顔認証やメタバース、生成AIなどのデジタル技術で支えるスマートシティのサービス

2024年4月22日

スマートシティでは、政府のデジタル田園都市国家構想を反映し、市民の幸福度(ウェルビーイング)を長期的に維持・向上させるさまざまなサービスを、自治体が積極的に提供しようとしている。それらのサービスの実現に、デジタル技術の活用は必須だ。ここでは、顔認証やデータ連携基盤、メタバース、生成AIなど最新のデジタル技術を活用した市民向けサービスを提供している事例を紹介する。

マイナンバーカードの個人情報を顔で認証

デジタル庁が構想する、マイナンバーカード1枚でさまざまな行政サービスが受けられる「市民カード化構想」は、全国な広がりを見せている。これにより、各地の自治体において、図書館カードや診察券、高齢者タクシー補助、避難所受付で住民をマイナンバーカードで認証しようとしている。一方で、物理カードには紛失や盗難のおそれがあり、子どもや高齢者が携帯する難しさ、避難時の持ち忘れなどさまざまな課題もある。

こうした中、京都府の亀岡市ではDXYZが提供する顔認証プラットフォーム「FreeiD」と、xIDが提供するマイナンバーカードに特化したデジタルIDソリューション「xIDアプリ」を連携させ、顔認証によって市民サービスの提供が受けられる実証実験を実施した(2024年2月1日〜2月28日)。

「xIDアプリ」は、初回登録時にマイナンバーカードの署名用電子証明書をスマートフォンで読み取り、本人確認を実施することでIDを生成。以降は「xIDアプリ」を使って、電子認証・電子署名を行うことで、金融サービス利用開始時の本人確認や行政手続きをオンラインで完結できる。「xIDアプリ」と「FreeiD」の連携によって、住民は顔認証だけでマイナンバーカードに登録された基本4情報(住所・氏名・生年月日・性別)を活用したサービスを利用できるようになる。

また、在宅で「xIDアプリ」を利用すれば、市役所窓口などにおける対面での在住確認が不要になるので、施設においては受付の省人化・無人化、利用状況の見える化、持ち忘れ時のトラブル防止などが実現できるという。

(図1)顔認証による住民サービスの利用(出典:DXYZ株式会社のプレスリリースより引用) イメージ
(図1)顔認証による住民サービスの利用(出典:DXYZ株式会社のプレスリリースより引用)

スマートシティ型データ連携基盤で健康増進・生涯学習をサポート

電通グループ5社と事業パートナー7社は共同で、都城市スマートシティ構想の第一弾としてスマートシティ型データ連携基盤を構築。認知症を予防し、健康増進・生涯学習をサポートするサービスをデータ連携基盤上の市民ポータルサイト「スマイルみやこんじょ」に公開し、2024年2月26日から提供を開始した。

「スマイルみやこんじょ」は、マイナンバーカードに紐付いたデジタルIDを使用し、本人認証を行った後に利用できる市民ポータルサイト。健康増進をサポートするサービスとして、1分でできるゲーム6種類で構成された、記憶力・注意力・予測力などの認知機能を鍛える脳のトレーニング「みやこんじょ脳トレ」や、ビジネスから教養まで幅広い講座を受講できるオンライン動画学習サービス「gacco(ガッコ)」、ChatGPTを活用してCGキャラクターと対話できるサービス「キャラトーカーAI」などが提供される。

「スマイルみやこんじょ」のサービス提供プラットフォームは、電通総研が提供する都市OSソリューション「CIVILIOS」で構築されている。「CIVILIOS」は内閣府の「スマートシティリファレンスアーキテクチャ」に準拠しており、都城市においては「スマイルみやこんじょ」の利用に必要なユーザー情報を取得するマイナポータルAPI連携機能や情報取得の際に行うユーザー同意機能、個々のユーザーに適した講座の推薦機能、都城市が市民の利用状況を把握できるダッシュボード機能などが利用されている。

(図2)電通総研の都市OS「CIVILIOS」で構築された市民ポータルサイト「スマイルみやこんじょ」(出典:電通グループのプレスリリースより引用) イメージ
(図2)電通総研の都市OS「CIVILIOS」で構築された市民ポータルサイト「スマイルみやこんじょ」
(出典:電通グループのプレスリリースより引用)

生成AIで災害時の避難所運営をサポート

いわき市は3月3日に、デジタル技術を活用した津波避難訓練をイオンモールいわき小名浜とその周辺地域で実施した。避難訓練は東北大学や九州大学、イオン、イオンモールの協力によるデジタル防災技術の実証実験も兼ねており、避難を支援するスマホアプリと避難所でアドバイスをするAIアバターを実際に体験してもらい、その有効性についても検証した。

スマホアプリを使った避難の支援では、画面に表示される矢印に沿って移動すると、火災や建物の倒壊、津波などを避けて適切に避難できるように設定されている。その際、危険な場所の特定については、利用者がアプリ画面の「報告ボタン」を押すことで、情報がインターネット上のクラウドに送信されるので、災害対策本部がリアルタイムで避難経路を見直せる仕組みが構築されている。

今回の実験では、2つの技術を検証。1つはスマートフォンのカメラに写った画像から、正確にカメラの位置や向きを特定するVisual Positioning Systemの実現で、実空間に情報を付与する実空間メタバースがスマホアプリに提供された。もう1つは、避難した人や避難所の運営をサポートするために、さまざまな質問に応じるAIアバターの構築で、大規模言語モデルによる生成AIによって構築されている。

(図3)避難所をサポートするAIアバターの概要(出典:いわき市と東北大学、九州大学、イオン、イオンモールの共同発表によるプレスリリースより引用) イメージ
(図3)避難所をサポートするAIアバターの概要
(出典:いわき市と東北大学、九州大学、イオン、イオンモールの共同発表によるプレスリリースより引用)

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