市民と企業がゲーム感覚でまちの課題を解決するスマートシティアプリの実証実験

2023年4月10日

スマートシティの目的は、都市が抱える問題を解決し、人が住みやすい都市を実現すること。そのためには、まちの問題解決を国や自治体だけに頼ってしまうのではなく、そのまちに住む人たちが自ら、日頃から感じているまちの問題に向き合っていくことも大切だ。そうした活動を、アプリで支援する取り組みの実証が始まっている。

スマートシティアプリを東京・大阪・千葉で実証実験

人々の生活や暮らし方は、時代の流れや社会情勢などによって大きく変化する。近年ではコロナ禍によってリモートワークが普及し、「居住地で過ごす時間の増加」や「職場で過ごす時間の減少」が進んでいたり、SDGsやサーキュラーエコノミーといった、持続的で循環可能な取り組みに対する意欲や関心が高まっている。

こうした変化に着目し、まちに関連する市民の情報発信や行動の見える化を促進することで、地域主体のまちづくりを加速させる取り組みを、2020年から始めているのがNTTとNTTデータだ。2021年11月11日?12月17日には、東京の自由が丘駅周辺で市民が気軽にまちづくりに参加できる新しい仕組みの実証実験を行い、2023年1月23日からは東京(八重洲・日本橋・京橋エリア)、大阪(京橋エリア)、千葉(幕張エリア)で、新たな実証実験を行った(実験期間は東京都と千葉が3月31日までで、大阪は3月20日まで)。

実験では、NTTとNTTデータが開発中のスマホアプリ「みんなのスマートシティ(みんスマ)」を使用。同アプリはだれでもがインストールでき、「地域クエスト機能」を活用して「まちの活性化」や「まちの課題解決」に参加することで、新しい体験が提供される。

(図1)NTTとNTTデータが開発したアプリ「みんスマ」の地域クエスト機能(出典:NTTとNTTデータのプレスリリースより)
(図1)NTTとNTTデータが開発したアプリ「みんスマ」の地域クエスト機能
(出典:NTTとNTTデータのプレスリリースより)

まちの課題解決をゲーム感覚でプレイする

「地域クエスト機能」とは、市民と企業の双方に関わる「まちの活性化」や「まちの課題解決」などを、だれもが設定できるクエスト(冒険)として提供する仕組み。それによって、地域に関わる市民と企業がつながり、双方が感じているまちの課題解決をゲーム感覚でプレイしてもらうことをコンセプトとしている。

例えば、ある地域の企業がまちの活性化を図るために、「このまちのおすすめグルメを投稿しよう」「地元民だから知っているおすすめスポットを紹介しよう」といったクエストを設定したり、子どもたちを守るために「まちの危険を見つけよう」などといったテーマのクエストを「みんスマ」に設定したとする。それに対して、市民がそれぞれのテーマに応じて、自分のお気に入りのグルメ写真やスポット、交通量が多い狭い道路などを撮影してクエストに投稿すると、それが地図に反映される。

投稿者はクエストごとに決まったバッチがもらえ、投稿数に応じてグレードが上がっていくので、まさにロールプレイングゲームのような感覚で参加。まちの新たな魅力を発見してアピールしたり、困りごとへの気づきや解決を実現するなどして、自分が関わるまちを居心地良いものにしていく。

一方、クエストを設定した企業は市民からの情報を活用し、自社サービスの改善や新たなサービス提供をはじめ、施設の景観や保全の見直しなどが行えるようになる。そうやって双方にメリットをもたらすことで、地域市民と法人の両側面からまちや暮らしをよりよくしていくことを目指している。

大阪では未来予測プラットフォームと組み合わせた実証実験も

大阪では「みんスマ」を利用した実証実験と並行して、NTT西日本と京阪HDが加わりセンサーレスでまちの可視化・分析を行う、「AIを活用したまちづくり」の実証実験も行われた。こちらの実験では、NTT西日本が開発したまちの分析・可視化・未来予測プラットフォーム「みんなのまちAI」を利用。

「みんなのまちAI」は、人流や建物のデータ、およびその他のオープンデータを蓄積し、まちの詳細な情報を分析・予測してデジタル上に再現するシステム。今まではわかりづらかった細かい粒度(メッシュ)での人の行動目的や行動予測が可視化され、より精緻な売上予測や混雑予測、交通シミュレーションなどを可能にするという。

「みんなのまちAI」に、「みんスマ」で取得したまちの情報や、カメラ画像のAI解析から得た情報を取り込んで精度の高い予測を行い、その結果を次の企画(クエストなど)に反映することでさらなる滞留人口の増加を狙う。例えば、「みんスマ」を起動して「みんなのまちAI」のすれ違い通信機能をオンにしているユーザー同士がすれ違うと、アプリ上で設定しておいたプロフィールカードの交換が可能になるなど、これまで接点のなかった住民やワーカー、商店の店員などとの間での緩やかなつながりを創出するという。

京橋エリアでの実験では、まちの活性化につなげるために「みんスマ」での投稿や、すれ違いといった活動に応じて、京橋エリアの店舗で使えるクーポンが発行された。

(図2)京橋エリアでの実証実験(出典:NTTとNTTデータのプレスリリースより)
(図2)京橋エリアでの実証実験
(出典:NTTとNTTデータのプレスリリースより)

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