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AIを活用した鉄道DXで、複雑化するダイヤの作成などの業務を効率化

2022年04月01日

鉄道には、AI活用に欠かせない膨大なビッグデータが存在する。鉄道ダイヤや実際の運行データ、人流、混雑状況、駅チカ・駅ナカでのショッピング情報、SUICAなどの鉄道系ICカードの利用情報など、種類も豊富だ。鉄道業界では、このようなデータとAIを活用し、業界の課題を解決しようとする取組みが進んでいる。鉄道ダイヤの作成や修正に、AIがどのように活用されているのか見てみよう。

スジ屋の職人技からAIへ。列車運行を支える最新技術

JRと関東圏の大手私鉄は2022年3月12日にダイヤ改正を行った。コロナ禍となり、テレワーク普及や出張の減少、観光旅行需要も回復半ばといった状況を踏まえ、JR東日本では、会社発足後、最大規模のダイヤ改正となった。ピーク時の1時間当たりの運転本数が、山手線外回りが21本から18本となるなど、人々の行動様式の変化を踏まえた、輸送力の調整が行われた。

このようなダイヤを作成するのが、「スジ屋」の職人技だ。列車のダイヤには、横軸に時刻、縦軸に駅名が記載され、各列車の動きを一本のスジで表した斜線が引かれる。秒単位の運行計画を作成するためには、緻密で精密な技術が必要とされ、専門家は、「スジ屋」と呼ばれてきた。ダイヤ改正の際には、各区間の乗車人数や、慢性的に遅延が発生する区間など、現行ダイヤの運用データを把握した上で、例えば特急を一本増やす、減らすといった判断を行い、修正に合わせてスジを引き直す。各線の運行のみならず、乗り継ぎの接続時間も考慮しなければならない。現在は、業務の多くが紙と鉛筆からコンピュータへと切り替わったが、今でも、ダイヤ改正の原案作りや事故復旧時には紙にスジを引くという。紙の方が全体を一目で把握でき、変更点の比較もしやすいからだ。JR東日本には、約30人のスジ屋が首都圏各支社に配置されている。

鉄道業界では、このような職人技とIT技術を融合させる取組みが進む。1990年代頃からは、列車運行の制御にAIを活用する動きが始まった。一つの列車の運行を最適化する単独制御から列車を群単位で最適化する群制御、そして、全ての列車の運行状態を予測して全体最適の実現と、鉄道運行管理におけるAI活用は進化してきた。近年では、交通系ICカードの利用実績データから鉄道利用状況を把握し、利用者のニーズに合わせてダイヤを修正したり、列車の運行実績から、ラッシュ時に慢性的に発生する小規模遅延の発生や伝播状況を詳細に把握し、それを防止する施策を講じるなど、ビッグデータの活用も進んでいる。

デジタルツインとAIを活用した鉄道DXで、最適なダイヤを作成

東芝では、2019年から「鉄道DXサービス」として、AIを活用して鉄道の運行ダイヤを作るサービスを提供している。現在、同サービスは英国向けに提供されており、2020年5月には、英大手鉄道会社のグレーター・アングリア社がロンドン近郊で運行する路線のダイヤ改正に活用された。「鉄道DXサービス」では、線路の細かなカーブや勾配状況、各車両の性能、運行や駅での停車時間の実績データなどを、リアル世界の情報から、精密なモデルをデジタルツイン上に再現する。デジタルツインで、様々なシミュレーションやリスク分析を行い、AIで最適な運行計画を策定する仕組みだ。

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英国では、複数の鉄道会社が同じ線路を利用する。日本でも複数の鉄道会社が乗り入れる路線は存在するが、運行が複雑化すると、従来のように職員のノウハウだけに頼ってダイヤを作成するのは難しい。英国では、一定以上の遅延が発生すると鉄道会社に罰金が科されるため、AIで効率的なダイヤを作るサービスへの期待は高い。現在、同サービスは英国のみで提供されているが、東芝では今後他国での展開を予定するほか、船舶やバスへの応用も検討しているという。

熟練者の業務データを機械学習し、災害時のダイヤ変更を効率化

AIが活躍するのは、新しいダイヤを作成する時だけではない。災害等により列車の運行状況に乱れが生じたときには、乱れたダイヤを正常に戻すために、列車を運休させたり、運転区間を変える「運転整理」を行う必要がある。運転整理を行う運転指令員には、刻一刻と変化する状況に応じて瞬時に最適な判断が求められるが、熟練指令員の引退や後継者不足が課題となっている。

JR九州と日立製作所は、過去に運転指令員が行った運転整理をAIに機械学習させる実証実験を行っている。過去のデータを機械学習させることで、今後ダイヤ乱れが発生した際に、熟練指令員と同等の運転整理を実現できるか、また、人手では難しい、複雑な要因を踏まえたダイヤ変更案の作成が可能かどうかの検証を行う。有効性が確認できれば、事故や災害時の遅延の最小化のみならず、鉄道業界の人手不足対策としても活用が期待できる技術だ。

AIを活用した運転整理業務の概念図(出典:JR九州プレスリリース)
AIを活用した運転整理業務の概念図
(出典:JR九州プレスリリース)

AI活用で、利便性の向上と鉄道運行業務の効率化の両立へ

線区をまたぐ直通乗り入れや、他社線との相互直通運転の増加により、鉄道の利便性はますます高まる反面、列車運行の視点からは、業務はより複雑で困難なものになっている。さらには、増加する災害への対応や、運転指令員のノウハウ継承といった課題も深刻化している。AIやデジタルツインといった最新技術が、このような課題の解決につながることを期待したい。

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