インフラの老朽化に関する現状・課題とは?対策できることや事例も紹介
目次
- ▼1. インフラの老朽化による影響
- ▼2. 【データで解説】インフラの老朽化に関する現状・課題
- ・建設後50年以上経過する社会資本の割合
- ・市区町村における技術職員の不足状況
- ・市町村における土木費の減少
- ▼3. インフラの老朽化対策としてできること4つ
- ・①事後保全から予防保全への移行
- ・②インフラ機能の集約・再編成
- ・③地域インフラ群再生戦略マネジメントの推進
- ・④新技術の活用促進
- ▼4. インフラの老朽化対策で活用できる新技術
- ・ドローンによるインフラ設備の点検
- ・AIによる水道管の劣化診断
- ・水道スマートメーターによる遠隔監視・検針
- ・冠水センサシステム
- ▼5. インフラの老朽化対策に関する取り組み事例3つ
- ・橋梁の集約・再編を行う「橋梁トリアージ」|富山県富山市
- ・地域の防災機能強化に向けた橋梁の集約|京都府福知⼭市 14
- ・広域連携による市町村事務の共同実施モデル構築|大阪府貝塚市など
- ▼6. まとめ
高度経済成長期に集中的に整備された日本の社会インフラは、今後一斉に老朽化を迎えると懸念されている。インフラの劣化は事故や経済活動の停滞を引き起こすリスクがあり、早急な対策が求められている。
本記事では、インフラ老朽化の現状と課題、政府による取り組みや老朽化対策、効率的に保全業務を行うための新技術、自治体による事例について紹介する。
インフラの老朽化による影響

道路や上下水道、橋、トンネルなど、人々の生活を支える社会インフラは、高度経済成長期に整備されたものが多く、現在ではその老朽化が急速に進行しつつある。インフラの老朽化が進むと、設備の劣化や破損により事故が起こりやすくなり、公共の安全や経済活動に深刻な影響を及ぼすリスクが高まってしまう。
実際、2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没は、下水道管の破損が原因と考えられている。トラック運転手が被害に遭ったほか、道路交通規制や近隣住民の避難、製造業における工業用水供給の緊急停止など、地域全体に影響が広く及ぶ事態となった。
このような事故を未然に防ぐためにも、インフラの老朽化対策が全国で喫緊の課題となっている。
【データで解説】インフラの老朽化に関する現状・課題
ここでは、国土交通省の資料を参考に、インフラの老朽化に関する現状と課題について、データを用いて解説する。
参考:
インフラの老朽化対策について|国土交通省
インフラの集約・再編等の推進に向けた【分野横断】事例集|国土交通省
建設後50年以上経過する社会資本の割合
高度成長期以降に整備された社会インフラのうち、道路橋やトンネル、河川管理施設、水道管路、下水道管渠、湾岸施設といった多くの社会資本では、今後20年で建設後50年以上経過する割合が急速に増加すると見込まれている。
国土交通省のデータによると、2040年に道路橋は約75%、湾岸施設は約68%が、建設から50年以上経過する見通しで、とくに高い割合を示している。
社会資本の老朽化状況は使用状況や立地環境などによって変わるものの、一斉に老朽化する状況が差し迫っていると考えられる。
市区町村における技術職員の不足状況
社会資本の多くは市区町村が管理しており、その維持や管理業務を担う技術職員が不足している点も深刻な課題としてあげられる。
国土交通省の資料によれば、2005年から2024年にかけて、全体の職員数は約7%の減少にとどまる一方、土木部門では13%減少しており、技術系職員の不足が顕著になっている。
また、技術職員が5人以下の市区町村は全体の約5割を占め、さらに4団体に1団体が「0人」と回答していることも明らかになった。
このような体制が続けば、人手不足のためインフラ設備の適切なメンテナンスが行えなくなり、インフラの劣化進行を早めてしまうリスクがある。
市町村における土木費の減少
自治体における土木費とは、街路、公園、下水道等の整備、区画整理等に要する経費を指す。土木費は、地域の生活基盤を維持するために必要な予算といえるだろう。
しかし、市町村の土木費は長期的に見て減少傾向にある。ピーク時である1993年の11.5兆から2011年には半減し、2021年には約6.5兆となった。これはピーク時の約6割程度で、公共事業に十分な予算が回せていないことが推察される。
インフラの老朽化対策としてできること4つ
ここでは、政府によって取り組みが進められている4つのインフラ老朽化対策について解説する。
1.事後保全から予防保全への移行
2.インフラ機能の集約・再編成
3.地域インフラ群再生戦略マネジメントの推進
4.新技術の活用促進
①事後保全から予防保全への移行
インフラの老朽化を阻止し、事故や企業活動の停止を防ぐためには、従来の「事後保全」から「予防保全」へ移行することが重要となる。事後保全ではインフラが大規模に損傷してから修理を行うのに対し、予防保全はダメージを受ける前にメンテナンスを計画的に行う考え方である。
