AIが旅行の楽しみ方を変えてくれる

2024年7月22日

2006年12月に「観光立国推進基本法」を制定して以来、日本はさまざまな方法で観光産業に力を入れてきた。コロナ禍においても、「GoToトラベル」などの支援策を打ち立てて国内の観光事業者を守ってきた。コロナ禍で被った旅行需要減少の状況が徐々に回復する傾向にある中、新たな旅行支援ツールとしてAIの活用が注目されている。ここでは、国内外におけるAIを活用した観光・旅行支援サービスについて紹介する。

新たなツーリズム体験に期待されるAI活用

個人旅行において、まず悩むのが旅行プランの作成だろう。行きたい場所や観光スポットは決まっているが、そこへ行くためにもっとも効率が良いルートを検索したり、交通チケットや宿泊先を予約したりするのは意外と手間だ。本来、そうした手間も旅行の楽しみの1つではあるのだが、できるならそこに時間はかけたくない。

AIを旅行プランの作成に活用すると、どのように便利になるのか。例えば、行きたい場所がはっきり決まっている訳ではないが、急に休暇を取ることができたからどこかへ旅行したいと思った時でも、AIがさまざまなデータ分析を活用して旅行者の嗜好や現地の状況を把握し、パーソナライズされた旅行プランを提案してくれる。24時間対応可能なAIチャットボットならば、思い立った時にすぐにプランが立てられるようになる。こうしたサービスが提供されることで、旅行業界全体のサービスの質が向上し、顧客満足度が高まることが期待されている。

AIの活用はインバウンド対応においても、例えば海外からの旅行者がカメラで撮った文字を自動翻訳するアプリや、多数の言語に対応した音声翻訳アプリなどのツールを提供することができれば、外国人観光客の利便性も大幅に向上させることができる。

またオーバーツーリズムに悩む自治体にとっても、AIを活用したビッグデータの分析により、観光地の過密を防いだり、環境に優しいルートを提案するナビゲーションシステムを提供したりすることができる。さらに、旅行者一人ひとりの移動ニーズに対応し、複数の公共交通機関やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済などを一括で行うMaaS(Mobility as a Service)の導入も各自治体で検討されており、初めて日本に来た外国人旅行者だけではなく、旅行慣れしていない日本人にとっても便利に利用できるだろう。

このように、観光産業におけるAIの活用は、従来の旅行とは異なる魅力を持った旅の新たな価値を生み出すという面だけではなく、エコツーリズムやサステナビリティツーリズムなど環境を考慮した旅行の推進にも寄与すると期待されている。

AIアプリで旅行プランを自動作成するサービスが登場

AIを活用した旅行計画サービス「AVA Travel」を運営するAVA Intelligenceは、旅行に特化したAIがユーザーの好みや希望に最適化した旅行プランを1分足らずで作成するアプリ「AVA Travel」の提供を開始した。目的地や日程、人数、どのような旅行がしたいかなどの情報を入力すると、「AVA Travel」が独自に保有する観光スポットやホテル・レストランなどのデータを検索し、ユーザーの希望に適した旅行ルートを提案してくれる。

旅行ルートはマップ上で視覚的に確認することができ、どのスポットがどこに位置しているかをすぐに把握できるため、煩雑なプラン作成の手間を省き、少ないステップでユーザーの好みや条件に適した観光スポットやホテル・レストランなどを巡る旅行プランの作成が可能になるという。

(図1)AIが旅行プランを自動作成するAVA Travelのイメージ(出典:AVA Intelligenceのプレスリリースより引用) イメージ
(図1)AIが旅行プランを自動作成するAVA Travelのイメージ(出典:AVA Intelligenceのプレスリリースより引用)

ナビタイムジャパンも、旅行プランニング・予約サービス「NAVITIME Travel」のPC版において、生成AIを活用した旅行プラン提案機能の提供を開始している。「NAVITIME Travel AI」と呼ばれる同サービスは、ユーザーが旅行プランを作成する際に出発地点と目的地点を指定し、興味のある「テーマ」を選択すると、おすすめの観光スポットを最適な順番で巡る1日分の旅行プランを生成AIが提案してくれる。

「NAVITIME Travel」の既存の旅行プラン作成機能は、具体的な旅行プランや行き先が決まっているユーザーが、スケジュール作成のために利用することを想定していた。そこに生成AIを組み合わせることによって、行きたい場所に対し、周辺の観光情報や現地でどのような体験が可能かといったことなどが提案される。例えば、出発地点に東京・渋谷、目的地点に長野・諏訪湖を設定して「観光名所を巡りたい」というテーマを選択すると、生成AIが渋谷から諏訪湖までに向かう途中で立ち寄ることができるおすすめの観光スポットと旅行プランを提案してくれるという。

(図2)「NAVITIME Travel AI」の生成AIによる旅行プラン作成のイメージ(出典:ナビタイムジャパンのプレスリリースより引用) イメージ
(図2)「NAVITIME Travel AI」の生成AIによる旅行プラン作成のイメージ(出典:ナビタイムジャパンのプレスリリースより引用)

プラン作成から荷物リストの選択まで提案してくれるグーグル

グーグルが2024年5月14日に開催した開発者向けイベント「Google I/O 2024」において、今後数ヵ月以内に大規模言語モデル「Gemini」(生成AIチャットボット)のメンバーシップ向けアップグレード版「Gemini Advanced」に、新しい「旅行計画提案」を導入すると発表している。

「Gemini Advanced」に導入される新しい「旅行計画提案」は、旅行の日程や旅行先、参加人数をはじめ、参加者の特性や予約済みホテル情報、予約済みフライト情報などをユーザーが「Gemini Advanced」に伝えることで、旅行計画を提案してくれるサービス。旅行計画を変更したり詳細を追加したりすることも可能で、それに合わせて更新された旅行計画が提案される。

また、グーグルは「Gemini」に旅行先や旅程、航空会社などの移動手段、旅行先で楽しみたいアクティビティなどを元に荷物リストの作成をお願いすると、何を持っていくべきかといった最適な荷物リストが提案され、荷造りの負担を軽減してくれるようなサービスの追加も予定しているという。

(図3)旅行支援の機能も取り込まれる予定のグーグルの生成AI「Gemini」(出典:グーグルのWebページより引用) イメージ
(図3)旅行支援の機能も取り込まれる予定のグーグルの生成AI「Gemini」(出典:グーグルのWebページより引用)

グーグルのような検索サイトならば、将来的には日常的に検索リクエストの内容でユーザーの趣味嗜好や生活パターンなどを分析し、よりパーソナライズされた旅行計画をAIが自動的に提案してくれるようになるかもしれない。

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