5GやAIなどの先端技術の活用で進む、富士山のDX

2021年12月3日

2021年7月、2年ぶりに開山した富士山の山頂で、5G通信が利用可能となった。XR技術を活用したバーチャル登山などのサービスも提供され、富士山の新しい楽しみ方が拡がっている。先端技術を観光に活用する動きは、周辺エリアにも拡大し、富士五湖エリアでは、顔認証を活用した周遊チケットも登場した。5GやAIなどの技術は、安全や防災対策にも活用されている。先端技術で変わる富士山の様子を見てみよう。

2年ぶりに開山した富士山の山頂が5Gエリア化

今夏、富士山が2年ぶりに開山した。2020年は、新型コロナウイルスの影響で開山を見送ったが、今年は7月1日に吉田ルート、7月10日に須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルートが開山し、9月11日の閉山までに約8万人の登山客が訪れた。

新型コロナウイルス感染拡大以前の数字(2019年は約23万人6千人)にはまだまだ及ばないものの、今年は、5GやVRを活用し、富士登山をより楽しむ仕掛けが用意され、多くの人が、新しい富士山の楽しみ方を満喫した。これまでも、携帯各社は富士山頂や山小屋に基地局を設置し、4G通信を提供してきたが、2021年には、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクがそれぞれ山頂に5G基地局を設置し、7月から8月下旬まで、各社の5G通信サービスが山頂でも利用可能となった。これにより、山頂からの絶景を高画質カメラで撮影し、高精細画像や動画を、現地に来ることができない人とシェアするなどの楽しみ方ができるようになった。KDDIは、8月8日の山の日に合わせ、山頂からの360度映像を、VR空間が楽しめるスマートフォンアプリ「au XR Door」を、ウェブ上で生配信するサービスを提供した。

富士山のエリア対策のイメージ(KDDIの報道発表から引用) イメージ
富士山のエリア対策のイメージ
(KDDIの報道発表から引用)

「バーチャル富士登山」など、コロナ禍でも富士山を楽しむサービスも登場

KDDIは、包括連携協定を結ぶ静岡県御殿場市と共に、リモートで富士山の魅力を楽しむXRコンテンツ「バーチャル富士山」や、密集や接触を避け安全に富士山観光を楽しむための、「勝俣州和の富士山バーチャルガイドツアー(バーチャルガイド)」、リモート一眼レフ撮影サービス「マチカメ」を提供した。

「バーチャル富士登山」では、VR空間が楽しめるスマートフォンアプリ「au XR Door」を利用して、自宅などから、富士山の名所の映像を見ることができる。「バーチャルガイド」は、ハイキングコースの案内板に設置されたQRコードを読み込むと、観光親善大使の勝俣州和氏がARで登場し、見どころを解説してくれるサービスだ。コース上の複数の場所の魅力をアピールすることで、特定の場所に人が密集することを避ける狙いがあるという。

また、一眼レフカメラをリモート操作して、富士山と雲海を背景に写真撮影をする「マチカメ」を利用すれば、誰かにカメラに渡して写真を撮ってもらう必要がない。「マチカメ」は、登山の起点となるMt.FUJI TRAIL STATION(トレステ)に2台設置され、人との接触機会を減らす仕組みとして活用された。

富士五湖周辺エリアでは、顔認証による手ぶら観光が実現へ

富士山周辺エリアでも、先端技術を観光促進に活用しようとする取組みが始まっている。パナソニック システムソリューションズ ジャパンや富士急行などは、10月に「富士山エリア観光DX革新コンソーシアム」を立ち上げ、11月1日より、富士五湖周辺エリアにおける「手ぶら観光サービス」の実証実験を開始した。

顔認証システムを活用したデジタルチケットで、エリア内の9つの観光施設と5つの交通機関(周遊バス・鉄道)への入場や、施設内での決済ができる仕組みだ。紙のチケットやスマートフォンの提示が不要なため、手ぶらでエリア内をスムーズに移動しながら観光できる。デジタルチケットの価格設定に、AIによる来場者予測に基づいたダイナミックプライシングを採用していることも特徴だ。

「手ぶら観光サービス」の概要(パナソニック システムソリューションズ ジャパンの報道発表より引用) イメージ
「手ぶら観光サービス」の概要
(パナソニック システムソリューションズ ジャパンの報道発表より引用)

観光以外の分野でも、5GやAIを活用したDX推進に向けた取組みが始まる

5Gなどの先端技術が活用されているのは、観光やレジャー分野だけではない。例えば、静岡県御殿場市とKDDIは、包括連携協定に基づく活動として、ドローンを利用して怪我人や遭難者を探す実証実験を行った。ドローンから送られる映像から、登山道を外れた要救助者の位置を特定することができれば、救助隊の負担を減らし、迅速な救助活動を行うことができる。

2021年10月には、山梨県や東大、NECネッツアイなど7者による共同事業体「Fujisan DX」による、火山防災対策や登山者の安全確保などを目的とした実証実験が始まった。実験では、富士山5~7合目に東大が開発した小型のローカル5G基地局を設置。カメラで撮影した映像をAIで分析し、要介護者、要救護所者を発見し、結果を山小屋や救護所に伝達する技術の検証などを行う。

「Fujisan DX」による実証実験の概要(NECネッツエスアイの報道発表から引用) イメージ
「Fujisan DX」による実証実験の概要
(NECネッツエスアイの報道発表から引用)

5Gやローカル5G、AIなどの先端技術の活用で、富士山や周辺エリアが大きく変わろうとしている。観光促進のみならず、登山者の安全や地域の防災に大きく貢献する取組みが、富士山をどのように変えていくのか、目が離せない。

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