予防保全のメリットとして、事後保全よりも大幅なコスト削減につながる点があげられる。2018年から2048年の30年間において、事後保全では約2.4倍もの維持管理・更新費がかかるところ、予防保全では約1.3倍の増加にとどまるという試算もある。
そこで国土交通省では、2014年に策定された「インフラ長寿命化基本計画」に基づき、中長期的な維持管理計画の立案やトータルコストの削減などに取り組んでいる。
②インフラ機能の集約・再編成
インフラの老朽化対策として、複数の施設や機能を集約・再編成することで、予防保全を行いやすい体制作りが進められている。これは、地域の将来像を踏まえ、必要性の低い施設を廃止し、集約化を進めることを目的とした取り組みである。
例えば、秋田県では老朽化する下水処理場の更新を行わず、別の処理場で汚水処理を行うなど、効率的な事業運営を実施した。また、香川県では約50年経過し、小学校の統廃合であまり使われなくなった横断歩道橋の撤去に取り組んでいる。
このような取り組みは「インフラストックの適正化」とも呼ばれ、設備更新にかかる費用や負担軽減にもつながると期待されている。
③地域インフラ群再生戦略マネジメントの推進
インフラの長寿命化を図るうえで、設備の点検や更新を担う人材確保が不可欠となる。しかし、前述のように市区町村において技術職員の不足が深刻な課題となっている。
そこで、広域・複数・他分野のインフラを「群」として考え、効率的にマネジメントを行う「地域インフラ群再生戦略マネジメント」が実施されている。
例えば、複数の市や町が隣り合わせで存在する場合、いずれかがリードして連携を図る体制が想定されている。また、道路や上下水道、河川など多分野のインフラ設備管理をまとめて行うケースも考えられる。その他、自治体と技術者、事業者それぞれを束ねてインフラのメンテナンスを計画的に行うケースも見受けられる。
地域インフラ群再生戦略マネジメントによって、技術職員が0人のエリアでも、近隣の市や町と連携して補完しあえるようになる点がメリットといえる。
④新技術の活用促進
インフラの予防保全を効果的に進めるうえで、新技術の活用は不可欠と考えられる。新技術の活用で、人手不足の解消や業務効率化につながるだろう。そこで政府は、新技術を導入するよう自治体を支援する取り組みを実施している。
具体的には、新技術を活用する取り組みを優先的に補助したり、インフラメンテナンスの優れた事例や技術開発を表彰したりするなどの活動に取り組んでいる。インフラの老朽化対策で活用できる新技術については、次の章で解説する。
インフラの老朽化対策で活用できる新技術
ここでは、インフラの老朽化対策として活用が期待されている新技術の例を紹介する。
●ドローンによるインフラ設備の点検
●AIによる水道管の劣化診断
●水道スマートメーターによる遠隔監視・検針
●冠水センサシステム
ドローンによるインフラ設備の点検
現在、ドローンによるインフラ設備の点検が注目されている。老朽化したインフラ設備の点検作業は、高所や足場のない場所での作業を伴うことがあり、安全面が課題である。
そこでドローンを活用すれば、目視では難しい箇所の画像や映像を取得でき、劣化や損傷の見落とし防止につながるだろう。また、足場のない水管橋でも上空からドローンが点検作業を行えるため、職員の安全性も確保できる。
株式会社ミライト・ワンは「ドローンフライトソリューション」を提供し、ドローンを活用してインフラ点検を行っている。ドローンに搭載するセンサやズームカメラ、赤外線カメラなどの機材を用意し、ドローン運航ノウハウを持つパイロットがさまざまな撮影ニーズにお応えしている。詳しくは、以下のサイトをチェックしてみてほしい。
AIによる水道管の劣化診断
地中に埋設された水道管の劣化状況を把握するために、AIを活用した劣化診断技術が導入されている。
劣化診断では、水道管の設置年や材質、位置などの基本情報と環境ビッグデータを組み合わせてAIが分析し、劣化リスク予測を行う。管路1本から劣化状況を診断でき、各自治体は漏水が発生する前に管路更新計画を策定できるようになる。
株式会社ミライト・ワンは、「水道管劣化予測・影響度評価・更新計画策定ソリューション」を提供し、水道管の劣化状態を予測している。これは、水道事業体の管路データと漏水履歴情報を活用し、環境データベースとAIなどにより、水道管の破損リスクや劣化状態を予測するソリューションである。
さらに、影響度評価によって漏水発生時のビジネスリスクをマップ上に可視化し、更新計画の立案を自動で実施することができる。

詳しくは、以下のサイトをチェックしてみてほしい。
水道スマートメーターによる遠隔監視・検針
水道スマートメーターを活用することで、水道使用量の検針業務を遠隔から行える。現地訪問による検針が不要となり、人手不足の解消や大幅な業務効率化につながると期待されている。
