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生成AI特化の新会社で、業務プロセスに深く入り込むプロダクトを生み出す

2023年11月20日
話し手
  • エクサウィザーズ 常務取締役
  • 大植 択真

昨年末から、ChatGPTを筆頭に生成AIが注目されている。そこで、2021年に、米調査会社CB Insightsによる全世界6,000社以上のスタートアップを対象にした「世界で最も有望なAIスタートアップ100社(AI 100)」に選出されているエクサウィザーズでAI事業を統括する常務取締役の大植 択真(おおうえ たくま)氏に、生成AIのビジネス市場状況や事業戦略を聞いた。

エクサウィザーズ(https://exawizards.com/)は、企業向けChatGPTサービス「exaBase 生成AI powered by GPT-4」や、ChatGPTを活用したIR業務支援サービス「exaBase IRアシスタント powered by ChatGPT API」といった生成AIサービスを提供しているAIスタートアップである。

同社は2021年に、米調査会社CB Insightsによる全世界6000社以上のスタートアップを対象にした「世界で最も有望なAIスタートアップ100社(AI 100)」に選出されている。また、生成AIサービスによる日本企業の生産性向上を目指し、新会社の「株式会社Exa Enterprise AI」を設立し、2023年10月2日に業務を開始した。

こうした日本のAIスタートアップを代表する1社であるエクサウィザーズで、AI事業を統括する常務取締役の大植択真氏に、生成AIのビジネス市場状況や事業戦略を聞いた。なお、同氏は新会社Exa Enterprise AIの代表取締役社長も務めている。

エクサウィザーズ 常務取締役 大植 択真氏
エクサウィザーズ 常務取締役 大植 択真氏

エクサウィザーズでは、どういった業務を行ってきたのでしょうか?

大植氏:2018年1月に社員が30名ぐらいの時に入社し、営業、新規事業・サービスの企画立ち上げ、アライアンスや業務提携など、会社を成長させることであればどんな業務でもやるといった感じで動いていました。エクサウィザーズでいくつかの事業責任者を経験して、その後役員をしています。

大学院卒業後、研究内容とは異なるコンサルティング会社に行かれましたが、それはどうしてですか?

大植氏:技術を社会にどう実装していくのか、ビジネスにどう使っていくのかに関心がありました。当時、DXという言葉が出始める少し前くらいのタイミングでした。技術によって大企業の経営がどう変わるのかに興味や関心が高く、経営としてのデジタルやデータを捉えられる環境はどこなのかと考え、コンサルティング会社がいいと思いました。

中でも、デジタルに力入れていたように思ったのがボストンコンサルティンググループでした。ただ、コンサルティング会社はある種の修行としてとらえており、いつかは自分で事業を立ち上げることや、事業を成長させることに挑戦してみたいと思っていました。AIやデジタルを強みにしている会社の中でも、自分の年齢で大きな意思決定をしようとするとやはり大企業だと難しい。そこでスタートアップであったエクサウィザーズに入社しました。

これまで日本では、何十年もAIはやってきていますが、昨年からChatGPTがすごいスピードで普及しています。その理由は何だと思いますか?

大植氏:GPT自体は5年前に登場し、3、4年前からAI業界では知られていました。ここまで一気に広がったのは、チャット型のインターフェースが実現したことで、企業の意思決定者層が直接触れられるようになったことが大きいと思っています。これまでB2Bの世界に閉じていたのが、B2Cの世界に開放されたと言えるでしょう。これによって生成AIが日本のビジネス市場に急速に拡大したのではないでしょうか。

生成AIサービスの開発、販売に特化した新会社「株式会社Exa Enterprise AI」を立ち上げ、分社化しましたが、その理由を教えてください。

大植氏:Exa Enterprise AIは、オフィスワーカーの生産性や業務品質を向上するだけではなく、「人の可能性を解き放ち、新たな挑戦にむきあえる社会に」をビジョンに、より創造的で挑戦的な社会を作り出すことに貢献していきたいです。

設立の理由は2つあり、ひとつがスピードアップで、もうひとつがカルチャーの醸成です。スピードアップの視点でいうと、素早く意思決定していく組織とするためです。海外を中心に生成AIのマーケットは非常にスピードが速いので、生成AIドリブンなプロダクトを市場に素早く投下することが求められています。一段と早い経営的な意思決定とプロダクト・サービスの開発ができる、スタートアップ体制にしたということです。

もう一方のカルチャーの醸成についてですが、Exa Enterprise AIで扱うChatGPTサービスは様々な多くの顧客に一気に使っていただくプロダクト・SaaS型です。そうしたものを展開していくのが得意な人材で、カルチャーを築いていった方がより強い組織と事業になっていくと考えています。

分社化したのは、生成AI市場が今後大きく伸びていく見通しを持っているためですか?

大植氏:生成AIの市場が伸びていくのは、間違いないと思っています。ポイントは検索ではなく生成にあると思います。これまでのAIは、画像で異常を検知するとか、検索で情報を探すといった用途を中心に使われていましたが、生成に広がるとAIに作業をさせることができます。文章の作成もそうですが、画像生成であればこれまでデザイナーがやっていた仕事も一部代替できるかもしれません。オフィスワーカーなど知的生産性が求められる仕事を大きく変える可能性を非常に感じています。

ChatGPTは、プロンプトの入力方法によって業務で活用できるかどうかが決まるイメージがありますが、大植さんはどう思っていますか?

