建設現場でGXを支援する最新の建設機械

2023年1月30日

国土交通省は「GXの実現に向けた各分野の取り組み」に関する資料の中で、「建設施工におけるGXの実現に向けた取り組み」として、「建設材料の脱炭素化」「ICT施工による施工の低炭素化」「革新的建設機械の導入拡大」という3つの目標を掲げている。こうした目標を実現するには、具体的にどのような建設機械を導入すればいいのだろうか。

温室効果ガスを排出しない電動建設機械に期待

国道交通省が掲げる「革新的建設機械の導入拡大」では、二酸化炭素を排出する従来型のエンジンを抜本的に見直し、電気や水素、バイオマスなどで動く建設機械を導入・普及させようとしている。最近では、コマツや日立建機など国内の大手建設機械メーカーが、次々と電動式の建設機械を発表している。

化石燃料を使用するエンジンを電動式にするだけで、温室効果ガスの排出を抑えることができるが、建設機械を電動式にすることによるメリットは他にもいろいろとある。例えば、使用する電気代は軽油代より安く、ランニングコストを低く抑えることができる。工場に設置された太陽光発電設備やボイラー発電設備の余剰電力を活用すれば、より環境に優しく経済的な運用が可能になる。

また、日々の燃料補給やエンジンオイルの交換、その他フィルター類の交換などメンテナンスの手間も大幅に削減できるので、生産性や収益力も向上する。さらに、エンジンを搭載していないことからオペレーターに伝わる振動が大幅に軽減され、作業中のストレスや疲労感も軽減される。そして、車体からの発熱量が少ないので、車体周囲に熱影響を与えにくいことから、作業環境の改善にも貢献するという。

一方で、建設機械を電動式にした場合、バッテリー駆動だと長時間の連続稼働が難しくなる。そういった課題を解決するのが、有線式の電動建設機械だ。コマツが2022年8月から販売を開始した有線式電動油圧ショベルは電源を有線で直接供給するため、充電式と異なりバッテリー残量を気にすることなく長時間連続稼働できる。特に産廃処理工場など、24時間稼働が必要とされる作業現場での生産性向上に期待できるという。

(写真1)コマツが2022年8月から販売を開始した有線式電動油圧ショベル(出典:コマツのニュースリリースより) イメージ
(写真1)コマツが2022年8月から販売を開始した有線式電動油圧ショベル
(出典:コマツのニュースリリースより)

水素燃料を活用した建設機械にも期待

建設現場においては、山奥での工事など電源を確保するのが難しい場所も多い。そういった場所では、電動式以外の環境配慮型建設機械の活用が期待されている。その有力な候補となるのが、水素を燃やした水蒸気でエンジンを動かす「水素エンジン車」だ。とはいえ、現状の水素エンジンは乗用車をターゲットに開発されており、ディーゼルエンジン並みのパワーを出すことが難しい。

そうした中、2022年8月、フラットフィールドと東京都市大学、トナミ運輸、北酸、早稲田大学アカデミックソリューションによる共同プロジェクトが、水素エンジンでディーゼルエンジン並みのパワーを実現したと発表した。2022年6月15日時点で、既存のディーゼルエンジン並みの出力を得るところまで到達しており、2022年度後半には実用化を目指して耐久試験を実施する予定だという。

今回始動したプロジェクトは、「走行距離が長く、需要量も大きい重量車(トラックなど)」の脱炭素化に向けた取り組みで、既存車両を水素エンジン車に改造し、その実用性の確保と環境性・経済性の評価を行うものだが、このエンジンを建設機械でも活用すれば、電源供給の制限なしにさまざまな場所での工事で脱炭素化が実現できそうだ。

(図1)2022年6月15日時点での水素エンジンとディーゼルエンジンの出力の比較(出典:5社による共同プレスリリースより) イメージ
(図1)2022年6月15日時点での水素エンジンとディーゼルエンジンの出力の比較
(出典:5社による共同プレスリリースより)

ダム建設現場で活躍する大型ドローン

国土交通省が掲げる「ICT施工による施工の低炭素化」の目的は、ICTを活用することで施工の効率化を実現させ、建設現場の生産性を向上させることだ。そうやって、現場の作業時間も短縮できれば、建設機械から排出される温室効果ガスの縮減に期待できる。

ICTの活用には、建設機械としてのドローン活用も含まれるだろう。現状、ドローンは現場の地形や既存の建築物を確認するなど、主に計測や調査に関わる作業に活用されている。一方、最近では重量物を運べるドローンがいろいろと製品化されている。

近畿地方整備局大戸川ダム工事(大津信楽線工事)事務所は、2022年10月5日、報道関係者向けに大型ドローンによる軽量盛土材運搬の作業を公開した。大戸川ダム工事事務所では、ダム事業に伴う県道の付け替え工事を実施しており、特に急峻な地形条件においては、軽量盛土を活用した施工を進めている。

軽量盛土材は車道を支える盛土材であり、1つのサイズが2m×1m×0.5mで約40kgの重量がある。これまで現場では、地上からクレーンが届く範囲まで軽量盛土材を運び、荷下ろし後は人力による2人1組での運搬を実施してきた。しかし、施工の効率性と作業員の安全確保に課題があった。

そこで、送電線材料運搬などの電力関係工事で活躍している重量物搬送用の大型ドローンを活用し、クレーンの届かない範囲への資材運搬を行うことにした。これによって効率的に作業が実施でき、作業員の安全確保と工期短縮が実現できるという。そして、工期の短縮によって工事全体で発生する温室効果ガスも縮減できる。

(図2)大戸川ダムにおける大型ドローンの活用(出典:国土交通省の資料より) イメージ
(図2)大戸川ダムにおける大型ドローンの活用
(出典:国土交通省の資料より)

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