メタバースが支援する誰もが社会活動に参加できるSDGsの世界

2022年11月21日

すでにメタバースには各方面から期待が寄せられているが、SDGsの観点からもその活用を期待する声が上がっている。メタバースの活用は、SDGsが掲げる重要課題「持続可能な都市の構築」において、障がい者や高齢者でも活躍できる社会を構築する上で有効な手段になりそうだからだ。そうした期待も込めて、すでにさまざまな団体がメタバースによるSDGsへの取り組みを始めている。

内閣府がメタバースによるSDGsの課題解決を促進する分科会を発足

内閣府は8月16日、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に「メタバース分科会」を新設した。メタバース分科会では、メタバースを活用した地方創生やSDGsのための課題解決の最適解を創出するとともに、地方創生、SDGs課題の解決に向けた先端分野の人材交流を行う。また、Z世代のさらに次の世代を指すメタバースネイティブによる事例勉強会を年度内に4回開催するなどによって、地に足のついた議論を促進するという。

メタバース分科会では、その他の活動としてメタバースを活用した地方創生やSDGsの事例をセミナー形式で紹介し、同様事例の創出を図る「メタバース×地方創生・SDGsセミナー」を年度内に2回開催し、地方公共団体や府省庁と民間とで意見交換を行い、参加者同士の交流を図る「マッチングイベント」も年度内に2回開催する予定だ。

(図1)「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に新設された「メタバース分科会」の実施計画書(出典:地方創生SDGs官民連携プラットフォームのホームページより) イメージ
(図1)「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に新設された「メタバース分科会」の実施計画書
(出典:地方創生SDGs官民連携プラットフォームのホームページより)

国連総会でメタバースのSDGsイベントを開催

内閣府の「メタバース分科会」の会長を務めるバーチャルライツは、VR(仮想現実)空間での匿名の権利が軽視されていることに問題意識を持ち、VR独自の文化を継承したユーザーへのサポート拡充を目的に設立されたNPO法人だ。そのバーチャルライツが、国連総会が開催された9月16日から25日にかけて実施したのが、独自の取り組み「METAVERSE SDGs WEEK」だ。

毎年、9月末の国連総会の会期と合わせた1週間は、持続可能な開発目標(SDGs)の推進と達成に向けて意識を高め、行動を喚起する「SDGs週間(グローバル・ゴールズ・ウィーク)」となっており、各国でさまざまなイベントが開催されている。METAVERSE SDGs WEEKでは、メタバースで活動するVR文化団体の事例を紹介し、SDGsの身近さを体感してもらえるような啓発をTwitterやホームページを通じて行う運動が展開された。

(図2)METAVERSE SDGs WEEKで活動が紹介されたVR文化団体「授乳Cafeキタリナ」(出典:METAVERSE SDGs WEEKのツイッター画面より) イメージ
(図2)METAVERSE SDGs WEEKで活動が紹介されたVR文化団体「授乳Cafeキタリナ」
(出典:METAVERSE SDGs WEEKのツイッター画面より)

SDGsがすべて達成された地球をメタバースで公開

一方で、メタバースを使ってSDGsが達成された、理想の地球の体験できる取り組みもある。Metafrontierは、SDGsに掲げられた世界共通の17のゴール、169のターゲットがすべて達成されたと仮定した2030年の地球を、パラレルワールドとしてメタバース上に表現する「Meta EARTH(メタアース)」を公開した。現在の地球に欠けているものを補完し、貧困・差別問題などを解決することで、全ての人が安全で平等に活動できる理想の世界が展開されている。

Meta EARTHは六角形のメタバース(ヘキサルーム)で繋がって構成され、各ヘキサルームには、地域・趣味・環境問題・差別問題など1つずつあらゆるテーマを持ったコミュニティが存在する。これら1つ1つの課題解決によって構成される、非中央集権型の理想の地球がMeta EARTHだ。

Meta EARTHでは、現実社会において人が氏名で識別されているように、「Meta ID」を使ってユーザーを識別する。Meta IDはブロックチェーンのように中央集権的な管理主体に依存しない、分散型ID(DID)の考えに基づいて設計され、Meta EARTHで行った地球貢献活動や慈善運動の履歴が全てMeta IDに記録される。これによって、メタバースにおける個人の信用スコアが可視化されるという。

(図3)Meta EARTHを構成するメタベースのイメージ(出典:Metafrontierのプレスリリースより) イメージ
(図3)Meta EARTHを構成するメタベースのイメージ
(出典:Metafrontierのプレスリリースより)

メタバースが支援するSDGsの世界

メタバース上ではアバターと呼ばれるキャラクターを使って、仮想空間の中を自由に動き回って会話もする。その際には、肉声だけでなく人工的に加工された声も使える。そもそも、アバター自身人間である必要はなく、メタバースの世界では自分が望む容姿になれることから、性別や年齢、ハンディキャップなどを超えて行動できる。

このようなメタバースの世界では、身体的もしくは精神的な障がいなど、さまざまな理由によって社会や人間関係から距離を置いている人でも、社会活動への参加のハードルを下げられる。これが、SDGsの目標に含まれている、人の不平等を無くす世界の実現にもつながっていくと見られている。

今後メタバース上でも、安全な決済手段が実装されて商品やサービスなどの売買ルールが整備され、現実世界と変わらない社会活動が行われるようになれば、ハンディキャップを持った人でもさまざまなビジネスが可能になり、経済的な安定も望めるようになるだろう。

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