ボールからシューズ、ラケットまでセンサーがスポーツの楽しみ方を変える
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AIやロボットなど最新のテクノロジーが、産業機器や日常生活だけにとどまらずスポーツの世界にも入り込み始めている。特に、アスリートだけではなく誰でもが楽しめるスポーツにおいて、すでにゲームの分析や上達へのサポートにまで活用されているのが、センサーを活用したスポーツ用品だ。
センサーを内蔵したスマートボールをFIFAがワールドカップで正式採用
2022年に開催された「FIFAワールドカップカタール2022」では、日本チームが予選を1位で通過するなど国内でも大きな盛り上がりを見せた。その大会で、初めてFIFAワールドカップの公式試合球として使われたのが、アディダスとKINEXONと共同開発したスマートボール「コネクテッドボール」だ。「コネクテッドボール」は内部にセンサーが組み込まれ、ボールの位置をキャプチャするテクノロジーが搭載されている。これによって、試合中のボールの動きをリアルタイムにトラッキングできる。
ボールトラッキングは、サッカーだけではなくバレーボールやテニスなどさまざまな球技で、試合中のボールの位置情報を追跡してリアルタイムで表示させる技術として注目されている。そこでは、センサーをはじめ、位置測位システムを用いてボールの正確な位置をリアルタイムで追跡するローカルポジショニングシステム(LPS)、超広帯域センサー(UWB)によるリアルタイムデータ通信などの技術が用いられている。
「FIFAワールドカップカタール2022」では、選手の手足やボールの位置を把握するために、12台ほどのトラッキングカメラがサッカースタジアムに設置された。そうした環境において、「コネクテッドボール」は内部に仕込まれた慣性計測センサーがボールの状態を検知し、データがビデオ判定のオペレーションルームに送信された。ボールトラッキングによりボール支配率も分析できるため、ゲームの最中にどちらのチームが優勢なのかを推測することも可能になった。

「コネクテッドボール」の慣性計測センサーはボール内部にひもで固定されている(出典:アディダスのプレスリリースより)
左右の足の動きを計測して走りをアドバイスしてくれるスマートシューズ
プロやアマチュアを問わず、ランナーはスマートウォッチやランニングウォッチなどを腕に付け、走った距離や時間などのデータを計測・記録している。そうして毎日のデータを記録することで、ランナーはどれくらい走ったか、速くなったかなどが分かり、モチベーションの向上などに役立てている。
アシックスとORPHEが共同で開発した「EVORIDE ORPHE」は、履いて走るだけでそれぞれのランナーに合った、よりよい走りかたを教えてくれるスマートシューズだ。最新バージョンの「ORPHE TRACK Run」では、センサーを足の甲に装着することで、専用のシューズを使わなくてもランニング中のデータが計測できるようになった。
単純にランニングのタイムを計測するだけならば、スマートウォッチでも可能だ。スマートシューズを使うメリットは、センサーが左右の足の動きを個々に捉えて、データを記録することにある。これによって、ランニングや歩行中のストライドの長さ、どのような姿勢で足が地面に付いているのか、どのような角度で蹴り出しているのか、足にどれぐらい衝撃がかかっているのかなどのデータを細かく分析できる。ランニング後には、アプリがいろいろと課題を指摘してくれるので、まるで自分専門のコーチからアドバイスを受けているような感覚が得られる。

スマートシューズによる時系列のフォームデータの表示(左)と動画によるコーチング(右)(出典:アシックスのWebページより)
市販のラケットに付けるだけでショットを分析してくれるスマートテニスセンサー
サッカーボールやランニングシューズだけではなく、テニスラケットにもセンサーを付けてレッスンに活用している例もある。ソニーが開発した「スマートテニスセンサー」は、対応する各社のテニスラケットに装着してプレイすることでさまざまなスイングデータが記録されるので、いろいろな角度から課題を見つけることができる。ソニーはさらにスポーツクラブのルネサンスと協力し、「スマートテニスセンサー」から得られるショットデータと、カメラで撮影したプレイ映像を組み合わせることでプレイを可視化し、プレイヤーの上達を支援する「スマートテニスレッスンシステム」を開発している。
「スマートテニスレッスン」では「スマートテニスセンサー」を使用したショットデータの計測に加えて、コートのネットポスト上にカメラを設置し、プレイヤーの動きを映像で記録する。計測されたショットデータおよび撮影されたプレイ映像は、コートサイドに設置された閲覧用のタブレットやスマートフォンで確認できる。
これによって、コーチはプレイヤーとより具体的に上達に向けた課題が共有でき、プレイヤーはコーチからのアドバイスと可視化された自分のプレイを比べることで、効率的に練習が行える。また、記録された映像およびショットデータやコーチからのアドバイスは、プレイヤーのスマートフォンからも繰り返し確認できるので、レッスン終了後の振り返りにも活用できる。

スマートテニスセンサーを活用してレッスンする「スマートテニスレッスン」(出典:ソニーのプレスリリースより)
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