大植氏:プロンプト活用を高度化していくには、最初に研修を1〜2時間受けるだけでも、だいぶ違うと思います。あとは、現場でうまくいったプロンプトを社内で横展開する仕組みを作るといった観点が重要だと思います。どんなプロンプトを入れるべきか全社など広範囲でサポート体制を作って、活用できるようにするところが肝と考えています。

プロンプトが活用ポイントとして大きいのは間違いありませんが、LangChainにも注目すべきと思っています。大規模言語モデルを用いたアプリケーションを効率的に開発するためのライブラリで、業務プロセスに深く入り込む形でのカスタマイズが可能となります。

例えば会社の規定集をベースにChatGPTと対話ができるようになります。例えば、出張旅費について聞くと、旅費規定の中から関係があるところを参照して、質問に応じた回答ができるようになります。ユースケースに特化した、業務プロセスに紐づいた形での生成AIの使い方ができます。これらが生成AI活用で競争力を上げるポイントになると思います。

生成AIをDXに活用する上でのポイントはありますか?

大植氏:経営者や管理職が自ら使うのが1つ目です。2つ目が他責思考ではなく、自責思考で使うことが大事だと思っています。「プロンプトを入れてみたけど、AIが求めている答えを返してくれなかった」と言う人がいますが、ほとんどはプロンプトに不備があるからです。要は、部下にうまく指示を出せるかどうかと同じです。

3つ目として、若い人の力を引き出すことも大事です。ChatGPTなどの生成AIは、若い人のほうが圧倒的に使いこなして、業務生産性を高めています。現場でやる気のある若者を発掘して引っ張り上げ、そうした人たちの取り組みを他の人もできるようにする必要があります。

この点では『DX人材育成』がひとつのキーワードだと思っています。 日本の企業ではツールを入れただけでは活用が進まないケースが少なくないので、教育をうまく設計していくことが、社内に普及させる上ではポイントになるのではないでしょうか。

御社は、主にどのような生成AIサービスを提供していますか?

大植氏:現時点では2つのサービスをリリースしており、1つが「exaBase 生成AI」という法人向けのChatGPTサービスです。日本のエンタープライズ企業がChatGPTを使う上で気にするポイント、例えばセキュリティや使いこなすためのサポートといったものを完備しています。1ユーザー当たりの価格も抑えており、全社で導入いただける汎用的な側面があるサービスです。

もうひとつが「exaBase IRアシスタント」という、企業のIR担当者が株主総会や決算説明会向けにQ&Aを作る業務を支援するサービスです。有価証券報告書や決算説明資料といったドキュメントをアップロードすることで質問と回答を自動生成してくれます。前述のLangChainを活用して実現した、業務のプロセスやフローに深く入り込む形で生成AIを搭載したプロダクトです。それらの情報を守るセキュリティにも力を入れています。

マイクロソフトさんもAzure OpenAIでセキュリティ強化をポイントにしていますが、「exaBase 生成AI」との差別化ポイントはありますか?

大植氏:まずわれわれもマイクロソフトさんのOpenAI APIを使っていますので、競合関係というよりは共存関係にあると考えていただいたほうがいいと思います。

Azure OpenAIのAPIを使うということは、自社で内製し運用するケースが多いと考えられます。独自にインターフェースや機能を開発し、セキュリティ以外にコンプライアンスや管理の企業を追加して維持し続ける必要がありますが、容易ではありません。

また、我々は多くの顧客に提供しているため、要望を聞きながら新機能を迅速に追加していきます。例えば、企業独自のファイルをアップロードして、それに対して問い合わせる機能を提供し始めています。

新会社の事業戦略をお聞かせください。IR向けサービスのように、業務に特化したサービスを横展開して、事業拡大を図っていく方向でしょうか?

大植氏:市場の期待を超えるサービス開発をしていきたいです。例えば、日本のオフィスワークを自動運転化したいと思っています。自動車の自動運転はレベル0からレベル5まであり、今はレベル2程度という話があります。オフィスの業務もルーティンワークをすべて人間がやっている段階から、完全自動化するまでのステップがあると思っています。

そうしたオフィスの自動化を推進するサービスを開発していきたいと思っています。 今はIRが対象ですが、他のコーポレートの領域でも「~アシスタント」というものを展開しようとしています。それらを統合して、生成AI時代のERP化することを見据えています。

こうした取り組みの先に、Exa Enterprise AIがビジョンとして掲げる、「人の可能性を解き放ち、新たな挑戦にむきあえる社会に」という世界を実現したいと思っています。

エクサウィザーズ 常務取締役、Exa Enterprise AI 代表取締役社長 大植 択真氏
京都大学工学部卒業。京都大学工学研究科修了(都市計画、AI・データサイエンス)。2013年、ボストンコンサルティンググループに入社。事業成長戦略、事業変革、DX推進、新規事業立ち上げなどの多数のプロジェクトに従事した後に2018年、エクサウィザーズ入社。2019年4月より、AI事業管掌執行役員として年間数百件のAI導入・DX実現を担当。企業の経営層や管理職向けDX研修の講師実績が多数ある。2020年6月に取締役、2023年6月に常務取締役就任。同年10月よりExa Enterprise AIの代表取締役も務める。兵庫県立大学客員准教授。兵庫県ChatGPT等生成AI活用検討プロジェクトチーム アドバイザー。著書に「Web3時代のAI戦略」(日経BP、2022)、「次世代AI戦略2025 激変する20分野 変革シナリオ128」(日経BP、2021)。

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