小売/流通(リテール)テックの現状と今後

2025年3月10日

小売/流通(リテール)テックとは

近年、小売業界におけるデジタル変革の波が加速しており、その中心に位置するのが「リテールテック」です。リテールテックとは、「リテール(小売)」と「テック(技術)」を組み合わせた造語で、小売業界におけるデジタル技術の活用を指します。AIやIoTをはじめとしたITの発展と共に徐々に広まってきた概念で、消費者の購買体験を向上させるための新しい技術やサービスを提供しており、多くの企業がこの分野に注目しています。

リテールテックの背景として、消費者の購買行動の変化が挙げられます。スマートフォンの普及やオンラインショッピングの増加に伴い、消費者はより便利でパーソナライズされたショッピング体験を求めるようになりました。キャッシュレス決済はレジ待ちの時間を短縮し、ロボット化は在庫管理や商品陳列の効率化を図り、AI活用は顧客の購買行動の分析やパーソナライズされた商品提案に役立つと期待されています。
リテールテックの歴史は浅くまだまだ発展途上の領域ですが、小売業の課題解決や顧客体験向上のニーズに応えるため、多くの企業がテクノロジーを活用して新しいビジネスモデルを構築しています。

小売/流通テックの最新事例

日立製作所(日立)は、2024年1月17日から西日本鉄道と提携し、同社が運営する商業施設「ソラリアステージ」「ソラリアプラザ」に入居する5つのテナントで「生成AIアバター」の試験的な運用を実施しました。本ソリューションは、質問に回答するとAIアバターがお勧めの商品を案内するというものです。AIアバターが「最近忙しいですか」「よく眠れていますか」といった質問をし、来店客がそれに回答すると、回答結果やサイネージ付属のAIカメラで取得された属性情報を基に商品をレコメンドします。
ECサイトの普及により、接客を受けることなく商品を購入することは珍しくないですが、商品説明を行う販売員がいなかったり少なかったりすると、購入の決定打に欠けてしまうこともあります。AIアバターが商品の案内や説明を行うことで、販売員を十分確保することが難しい小規模の小売企業でも来店客に商品の魅力をアピールすることが可能となります。また、来店客の滞留時間延長や販売機会損失の防止も期待できます。
日立製作所は今後、商業施設や百貨店を展開する企業に同ソリューションを提供するほか、オフィスビルやホテル、駅などのスペースの有効活用を計画している企業に提案することを検討しています。

小売/流通テックの未来

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は、「2022年版 次世代ストア&リテールテック市場の現状と将来展望」において、スマートシェルフやモバイルPOSシステムなど、次世代ストアを実現するリテールテックの国内市場を調査しました。この調査では、決済端末・セルフ端末操作11品目、次世代ファシリティ6品目、次世代オペレーション8品目、ロボティクス4品目、ラストワンマイル4品目を対象とした、次世代型ストアを実現するリテールテックの国内市場の現状を明らかにしています。
同社によると、リテールテックの国内市場は、2030年予測で5,553億円(2021年比で、2.2倍)としており、レジレス決済システムやスマートエントランスなど、次世代ソリューション市場が誕生すると見ています。また、スマートシェルフ市場は 100億円(33.3倍)、モバイルPOSシステム市場 730億円(4.1倍)と予測しています。

リテールテックは、上記のように市場規模が拡大傾向にあり小売業界に革命をもたらしている一方で、様々な課題も顕在化するようになってきています。
例えば、リテールテックにより消費者の購買データや行動データを収集・分析することで、パーソナライズされたサービスを提供することが可能となりますが、データプライバシーやセキュリティ管理が一層重要となります。そのため、これらについての適切な技術選択と倫理的な考慮に関する課題が増えています。
また、消費者の購買体験を向上させるためのオムニチャネル戦略には、リテールテックが必要不可欠ですが、その実現には多くの技術的な課題が伴います。例えば、顧客データと在庫データを統合するためには、膨大なデータ量と各チャネル(SNS・LINE・ECサイト・店舗・アプリなど)を連携しなければならず、時間とコスト、システム面の技術開発が多く必要となるのです。

今後は、これらの課題を乗り越えてさらに進化した形でのサービス提供が期待されます。企業が消費者との新しい関係を築き、競争力を高めていくことで、小売/流通業界は次のステージへと進化していくでしょう。

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