テクノロジーの活用で人手不足やCX向上を図る小売の最先端
目次
今後、小売業は人手不足解消に向け、AIやIoT、ロボットなどのテクノロジーの活用のほか、消費者行動や価値観の変化に柔軟に対応する必要がある。そして、企業には、デジタルトランスフォーメーション・AI活用・サステナビリティ・新たな消費体験の提供に注力することで、競争力を維持・向上させることが求められている。ここでは、これらの課題に対応している最新の事例を紹介しよう。
無人決済システムで人手不足を解消
人手不足解消に向け無人決済システムを展開するのは、大手コンビニチェーンのファミリーマートだ。
同社は、昨年4月30日にオープンした「ファミリーマートJR浮間舟渡駅/S店」(東京都北区)に、TOUCH TO GOの無人決済システムを導入した。これにより、次世代の買い物体験を可能にするほか、通常の有人レジ店舗に比べ、時間節約ニーズの高い朝や移動の合間など、短時間で買い物ができるようになったという。
この店舗では、天井に設置されたカメラにより、入店した顧客が手に取った商品をリアルタイムで認識し、出口付近に設置された決済端末のディスプレイに購入商品と合計金額を自動で表示する。決済は、ファミペイを含むバーコード決済、交通系電子マネー、クレジット、現金が利用できる。

ファミリーマートJR浮間舟渡駅/S店の利用方法(出典:ファミリーマート)
ファミリーマートでは、オフィスビルや駅構内、市役所、学校関連施設、商業施設や物流施設の従業員休憩スペースなどへ無人決済店舗の出店を進めており、JR浮間舟渡駅/S店で39店舗目となる。
生成AIでCX向上
顧客満足度の向上に向け、生成AIを用いた対話型チャットサービスでLINE公式アカウントの「るるぶ+AIチャット」の提供を開始したのは、JTBパブリッシングだ。
「るるぶ+AIチャット」は、生成AI技術を活用し、ユーザーの要望や過去の会話内容からの趣味趣向に基づいて、「るるぶ情報版」や観光・イベントデータベース「るるぶDATA」をソースとしてパーソナライズされた情報を提供する。
生成AIキャラクター「るるブルくん」との対話を通じて、旅行だけではなく、週末の近所のおでかけ先が決まっていないときにも利用でき、24時間いつでもどこでも相談に乗ってくれる良きパートナー(=友だち)を届けようという取り組みだ。

「るるぶ+AIチャット」のトーク画面
また、2024年4月にサービスインした「るるぶ+(Web/app)」や「るるぶ&more.」、「るるぶKids」と連携し、ユーザーの居住地や属性情報に基づく定期的なメッセージ配信により、自分に合った旬の情報や深掘りした季節特集記事を届けている。
同社では今後「るるぶ+AIチャット」の機能をさらに充実させ、ライフスタイル関連のコンテンツや海外旅行情報の拡充、宿泊予約機能との連携を進めていくという。
コンタクトセンター向け通話解析AIでCX向上
ニトリは、コンタクトセンター向け通話解析AIを導入し、「コンタクトセンター」プロジェクトを推進している。これにより、顧客の声や問合せの有効活用、およびオペレーターの対応品質を向上させ、顧客満足度の向上を目指している。
コンタクトセンター向け通話解析AIは、コムデザインのクラウド型CTIサービス「CT-e1/SaaS」と、RevCommの電話解析AI「MiiTel Phone(ミーテルフォン)」を組み合わせ、顧客とのコミュニケーションの音声解析と要約を行う。
「CT-e1/SaaS」で録音された音声データを「MiiTel Phone」に取り込み、通話終了後数十秒で文字起こしを行う。そして、生成AIによる要約文が作成され、ニトリの顧客管理システム「coNnect」へ転送される。有効なキーワードを事前に登録することで、生成AIが「今後取るべき方針」を表示するという。
自動発注サービスで作業時間と廃棄ロスを削減
おかやまコープは、ロス削減と人時(にんじ)改善を目的にシノプスの需要予測型自動発注サービス「sinops-CLOUD」を2024年10月、全店舗で導入した。
導入したのは、店舗ごとの在庫・売上情報をリアルタイムで把握できるリアルタイム在庫サービスや、天候・イベント等を加味し、時間帯別の客数を予測する客数予測サービスのほか、日配品に特化した需要予測型自動発注サービスなどである。
これらの機能を導入したのは、牛乳、パン、畜肉加工品などの日配カテゴリで、その結果、発注にかかる作業時間を1店舗1ヵ月あたり約65.8時間削減したという。これにより、全店だと年間約8,680時間削減される見込みだという。
また、値引き・廃棄ロス率は現状より約1.0%改善、在庫金額は畜肉加工品で25%、日配で30%改善し、これにより当初の目標値の約4倍の売上・粗利改善を達成する見込みだという。
ウエルシアが新規出店時の売上予測精度向上のためAIサービス導入
ウエルシア薬局は2025年度、True Dataの新規出店時の売上を予測するサービス「SalesSensor(セールスセンサー)」を導入し、物販と調剤の売上予測を実施して店舗開発担当者の作業負担を軽減しようとしている。
「SalesSensor」は小売業向けの新店舗売上予測サービスで、小売業が保有する店舗売上実績データや店舗設備情報に加え、新店舗候補物件周辺の商圏、人流、競合店などの外部データをAIが分析し、地域特性を加味した売上予測を自動的に行う。
社内にデータサイエンティストがいない小売業でも、高精度な売上予測により、新店舗売上の最大化と店舗減損の最小化につなげることが可能だという。