株式会社ミライト・ワンは、工業用水の流量を遠隔から監視し、検針までできる「水道スマートメーター遠隔監視システム」を提供している。従来、工業用水の検針業務においても、人手不足や紙媒体によるデータ管理に手間がかかっていた。水道スマートメーター遠隔監視システムは、流量管理業務の効率化はもちろん、災害時における初動対応の迅速化にも貢献するだろう。
また、本システムで使われている計器盤はベンダーフリーで、さまざまなデータ通信方式に対応しているため、どの製品にも設置できる点も特徴の一つとなっている。

詳しくは、以下のサイトもチェックしてみてほしい。
水道スマートメーター遠隔監視システム
「水道スマートメーター遠隔監視システム」をクラウド化、水道事業体向けに提供開始 ~工業用水の運用維持管理を効率化~
冠水センサシステム
冠水センサシステムとは、道路冠水や内水氾濫をリアルタイムで検知し、マップ上で可視化するシステムを指す。冠水発生時、すぐにメールで担当者へ通知するため、水防のための安全対策として利用できる。
株式会社ミライト・ワンは、冠水状況を検知してマップ上にわかりやすく表示させる「MaBeeeML冠水センサシステム(管理コンソール付)」を提供している。これは、監視したい水位に合わせて設置したフロート式センサが冠水を検知すると、通信ユニットがクラウドへ通信し、管理画面のマップ上にある検知ステータスを更新する仕組み。その後、冠水や浸水状況に関するメールが担当者にリアルタイムで送付される。

また、「冠水センサシステム(簡易型低価格モデル)」も提供しており、設置・運用コストを抑えながら、必要十分な機能を確保したい自治体や企業に向いている。
このシステムは、周辺のインフラ設備などに対する水害の拡大を防ぐ有効な手段となるだろう。詳しくは、以下のサイトをチェックしてみてほしい。
インフラの老朽化対策に関する取り組み事例3つ
ここでは、インフラの老朽化対策に関する3つの取り組み事例を紹介する。
●橋梁の集約・再編を行う「橋梁トリアージ」|富山県富山市
●地域の防災機能強化に向けた橋梁の集約|京都府福知山市
●広域連携による市町村事務の共同実施モデル構築|大阪府貝塚市など
橋梁の集約・再編を行う「橋梁トリアージ」|富山県富山市
富山県富山市では、橋梁の老朽化が深刻化しているという課題を抱えていた。なかには腐食が進み、耐荷性が低下したことで通行止めになっている橋も見られた。
そこで富山市では「橋梁トリアージ」の考え方を導入した。これは、道路や橋梁の位置付け・役割などを再評価しながら、技術的性質も考慮して管理区分を設定し、補修措置の優先度を決めていく取り組みである。
その結果、一部の橋の撤去工事を2023年に実施し、近くにある別の橋へその役割を集約することで、利用者の安全確保と将来的な維持管理コストの低減を実現した。
参考:広域的・戦略的なインフラマネジメントの推進|国土交通省
地域の防災機能強化に向けた橋梁の集約|京都府福知山市
京都府福知山市では、洪水時に水没する老朽化した橋梁が2つあり、防災上の課題を抱えていた。
そこで、福知山市は防災機能強化を目的に、2つの橋梁の撤去と集約を実施。洪水が発生しても防災拠点へのアクセスを可能とする新しい橋梁を設置することで、地域の安全なルートを確保した事例である。
広域連携による市町村事務の共同実施モデル構築|大阪府貝塚市など
大阪府貝塚市を含む8市4町は、国土交通省の地域インフラ郡再生戦略マネジメントのモデル地域に選定された。少子高齢化や人口減少、インフラの老朽化が進むなか、継続的に公共サービスを提供するために、泉州地域全体のインフラを管理する組織作りに取り組んでいる。
2025年度は、ドラレコとAI診断を活用した路面調査、官民学連携による劣化分析、業務効率化のための基準設定などを実施する予定としている。
まとめ
社会インフラの老朽化が進むなか、予防保全やインフラの集約・再編、新技術の導入が重要視されている。今後、自治体や企業が連携し、地域ごとの課題に適した対策を講じていくことが重要となるだろう。
株式会社ミライト・ワンは、ドローンによるインフラ点検、AIを活用した劣化予測システム、業務効率化につながる水道スマートメーター、冠水センサシステムなど、さまざまな技術やソリューションを通じて、企業や自治体のインフラ保全業務を支援している。ソリューションについては以下のサイトで解説しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
ドローンフライトソリューション
水道管劣化予測・影響度評価・更新計画策定ソリューション
水道スマートメーター遠隔監視システム
MaBeeeML冠水センサシステム(管理コンソール付)
冠水センサシステム(簡易型低価格モデル)
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