産業界での取り組みが活発化してきたGX

2023年1月16日

これからの時代、企業が生き抜いていくにはGX(グリーントランスフォーメーション)を意識した経営が求められる。GXは、デジタルで社会を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)と異なり、個々の企業レベルで取り組むのではなく、産業界レベルで企業が協調しながら取り組むことも重要だ。ここでは、各産業界で動き始めたGXの取り組みと、産官学金が協調して取り組もうとしている動きを見てみよう。

産業界におけるGXの取り組み

GXとは、環境破壊や異常気象などが引き起こす災害や、さまざまな環境問題を先進技術の力で解決することであり、経済と環境の双方の好循環を生み出すことが期待されている。カーボンニュートラルの達成を目指す世界各国で、持続可能な社会の実現を目指すためにGXが進められ、脱炭素化を目指すことで経済社会の変革を目指す取り組みともいえる。

産業界の中でも、特に注目されている自動車業界や建設業界、IT業界においては、どのようなGXの取り組みが進んでいるのか。

これまで、化石燃料で動く自動車の製造が主流だった自動車業界では、カーボンニュートラルの実現には電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)の普及など、CO 2 を排出する自動車の変革が必要と考えている。生産過程においては、工場のCO 2 排出量の削減に貢献できる自動車部品や機械などの製品開発への取り組みや工場の設備、作業工程の改善が進められている。さらに、風力発電や太陽光発電など、再生可能エネルギーに投資することでCO 2 排出量の削減に取り組んでいる企業もある。

建設業界では、関係官庁や自治体と積極的に協働する取り組みが進められている。先進技術を取り入れた革新的な建設機械の導入や低炭素型燃料の使用によるCO 2 排出量の削減、再生可能エネルギー電力の調達・使用の推進から、洋上風力発電事業に取り組んでいる企業もある。日本は浮体式の技術が世界のトップレベルにあるため、浮体式の洋上風力発電が実用化されると、世界的な競争力を持つ産業に成長すると期待されている。

IT業界の取り組みとしては、事業全体からサプライチェーン、販売した製品のライフサイクルの全てでCO 2 排出量と除去量を同じにし、実質的なCO 2 排出量をゼロにすると宣言する企業や、2030年までにカーボンネガティブとなり、2050年までには創業当時から間接的に排出してきたCO 2 による環境への影響を排除することを目標に掲げる企業もある。

タクシー業界が取り組むGX

さらには、個別の業界の中で、さまざまな企業が連携しながらGXに取り組む例も出てきた。タクシー配車アプリの提供など、モビリティ分野でDXを推進するMobility Technologies(MoT)が2022年12月より開始したのが、全国のタクシー事業者や各種パートナー企業が参画する「タクシー産業GXプロジェクト」だ。プロジェクトを通じて日本の運輸領域全体のGXを推進するとともに、EV車両タクシーを街中で走らせることで、社会全体のカーボンニュートラルへの意識向上を促進させるという。

プロジェクトでは、都市部を中心とした全国約100社のタクシー事業者に対して、AIシステムによってエリアごとのタクシー運行特性に応じた充電計画を生成するエネルギーマネジメントシステムを構築し、車両や充電器の提供といった設備面でも支援する。さらに、タクシー利用者や、ESG(Environment、Social、Governance)経営に注目する法人顧客に向けて、EV車両乗車によるCO 2 削減量を表示するサービスも開始。

EV車両にはオリジナルのラッピング広告を施し、街中を走行するタクシーの姿を通じて、広く一般社会への啓発にも繋げていく。これらの取り組みを通じて、2027年までにCO 2 排出量3万トン/年の削減を行うことで、産業全体の脱炭素化を目指すという。

(図1)「タクシー産業GXプロジェクト」で構築されるエネルギーマネジメントシステム(出典:MoTのプレスリリース) イメージ
(図1)「タクシー産業GXプロジェクト」で構築されるエネルギーマネジメントシステム
(出典:MoTのプレスリリース)

多くの企業が賛同を表明する「GXリーグ」

経済産業省は、GXに積極的に取り組む企業が、官・学・金でGXに向けた挑戦を行うプレイヤーと一体で、経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場として「GXリーグ」を設立した。目指すのは、GXに挑戦する企業が排出量削減に貢献しつつ、外部から正しく評価され成長できる社会だ。

2022年2月1日に「GXリーグ基本構想」が公表されると440社の企業が賛同を表明。11月30日までに599社の企業が賛同を表明している。経済産業省は4月以降、賛同企業とGXリーグ稼働に向けたコミュニケーションを重ねており、2023年度には排出量削減に向けた投資と、自主的な排出量の取引きを行う枠組みを開始する予定だ。

例えば、賛同企業の1つパナソニックは、「Panasonic GREEN IMPACT」という環境コンセプトの下、2030年までに全事業会社のCO 2 排出量を実質ゼロにし、2050年に向けて商品からのCO 2 排出量を減らすことを目指している。「GXリーグ」の取り組みにおいては、「生活者にとってのカーボンニュートラル時代の未来像のあり方の議論」「未来像を踏まえた、新たなGX市場形成のあり方(ルールメイキングなど)の議論」「社会での効率的な排出削減を行うための自主的な排出量取引の試行」という3つのプロジェクトを実施する予定だ。

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