ドローンや5Gを活用した「スマートアイランド」で、離島の課題を解決

2022年7月22日

日本には、6,852もの島がある。北海道、本州、四国、九州、沖縄を除いた6,847の離島のうち、416島が有人島だ。このような離島では、都市圏への人口流出などにより、人口減少や高齢化が本土よりも急速に進む。その結果、雇用機会の減少や学校の統廃合、医療施設の閉鎖などにより、さらに人口減少が進むという悪循環に陥っているところが多い。一方で、ICTやドローンなどの新技術を活用した先進的な取組もまた、離島から生まれつつある。スマートシティならぬスマートアイランド構想で社会課題に取り組む離島の様子をみてみよう。

ドローンによる医薬品の定期配送

長崎県五島列島では、2022年5月から、ドローンによる医療用医薬品の配送事業が始まった。豊田通商のグループ会社「そらいいな株式会社」が、米国のスタートアップ、ジップライン社の機体を利用してサービスを提供する。ジップラインは、ルワンダなどアフリカ3カ国に拠点を持ち、医薬品の輸送などで1日1千回以上の飛行実績を有する。

五島列島では、発着用の施設がある福江島から、奈留島の長崎県五島中央病院附属診療所奈留医療センターと奈留薬局向けの定期配送が行われている。ドローンは、荷物を上空から投下し、着陸することなく拠点に戻る仕組みで、往復約40kmの配送を、20~30分で行う。今後、配送ルートを拡大していく予定だ。無人地帯におけるドローンの目視外飛行(レベル3飛行)による医療用医薬品の定期配送は日本発の試みで、将来的には有人地帯上空での目視外飛行(レベル4飛行)を目指すという。

「そらいいな」の物流網構想(開設済:赤、計画:黒)(出典:豊田通商プレスリリース) イメージ
「そらいいな」の物流網構想(開設済:赤、計画:黒)
(出典:豊田通商プレスリリース)

五島列島では、2030年頃の「スマートアイランドとしての望ましい未来」を目指すため、「五島スマートアイランド構想」を策定し、遠隔診療やスマート水道メーターによる水道の自動検針など、様々な実証に取組んでいる。2021年には、 五島中央病院での診療の状況を、5Gで長崎大学病院に伝送する実証実験 が行われた。医師が大都市圏に集中する「医療の偏在」と「医療格差」という課題を、通信技術やドローンの活用で解消しようという五島列島の取組は、人口減少と高齢化に悩む全ての自治体にとって参考になるものといえるだろう。

海底光ファイバーケーブルを活用した遠隔診療の高度化

最新の通信技術で医療の課題を解決しようとする試みは、新潟でも始まっている。日本海に浮かぶ人口約340人の離島、新潟県粟島浦村では、約20年前からTV電話を活用した遠隔診療が行われてきた。島の診療所と、約33km離れた本土の村上総合病院をつないで遠隔診療を行い、その後、医師からFAXでカルテが送られてくる。それを元に、診療所に常駐する看護師が処方箋を作成し、後日、船で薬が運ばれてくる仕組みだ。

これまで、診療所の遠隔診療には電話回線(ADSL)が使われてきたが、総務省の「高度無線環境整備推進事業」として補助を受け、粟島と本土を結ぶ海底光ファイバーケーブルが敷設された。島では、Wi-Fiや5G基地局の整備を進めており、2022年度中には、高速の光回線が開通する見通しだ。より高精細な映像が利用できれば、より正確な診断が可能になる。栗島では、光回線の整備により、遠隔医療の高度化のほか、小中学生に1人1台のデジタル端末を配備した授業の実施なども目指している。

離島のニーズと民間の技術シーズを組み合わせ、スマートアイランドを実現

国土交通省の離島振興課では、離島地域が抱える課題解決のため、2020年からスマートアイランドの取組を進める。スマートアイランドとは、公共交通や医療・教育の不足、ライフラインの脆弱性などの、離島地域の課題を民間企業などが有する新技術の実装によって解決しようとするもので、離島の「ニーズ」と、企業が持つ新技術の「シーズ」をマッチングさせ、現地へ実装しようとするものだ。

例えば、上述の長崎県五島市福江島では、令和3年度スマートアイランド実証調査として、五島牛のせり市における牛の画像をオンラインで配信したり、LPWA通信とLINEを組み合わせた鳥獣罠の遠隔監視システムの運用などの実証実験が行われた。鳥獣監視システムの実証では、LINEアプリを活用することで、これまで、ボランティアが年間約300時間を費やして行っていた見回り作業を、不要とすることができたという。

今年度も、4月から5月にかけて、スマートアイランド推進実証調査業務の公募が行われ、これから全国の離島で、様々な検証が行われる。様々な課題に直面する日本の離島。しかし、課題が多いということは、その分、新技術を活用したソリューションが生まれやすい環境ともいえる。いずれは、離島から始まった取組みが、都市圏の課題解決やスマートシティの実現に活用される日がやってくるかもしれない。スマートアイランドからどんなアイデアが飛び出すか、今後も注目だ。

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