5Gが生み出す、新しい観光体験

2021年12月17日
5Gが生み出す、新しい観光体験
#5G
5Gが生み出す、新しい観光体験
#5G

新型コロナウイルス感染症の流行により、観光業は大きな打撃を受けた。また、少子高齢化が進む日本においては、今後、観光地に移動したり、現地で体を動かすアクティビティを楽しむことが難しい人が増えていく。観光業では5Gやロボット技術を活用し、いつでも、誰でも楽しめる観光体験を作り出し、観光促進につなげようとする動きが拡がっている。5Gが生み出す、新しい観光体験の姿を追った。

5Gで、観光体験が「どこからでも」実現可能に

2021年9月、東京都庁と奥多摩を5Gで結び、Re-alが開発した仮想釣りシステムを利用した遠隔渓流釣り体験の実証実験が行われた。リアルハプティクス技術を活用した仮想釣りシステム「TeleAngler」を、5Gで運用することで、魚の引き具合や釣り具の振動を、遠隔からでもリアルタイムに体験することができる。5日間で、80名ほどの参加者が、都庁の屋内から奥多摩の渓流のマスを58匹釣り上げることができたという。

仮想釣りシステム「TeleAngler」(出典:Re-alのYouTubeチャンネル) イメージ
仮想釣りシステム「TeleAngler」
(出典:Re-alのYouTubeチャンネル)

NTTドコモがH2Lと開発を進める遠隔カヤックシステムも、5Gを活用した遠隔からの観光体験ソリューションの一例だ。操縦者がVRゴーグルを装着してカヤックを漕ぐと、H2LのBodySharing技術により、パドルを漕ぐ際の水の感覚やカヤックの揺れが操縦者に伝わる仕組みだ。同時に、VRゴーグルを通して現地の映像が映し出されるため、遠隔から、現地でカヤックを漕いでいるような体験が可能となる。コロナ禍で現地に行くことが難しい場合でも、このような技術を活用することにより、家からでも臨場感あふれる観光体験を楽しむことができる。

ユニバーサルツーリズムの実現にも貢献する5G

仮想の釣りシステムや遠隔カヤックシステムでは、手に伝わる重さや振動を調整することで、体力が衰えた方や、ハンディキャップのある方であっても、実際にはできないような体験を仮想的に楽しむことができる。身体的な制限であきらめざるを得なかった様々な体験が可能になることで、観光体験の裾野が広がることが期待される。

高知県では、分身ロボット「OriHime」を活用し、ヨット体験やドルフィンスイムなどのアクティビティをより多くの人に楽しんでもらうための取組みを進めている。ツアー参加者の体験価値向上とユニバーサルツーリズムの実現には、高速で遅延のない通信環境が不可欠であり、現状の通信環境では、山などでの円滑なサービス提供が難しい。今後、山や海など、豊かな観光資源が存在する場所でのユニバーサルツーリズムの実現には、ローカル5Gの活用が重要になっていくとみられる。

5Gやローカル5Gで、リアルタイムに現地の魅力を伝える次世代観光システム

実際に現地を訪問した観光客に対しては、密を避けつつ、現地の魅力をより深く知ってもらうための5G活用が進む。岐阜県の世界遺産白川郷では、観光客を混雑エリアから周辺部に分散させること、そして、滞在時間を延ばすことを目的とした実証実験が実施された。白川郷では、合掌造り集落のある世界遺産エリアの見学だけで帰る観光客が多く、白川村の暮らしや歴史・伝統の文化的魅力を伝え切れていないという課題があった。そこで、観光客に5G対応スマートフォンを貸出し、位置情報に応じて混雑していない方面へ誘導したり、歴史文化の理解促進やマナー啓発を目的としたコンテンツを配信するなどのサービスを提供した。このようなサービスには、白川郷のリピーターに対しては、滞在時間を約40分延長する効果があったという。

白川郷で提供された次世代観光システム(出典:NTTドコモ YouTubeチャンネル) イメージ
白川郷で提供された次世代観光システム
(出典:NTTドコモ YouTubeチャンネル)

富山県高岡市は、ローカル5Gを活用した御旅屋賑わい創出事業を進める。御旅屋(おたや)とは、江戸時代の加賀藩で、藩主の鷹狩や民情視察の際に宿泊や休憩のために使用された施設のこと。高岡市では、江戸時代の古地図をスマートフォン上に表示し、現在の御旅屋通りと比較しながら街歩きを楽しむサービスなどを提供し、商店街の賑わい創出を目指している。

移動時間が新たな旅の醍醐味に

5Gは、旅行の移動時間の使い方も変えようとしている。2019年、JR九州では、D&S列車「いさぶろう・しんぺい」(注)の車内にて、列車の走行位置と連動した観光情報をタブレット端末上で提供する実証実験を行った。このようなコンテンツがあれば、移動中に新しい魅力を発見して途中下車したり、あるいは、次の旅行の目的地を探したり、という楽しみ方が実現する。JR九州では、ループ線やスイッチバックをドローンで空撮し、列車内から視聴できるサービスも提供した。このようなサービスをより充実させるためにも、5Gは欠かせない。列車で移動する旅客の位置に合わせ、リアルタイムで魅力あるコンテンツを提供していくことができれば、移動時間そのものを旅の醍醐味として楽しむことができるようになるだろう。

※注1: D&S(デザイン&ストーリー)列車とは、JR九州の観光列車のことで、「いさぶろう・しんぺい」は、人吉から吉松まで、熊本、宮崎、鹿児島と三県をまたいで走る列車である。「いさぶろう」は、肥薩線建設当時に逓信大臣だった山縣伊三郎に由来し、「しんぺい」は、初代内閣鉄道員総裁だった後藤新平から名付けられた。

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