AI×先端観測技術で進化する冠水・洪水ソリューションの最新動向

2026年7月21日

近年、都市インフラの老朽化や気候変動の深刻化により、災害リスクは年々高まっています。こうした中、AIと先端センサを活用した"予測・監視・判断"を一体化するスマート防災の重要性が自治体や企業を中心に求められています。

国土交通省と内閣府がAI洪水予測高度化プロジェクトを推進

国土交通省と内閣府は、線状降水帯による豪雨の激甚化を背景に2024年度から本格的に「AI洪水予測高度化プロジェクト」を始動し、AIと革新的気象観測技術を組み合わせた新しい洪水予測システムの構築を進めています。
2024年度は、豪雨の発生要因となる水蒸気量・熱量の流入を直接観測するためのライダー観測網の整備が開始されました。鹿児島県と長崎県で観測サイトの整備が進み、2地点体制の構築が進展したほか、ライダー・衛星・レーダー・AMeDASなどを統合した「統合気象データプラットフォーム」が構築され、AIモデルが利用可能な形式でデータを自動加工・配信する仕組みが整えられました。さらに、高次元の複雑なデータを視覚的にわかりやすい低次元のマップに変換する「教師なし学習」のニューラルネットワーク手法である自己組織化マップ(SOM:Self-Organizing Map)と人工ニューラルネットワーク(ANN:Artificial Neural Network)を組み合わせた豪雨発生診断モデルが開発され、九州での豪雨事例で有効性が確認されています。AI洪水予測では、筑後川・球磨川・川内川の流量・水位モデルが構築され、6時間先水位予測の誤差が1〜7%(筑後川)に改善するなど、物理モデルを上回る精度向上が示されました。
2025年度は、観測・データ統合・AIモデル開発の3分野で計画が大きく前進しました。まず、水蒸気や気温を高精度に観測するライダー2地点の運用が本格化し、これらを含む多様な気象データを統合する基盤が整備されました。次に、統合データを活用したAIによる降雨量・河川流量・水位予測モデルが完成し、従来の物理モデルを補完し得る精度が確認されたほか、AI予測を自治体の避難判断や企業BCPに活用する運用手法も整理され、2025年度後半からは実証運用フェーズに移行しました。さらに、将来の観測網拡大を見据えた低コストライダーの技術評価も開始され、次世代の洪水予測インフラ構築に向けた基盤が着実に整備されています。
2026年度以降は、自治体の避難判断支援、企業BCP、流域治水、ダム操作支援などへの応用が期待され、革新的観測技術とAIを組み合わせることで、「逃げ遅れゼロ」を実現する次世代の洪水予測インフラ構築を目指しています。

出典:革新的な統合気象データを用いた洪水予測の高精度化 令和7年4月国土交通省 イメージ
出典:革新的な統合気象データを用いた洪水予測の高精度化 令和7年4月国土交通省

Arithmer(アリスマー)が浸水AI で河川氾濫を事前予測

東京大学数理科学研究科発のスタートアップ企業であるArithmerの浸水AIは、数学とAIを組み合わせて洪水・氾濫リスクを事前に可視化するスマート防災ソリューションとして注目されています。特徴は、地域ごとに最適化したAIモデルを構築し、降雨量・河川水位・地形データを入力することで、氾濫の発生タイミングや浸水範囲を高精度に予測できる点です。生成された浸水シミュレーションは3Dで表示され、建物や道路の被害想定を直感的に把握できるため、自治体の避難判断や住民への情報提供に大きく貢献しています。
福島県広野町では、Arithmerの浸水AIを活用して豪雨時の氾濫シナリオを事前に作成し、避難行動の迅速化につなげた事例が評価され、国の「Digi田甲子園2023」でも優良事例として紹介されました。また、災害後の保険金査定にも応用され、従来1か月以上かかっていた査定期間を大幅に短縮する効果も確認されています。
Arithmerの浸水AIは、予測・可視化・復旧支援までを一体で支える次世代型の防災ソリューションとして、自治体・企業の双方から導入が進んでいます。

浸水AIの技術紹介 出典:Arithmer Webサイト イメージ
浸水AIの技術紹介
出典:Arithmer Webサイト

ミライト・ワンのスマート防災を加速する冠水センサソリューション

ミライト・ワンは、スマート防災ソリューションとして、「冠水センサシステム(簡易型低価格モデル)」を提供しています。
簡易型低価格モデルは、必要最小限の機能に特化することで導入コストを大幅に抑えた冠水検知システムです。センサが冠水の発生・復旧を検知するとメール通知を行うシンプルな構成で、電池駆動(約5年)とLPWA通信により、電源工事や配線が不要となっています。JIS規格準拠の外装で耐久性も高く、市販金具で設置できるため、広いエリアを低予算でカバーできる点が特徴です。
このソリューションは、「低コストで広域を監視したい」というニーズに応え、自治体の道路冠水対策から企業の敷地管理まで、幅広い現場で活用できます。

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