加速する自治体によるEVのカーシェアによる公用車利用

2023年10月2日

最近、自治体によるEV(電気自動車)のカーシェアリングサービス導入が加速している。脱炭素社会を見据えたCO2の排出量削減という目的もあるが、公用車の置き換えによる経費削減や災害対策としての導入という狙いもある。

福岡市が政令市初となる再エネ100%電気を使ったEV

福岡市は今年の8月28日、同市施設である西部地域交流センター「さいとぴあ」にタイムズモビリティのカーシェアリングサービス「タイムズカー」のEVを2台配備し、市民へのEV普及促進と、福岡市のクルマからの温室効果ガス実質ゼロの実現に貢献していくと発表した。

福岡市が「さいとぴあ」に設置したEV(出典:福岡市) イメージ
福岡市が「さいとぴあ」に設置したEV
(出典:福岡市)

福岡市は脱炭素社会の実現に向け、「2040年度温室効果ガス排出量実質ゼロ」を掲げ、2030年度における温室効果ガス削減目標を2013年度比で国の46%を上回る50%削減に設定している。今回のEVの配備もその取り組みの一環だ。同市ではタイムズモビリティと協働して、政令市初となる市有施設で再エネ100%電気を使ったEVによるカーシェアリングを実施する。

「タイムズカー」は、これまでも自治体と連携し、カーシェアリングを活用した環境負荷低減に向けた施策や、EVを災害時の蓄電池として活用する連携協定、EV普及に向けた利用機会の創出などに取り組んでいる。

今回の福岡市との取り組みでは、福岡市はEVカーシェアリングの企画、配置場所、充電設備、再エネ100%電気の提供を行う。一方、タイムズモビリティは、EVカーシェアリングの実施(車両配置、サービス運営)、配置場所の使用料や充電にかかる電気代の支払いを行う。

再生可能エネルギー100%の電力を使ったEVの運用は、タイムズカーとしても初めての試みとなる。

市川市はカーシェア導入による経費削減も狙う

千葉県の市川市も8月16日に、第1庁舎地下駐車場において、「タイムズカー」のEV1台、HV2台を配備し、カーシェアリングをスタートさせている。市役所の駐車場でカーシェアを利用するのは、県内では初だという。なお、カーシェアは市の職員だけではなく、市民も利用できる。市川市では、EVによるカーシェアリング事業を通じて、市民へのEV普及促進を図ろうとしている。

これにともない市川市は、今年度に入れ替えを検討していた公用車5台のリース契約を更新せず、カーシェアを必要に応じて借りて利用する。

カーシェアを利用することで、自動車税や駐車場代などの固定費を削減できるほか、車両管理の手間が削減できる。また、必要な時に利用することで、出費を抑制できる点などの経費削減のメリットがある。一方で、繁忙期に供用者が使えないリスクもある。

市川市の田中 甲(たなか こう)市長は記者会見で、「必要な時間だけEVを利用する体制をスタートさせるもので、有効に活用できるものを導入して、無駄を減らしていく方向に舵を切りたいと考えている」と語った。

小田原市はEVを「動く蓄電池」して活用

小田原市は今年の4月、REXEVが運営するカーシェアリング「eemo(イーモ)」を利用し、日産SAKURA5台を導入、5月から一般利用を開始した。

小田原市が導入したカーシェアEV(出典:小田原市) イメージ
小田原市が導入したカーシェアEV
(出典:小田原市)

小田原市は、脱炭素社会を見据えた取り組みを通じて、2050年までのCO2排出量実質ゼロを目指しており、2019年から小田原市、湘南電力、REXEVが連携して脱炭素型の地域交通モデルの構築を通じた具体的なアプローチとなる「EVを活用した地域エネルギーマネジメントモデル事業」を実施してきた。

同事業では、EVに特化したカーシェアリングを行うとともに、EVを「動く蓄電池」と捉え、地域においてエネルギーを無駄なく利用する地域エネルギーマネジメントを実施する。EVを活用した「カーシェアリング」、充放電遠隔制御による「エネルギーマネジメント」、動く蓄電池としての「地域課題の解決への貢献」を兼ね備えた、脱炭素型の地域交通モデルの構築を目指している。災害時に避難所等へEVを派遣する仕組みを構築。EVの位置情報や蓄電池残量等を遠隔で把握できるシステムの特性を活かし、避難所等への効率的な配車を可能にしている。

この事業は、2019年度に環境省「脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業」のうち、「脱炭素型地域交通モデル構築事業」の採択を受け、実施している。

eemoでは、アプリを立ち上げ、地図から最寄りのステーションを検索して、車両・利用時間を選んで予約。アプリでドアロックを解除。グローブボックス内からリモコンキーを取り出して利用する。支払いはクレジットカードで決済される。アプリで予約して、24時間好きなときにステーションから出発。 返却や決済も、すべてスマートフォンひとつで完結する。

eemoのスマートアプリ(出典:eemo) イメージ
eemoのスマートアプリ
(出典:eemo)

そのほか小田原市は、日産自動車、神奈川日産自動車、日産サティオ湘南及び日産プリンス神奈川販売と「電気自動車を活用した災害連携協定」を締結しており、災害時に日産自動車販売店からEVの貸与を受けるほか、販売店において急速充電器の使用が可能となっている。

紹介した3自治体以外にも、東京都大田区は大田区所有の事業用地にカーシェアリングサービス「タイムズカー」のEV2台を配備。東京都目黒区も区役所の総合庁舎駐車場にカーシェアリングサービス「タイムズカー」のEV2台を配備し、目黒区庁用車の脱炭素化および区民等へのEV普及促進を目指している。

環境省は、地方公共団体の公用車及び民間事業者の社用車に「再エネ×電動車」を導入することで移動の脱炭素化を進める取り組みを支援しており、補助金を支給している。こういった国の後押しもあることから、今後も自治体によるEVのカーシェアリングは加速していくだろう。

環境省が想定するカーシェア例(出典:環境省) イメージ
環境省が想定するカーシェア例
(出典:環境省)

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