化や、警備員の効果的な配置に利用されている。

ビルの資産価値を上げ、企業のESGの取り組みに貢献するBEMS

BEMSによる省エネ取組を評価する認証制度も整備されつつある。米国では、米国グリーンビルディング協会が開発した建物と敷地利用についての環境性能評価システム「LEED」があり、1993年から運用されている。LEEDは、米国だけではなく世界でも利用されており、日本でも約150件の認証事例がある。日本独自の認証制度としては日本政策投資銀行による「DBJ Green Building 認証」や、国土交通省が主導した「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」がある。

CASBEE(建築環境総合性能評価システム) イメージ

ESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮がますます重視されるようになる中、BEMSを導入し、こうした認証を取得することは、建物の資産価値、そしてESGの観点から企業の評価を向上させることにつながる。日本ハムが、新球場でDBJ Green Building認証5つ星を取得し、建設費用の調達のためにサステナビリティボンドを発行したように、環境面での高い評価は、企業の資金調達の幅を広げる効果もある。脱炭素が重要課題となる今後の社会において、BEMSの重要性はますます高まっていくだろう。

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