SalesSensorイメージ画面(出典:True Data)
屋内行動分析でCX向上
ホームセンターを展開するカインズは、同社のモバイルアプリ「商品マップ」に、ソニーの屋内行動分析プラットフォーム「NaviCX」(ナビックス)の測位機能を搭載した。

NaviCXを搭載したモバイルアプリ「商品マップ」(出典:カインズ)
「NaviCX」は、店舗内や施設内での人の「位置」「滞在時間」「動線/経路」に加え、「向き」の情報を取得できる。広大な店舗面積と多数の商品アイテムを持つカインズでは、商品の場所を尋ねる問い合わせが多く、ストレスフリーな買い物体験の実現が課題だったという。
NaviCXにより店内での自分の位置を正確に把握して求める商品までたどりつきやすくなり、買い物時の利便性が向上したという。また、NaviCXから得られるデータを通じて、施策の効果を把握し、PDCAサイクルを回すことが可能となったという。
NaviCXを利用できる店舗は、2025年1月時点で223店舗に広がっており、今後、全店舗242店へ導入が予定されているという。
ユーハイム、関西万博で「未来のお菓子屋さん」
ユーハイムは、大阪・関西万博内の「EARTH TABLE~未来食堂~」エリアに、AI搭載バウムクーヘン焼成機「THEO(テオ)」を実装したカフェ「THEO'S CAFE by JUCHHEIM(テオズカフェ バイ ユーハイム)」を出店する。

「THEO'S CAFE by JUCHHEIM」(出典:ユーハイム)
「THEO'S CAFE by JUCHHEIM」では、3台のAI職人「THEO」が焼きあげるバウムクーヘンを「食べ放題」で提供する。
「THEO」は、同社が開発したバウムクーヘンAI職人。職人が焼く生地の焼き具合を各層ごとに画像センサーで解析し、その技術をAIに機械学習させデータ化、無人で職人と同等レベルのバウムクーヘンを焼きあげることができる。ユーハイムの熟練職人のほか、ロボット工学の研究者、AIの専門家、デザイナーなどさまざまなプロフェッショナルの協力のもと、約5年の期間を経て開発した。

THEO(出典:ユーハイム)
通常、お菓子は大規模な工場で大量生産し、全国の拠点へ配送、各地で販売する必要があるが、その過程で環境に負荷がかかり、顧客の手元に届くまでに、ある程度の日数が経過する。
THEOは人間の職人と遜色なく、自動でバウムクーヘンを焼成することが可能で、小型で配送・設置も比較的容易なため、誰でも・どこでもバウムクーヘンを焼くことがでる。ユーハイムは、THEOを利用した店舗は、「未来のお菓子屋さん」のあり方だとしている。
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